第16話 休憩終了
第七位階上位
桜の花の髪留めと浴衣を着た美少女2人。
僕の右手を抱いているのが、右サイドテールにした立花。左手を抱いているのが、左サイドテールにした鏡花。
そしてその中心にいる僕は、両サイドテール、もといツーテール、いやツーサイドアップ状態。
「ユキ。僕の反り返るチョコバナナ、味わってみない?」
「喰い千切ってやる」
「はっ、そんな柔い果肉棒よか俺のカチコチにいきりたつアイスキャンディーを味あわせてやるよ」
「噛み砕いてやる」
僕にここまで堂々とセクハラしてくるのは桜庭姉妹だけである。
あのユリちゃんでさえもう少しマシなのだからいやあっちは手が出るからマシでは無いか。
どっちもどっちだった。
この2人は、辛い事も苦しい事も、楽しい事も嬉しい事も共有している。だから、他の子達よりも耐えられる限界が大きい。
お互いがお互いを想う事である程度完結しているから、ふざけ合っている内は大したガス抜きにはならない。
従来のやり方であれば、ネタが尽きて疲れが見え始めた所で撫でくりまわして甘やかすのだが、今日はその時間が無い。
そして2人は、時間が無い事に気付いていながらも、甘やかされるのを期待して左右から僕を拘束している。
毎年同じ事をしていたからか、近年はその気がしてくると疲れる前から甘えてくる様になった。
腕に胸を押し付けて来るのは、わがままの表明。
高鳴る鼓動を聞かせて、こんなに期待させているのだから、責任を取って甘やかせと言外に語っている訳だ。
……だが、今年は本当に時間が無いので、手早く、且つ従来通りの満足感を与える様にやらなければならない。
と言う訳で——
「チョコバナナ多いよ、1本で十分なのに、2本も要らないし」
「レロ? じゃあ1本ユキお口に捩じ込もうよ」
「喰い千切ってもがっもぐもぐ……ちょっとあっちでお話ししようか」
「「サーセンッ!」」
——2人を密室に連れ込みます。
左右にいる2人を引っ張り、近くの櫓へ向かう。
「……うそぴょんっ。冗談でした! ごめんなさいっ!」
「……鏡花はセーフっ。だってやって無いもん! 情状酌量の余地はある筈!」
「なっ!? きょ、きょうちゃんには犯行教唆の大罪があると主張します! 立花はきょうちゃんに言われなければやりませんでした!!」
「主犯はりっちゃん! 鏡花は独り言呟いただけ!!」
「……取り敢えず早く食べてね」
怯えて保身に走る美少女2人を構わず櫓まで連れて行くと、喚く2人を無視して、僕は青の札を掛けた。
「……」
「……」
「……早く食べてね」
「「は、はい……」」
青札を見て俯き頬を朱に染めた2人は、跳ねる心臓の鼓動とは裏腹に、消え入りそうな小さな声で呟いた。
◇
僕は主に3種類の札を持っている。
普段使う白札に、仲良しの青、敵の赤。
これはかつての巫女達が使っていた符号で、主に青は櫓や個室で使い、赤は……ダイイングメッセージみたいな使い方をする。
具体的に言えば、青は身内を増やしたり身内を特別に労ったりする時に使い、赤は誘拐されたり最悪死んだ時に残す危険信号である。
今回の場合は……桜庭姉妹の性癖的に、片方をじっくりと労い、もう片方にそれを見せ付けて自分の番に期待させると言うお決まりの手法をとった。
内容は、最初に一度だけ、最近安くなって来た感のある僕の唇で頬にライトなキスをして……撫でくりまわして彼女等が満足したら終了。
……あれだ。ファーストキスに幻想を持っていた訳では無いが、桃花に蹂躙されてからはそこら辺緩くなったのは間違いない。
正直に言うと、そもそもの性別にすら意味を感じ無くなっている。
流石に最後の一線は操をたてて守り抜く所存だが、キスくらいなら幾らでもしてやって良いだろう。
勿論相手は選ぶし、僕の様な美人からのキスなのだから、特別な報酬であって然るべき、安売りはしない。
服を着替えると言って戻った桜庭姉妹を見送り、人混みに紛れてアヤの舞を見る。
それはまるで機械の様に正確で、然りとて人の揺らぎを魅せて鈴の音色を響かせる。
我が妹ながら実に可憐な舞であるが、リンカちゃんと言いアヤと言い、食べ盛りの2人は舞の時はずっとお腹空いたとか考えているのだ。
夕食に想いを馳せながら神に捧げる舞を舞うのはどうかと思わない事も無いが……まぁ、可愛いからOKだろう。
尚、今回の護鈴には真金の桜里とケイが初参加だった様だが、特にこれと言った問題は無かった。
……ケイがガチガチに緊張してたからちょっと手を貸したくらいである。
この後は、温泉に行ってじっくり疲れを癒してから、ちょっと遊んで心のデトックスをする。
その後アナザーで……待ちに待った研究の時間である。





