第49話 監督はヒメでお送りデースヨー
第七位階上位
グンハの案内で、仲間がいると言う村を目指して海岸沿いに進む事しばらく、遠目に目的の村が見えて来た。
「おおー? 村が襲われてマース!?」
ヒメの言う通り、村からは煙が上がっていた。
「大変!」
「急ぐでござる!」
駆け出した桃花にグンハが続く。
遠めに見た感じ、敵は鬼人で、海賊なのか船に乗って来たらしい。本船は座礁しない様岸から離れた場所にあり、浜や岸には無数の小舟があるのが見える。
見たところ浜と村の境目で誰かが戦っているが、後方から火矢を射掛けられ、茅葺の屋根に引火している。
そして件の村は無人だった。
「予算の都合デース」
「成る程」
打てば響くヒメの答えに取り敢えず満足しつつ、村へ急行する。
◇
取るものも取り敢えずのんびり駆け付けた現場では、3人の戦士が鬼を相手に激戦を繰り広げていた。
ハイオーガパイレーツ LV80
赤鬼人 LV150
青鬼人 LV150
上位黄鬼人 LV250
上位白鬼人 LV250
仙鬼人 LV400
レベル自体は大した事ないが、数が多い。
ざっと500弱と言った所か……ヒメが指摘したタイミングで戦い始めたとして、僅か数十秒で50体以上が始末された様だ。
敵も其々に対応して来ているので、おおよそ10分もあれば方が付くだろう。
……皆自前の得物で斬る事しか考えていないのが時間が掛かる原因である。
僕ならひと睨みで7割消すのに。
「これ、一気にやっちゃ駄目なの?」
若干の消耗がある為、なるべく早く終わらせたい僕は、解説と進行役のヒメに質問した。
するとヒメはにっこり微笑み……。
「横着しないでくだサイネー」
地道に戦えと言ってきた。
仕方ないので、入手したばかりの赫千夜に手を添えて、戦場へと殴り込む。
まぁ、これくらいなら寧ろ良い気分転換だからね……歯応えがあると良いんだけど。
◇
桃花が刀を振るう。
神珍鐡製の刀は伸縮自在であり、それ即ち間合い自在。一度振るえば赤が散る。一刀一殺の剣客だ。
武器の強みを活かす為、桃花はなるべく敵に近付かない立ち回りをしている。
急速に接近する敵に対しては、小太刀を伸ばして対応していた。
見た感じ武器の強さに頼っている面も多く見られるが、そこら辺は後日行う予定の徹底訓練でしっかり矯正しよう。
一方グンハは、ほんのり赤い刀身の刃を振るい、拳や蹴りを織り交ぜて鬼を駆逐していた。
正面からくれば斬り捨て、左右から来れば小太刀を投げ、四方八方を囲まれれば一番敵の層が厚く敵が身動き取れない場所へ切り込む。
自力で投げた小太刀をアポートし、拳と小太刀と蹴りを駆使して包囲を無傷で脱する。
武器に頼ると言うよりも武器を用いると言うべき戦いぶりだ。
多分普通に当たっても大丈夫だろうし、なんなら全力で一薙ぎすれば村毎両断出来そうだが、敢えてレベルを下げているのは、そう言う演出だからだろう。
桃花はそれに合わせて戦っている様だ。
また、他方。1人で村を防衛していた風の人は、『怪力無双』と同じ様な戦斧『国士無双』を振るう、少女。
ヒメ同様スラっとして薄いのに、見た目に似合わぬパワーで巨大な斧を振るっている。
燃え盛る炎の様に赤い長髪を振り乱し、そのもの正に炎の如く大暴れしていた。
名前は金剛丸。物怪丸の主人かもしれない。
此方は武器に頼るでも武器を用いるでも無く、鈍器を振り回す怪力頼りの戦い方だ。
そんな主戦場を見つつ、僕はヒメと一緒に船の上の鬼達を殲滅する。
浜や岸の小舟にいる鬼人は、弓を持つ比較的レベル低めの者ばかりだったので、大した抵抗は無い。
弦を切って遠距離攻撃を封じたり、手足を切って行動を封じたり。
とどめを刺すよりも行動不能を狙って、何も考えずにとにかく斬り回った。
ヒメはと言うと、僕の斬り残しから召喚士を排除、水増しオーガ兵達が戦場から消えて行く。
……尚、不思議の世界は倒した敵から経験値が殆ど貰えないので、全然勿体なくは無い。
そんなこんなで敵をほいほい殲滅した。
本船は戦場の7割が殲滅された所で撤退していたので、無事撃退に成功したと言う事だろう。
得る物の無い戦いであった。
差し当たって、微笑みながら健闘を称えて握手している桃花と金剛丸の方に向かう。
◇
「おおっ、あんたがユキかっ。ちっちゃいなぁ!」
「ご明察の通り、僕が小さくて可愛いユキだよ」
「可愛いとまでは言ってないんだけど……」
「そこをツッコンじゃおしまいデース」
「ハニーは可愛いわ!」
姦しい彼女等を枯れた老人の様な微笑みでグンハが見守る。
改めて金剛丸は僕に向き直った。
「あたしは金剛丸。国士無双の金剛丸だよ。よろしくね」
伸ばされた手を握り、目を合わせてにっこり微笑んでおく。
それにしても金剛丸は不思議なファッションである。
上は背中が大きく開いたオープンバックドレス、もとい金糸で金剛丸と刺繍された赤い大きな前掛け。
下はダボっとしたサルエルパンツ。
長い髪はボサボサで、何処となく野性的な気配……エイミーと仲良くなれそうな気がする。
金剛丸とニコニコ向かい合っていると、唐突にヒメが声を上げた。
「……あ、自己紹介終わりマシタ? それじゃア……」
ヒメは両方の手で人差し指を立てると、徐にその指をシュビッと南西の山林へ向けて——
「——はっ!? 煙りが上がってマース!?」
「む? あそこは確か同胞の村があった筈でござる」
「大変! 助けに行かなきゃ!」
「早く行こう! 蹴散らしてやる!」
いつのまにか桃花がキャストになってるんだけど。





