第11話 15万の生命を蘇生させる簡単なお仕事
第七位階上位
魔物召喚板に関しては、順次新しい物を出して行く予定だ。
ただし類人猿、または亜人系に関しては慎重にならざるを得ない。
ほぼ人の獣人やエルフ等は当然として、猿やゴブリン、オーク等の人型をした生物もグレー。
責任無き支配程人を堕落させ歪ませる物は無い。殺すのと使役するのとでは必要な覚悟が違うのだ。
……まぁ、この国の一般市民は神の使徒であるマレビトが命令すればほいほい従ってしまいそうであるが。
或いは亜人系のカード化はすっぱり諦めて、傭兵の方で取り扱うのが良いだろう。
それはそうとして、本日午後現在の業務を始めよう。
やる事は単純。
黒霧との共同作業で、およそ15万の魂を蘇生するのだ。
プレイヤー用に作った7つの浮遊都市へおよそ1万と追加で5,000程の人を配置し、空港の宿場町におよそ2,000少々を配置する。
宿場町はプレイヤーの体を安置する事等を目的とした町なので、特に人員はいらないのだ。
インヴェルノも住民としてエルフと妖精とゴーレムがいるが、人を2,000少々配置する。
残り5つある浮遊都市の内2つは万が一の時の避難先として開発し、其々に15,000の人員を配置、防衛専門の都市として運用する。
件の3万人は、常態では各都市他の巡回、または僕の支配下に無い迷宮の攻略や僕の支配下の迷宮のさくら攻略者として活動して貰うのが良いだろう。
言ってしまえば見せかけの軍隊である。
残りの1万は、『英霊の集い』『夜闇の魔女』『夢明の研究者』その他の蘇生を行う。
英霊の集いには、特別に彼等の拠点となる浮遊都市を用意してやろう。
夢明の研究者にも、研究施設を用意してやって良い。
……空の上ならどんな研究をしてもバレないからね。
研究施設と教育施設を兼ねて効率化するのが良いだろう。
そのノウハウを使って、一般向けの講習会を開くのも良しだ。
夜闇の魔女は、悪魔種としての性質を活かし、迷宮の攻略をさせる。
現状ではレベル200にも満たない雑魚の群れだが、高位迷宮の時間毎経験値取得量から考えて、明日のこの時間にはレベル400にも届く。と良いな。
ネックなのはレベル限界だが、リムが選んだ精鋭との事だし、400に至る前に止まる様な事は無いだろう。
バリバリ進めようか。
◇
おやつに桃をむしゃり、仕事を推し進める事数時間。
ようやく全工程が完了した。
蘇生自体は大した手間では無い。
魂の記録に基づいて体を構築し、そこに魂を嵌め込んでライフ系魔法で定着させるだけの簡単なお仕事だ。
教育自体も大した手間では無い。
そもそもが黒霧の管理だし、ゲームの時点で最低限の教育は済ませてある。
あとは現状の説明に注意事項、都市毎の細かな違い、他を教育するだけ。
その後の改善点は、実際に暮らしてみてからなので現状では特に問題は無い。
では何が大変だったのかと言うと……転生者達の能力教導だ。
3,000と少々の転生者やそれに準じる存在全員に覚醒処理一歩手前の処理を施すのは骨だったが、其々のユニークスキルをほぼ完璧な形で使用出来る様に仕上げてある。
頑張れば自力覚醒も可能だろう。
その後については、お金を稼ぐと言う点も含めて各々の努力に委ねるとして……後は我慢出来ないのだけ手を出した。
では片端から見て行こう。
先ずはお気に入り、ディニー・イーシェンこと白石琴乃。
彼女は、名付けにより力の道をただ一本に纏め上げる事が出来る能力を持つ、非常に便利な工具である。
今回の改造では、欲張りな彼女が懲りもせずに自分の魂にせっせと植えた種を全部間引いて、身の程という物を教えてあげた。
彼女は己を理解していない。
余りに愚かで余りに無知であり、やってる事の半分以上が無駄で無意味なのだと言う事を。
そう、彼女は無駄に知識だけあって、それを使う能力が無い。頭の弱い子なのだ。
そもそも考えても見て欲しい。
凡ゆる理想を具現化する力を持っているのに、それを使って取得する力が火を起こしたり回復させたりする力なのだ。
——最初から出来るのに。
名付けを利用して力を一本化する能力。
その真髄は、己が信ずる概念の強制。
即ち、大衆の叡智への接続とそれの再編。もっと分かりやすく言えば……神権の操作に等しい。
利便性は言わずもがな。加護にも匹敵するか凌ぐ程に強大な力である。
やった事は単純。
無駄に分配されていたリソースの統一。
彼女が己に課していた抑制の排除。
生まれたのは、『私の世界』改め——
——『夢想現界』
その力は、凡ゆる理想を《魔力と精神力さえあれば》具現化する事が出来る、ほぼ純然たる加護である。
名付けによる強化の精度も高まっており、尚且つ彼女自身への教育によって、しっかり魔法も発動出来る様になった。
琴乃チャンが夢想現界を通して適当にエンド・ザ・フレイムとか唱えれば、《魔力と精神力の続く限り》対象が滅び去るまで消えない感じの炎っぽい何かが出るだろう。
……嬉し恥ずかし悶絶している彼女がこの力を使い熟せるかどうかは……まぁ、しばらくは無理そうだ。
ともあれ、白石琴乃はこれで正式に『神代転生者』と呼んで良いだろう。多分。





