第6話 捧げ物
第七位階上位
都市の建築、改築が終わる頃には、リンカちゃん達が戻るのに丁度いい時間だった。
ちびっ子達はそろそろ洞窟終盤だろうし、少し様子を見に行ってみよう。
◇
洞窟の迷宮のボスは、ジャイアントシャドーバット。
成人男性の1.5倍にもなる巨体を持つシャドーバットである。
主な攻撃手段は、影の刃を飛ばしたり、牙や爪で直接襲い掛かったりするという物。
また、自分の影を利用して分身の様な物を作ったり、元々ある暗がりの影を利用して配下のシャドーバットを生成したりする事も出来る。
中々に優秀な操影魔法の使い手であり、無数のシャドーバットを目眩しに影へ潜んで暗殺紛いの攻撃を仕掛けてくる事もある様だ。
ただし、あくまでも操作出来る影は自分の物か生命が介在しない元からある暗がりだけで、ライトの魔法を使えばそれだけで操作出来る影が減る。
……まぁ、その分影の質が高くなる訳だが。
高くなると言っても所詮はレベル50程度の力なので問題はない。
では、彼女等の戦いを見てみよう。
先ず、テンテンがライトを使い、ピィコが火を吐いた。
次に、メィミーが魔眼を発動させた。
最後に、墜落した敵に皆が襲い掛かる中、他より頭一つ抜きん出ていたアランが誰よりも早く斧を振り下ろし……ボス蝙蝠は頭から上半身に掛けてが真っ二つになってお亡くなりになった。
敢えて圧勝の理由を考えるなら、従魔による素早い光源の確保。メィミーの魔眼が実際にかなり強力だと言う事実。アランの技量と武器の質。
これ等が上手く噛み合った事で、ボスを瞬殺出来たのである。
これが他の子だったら……一撃で倒せたのはリンカちゃんくらいだろう。
尚、ロッテやカナデ、フィロはあくまでも付き添いであり、戦闘には不参加である。
◇
お仕事があるちびっ子達をログアウトさせ、アランと少し話してから僕もログアウトした。
アランはしばらく狩りをしてからログアウトして、夕食を取ったら直ぐログインするらしい。
いろんな食材を扱いたいとの事なので、街の西にある僕の迷宮を紹介しておいた。
待っていてくれたシキナには礼を言って送り出した。
シキナやチアキの立場ならあまり忙しくないとは言え、初日はどこも猫の手を借りたいくらいに忙しいのだ。
その点、自由に動けて問題が起きれば直ぐに介入出来るシキナやチアキの様な人材は色々と役に立つ。
今は外を回ってる巫女や護鈴役が夕食を取りに来る時間なので、厨房が忙しい筈だし、シキナもそっちに行っただろう。
優秀な人材が揃っているので、もう間も無く僕の夕食も届くと思われる。
それまで僕は、僕個人の所用を進めて過ごすとしようか。
◇
舞う。舞う。
——巫女が舞う。
科学の光に照らされて。
人の群れを前にして。
腕を振るえば鈴が鳴り。
響いた音色は人心を癒す。
——鈴巫女は舞う。
数十の護鈴に守られて。
人々の祈りを前にして。
鈴巫女の役割は、神に捧げる祈りを集める事にある。
故に、鈴巫女は神たる鈴御霊に隠し事をしない。即ち頭部への飾りをつけない。化粧もしない。
巫女は神聖なる存在である鈴御霊に祈りを捧げる為、数十日の断食をしていた時代もあったらしいが、今は舞う前の夕食を取らないだけ。
鈴御霊たる僕は、最終日は神聖な食物しか取ってはいけない決まりなので……最終日は基本桃漬けである。
また、護鈴役もここでは仮面を取る。
神の御前と言う事もあるが、何よりここに至っては護鈴の命は巫女を守る為に捧げられる物だからだ。
リンカちゃんの舞いが終わった。
鈴巫女は最後に三方台に掲げられた2本の神酒を鈴で叩いて退場する。
その後に続いて、鈴巫女補佐のユミとキリカが神酒を回収して退場。
巫女達は三方台や御前縄と杭を持って鈴巫女補佐に続き、最後に護鈴役が退場した。
神酒は大事な祭具であり、鈴巫女補佐以上の者しか触れてはいけない決まりらしい。
記述によると、何でも酒類には神が宿り易いとか何とか。
最終的に僕が舞う前に一献呑んで、余りは鈴巫女や鈴巫女補佐、護鈴役で頂く事になっている。
もう一本は、有事の際に使うとか何とか。
はて、有事とは? 急な宴会とかだろうか?
当主の僕には何も知らされていないが、毎年必ず無くなってるので、誰かが飲んでいるのだろう。
さて、大事な神事も終わったし、当主として皆を労いに行こう。
リンカちゃんは直ぐにでも夕食を食べたいだろうが、その前にお風呂だしね。
◇
温泉でスッキリした後は、完全に自由時間である。
リンカちゃんはおやつを除くと8時間ぶりになる食事に向かい、アナザー持ちは即ゲームしにそれぞれの部屋に戻った。
持ってない子達は持ってない子達で各々やる事も無い訳では無く……割と暇な死んだ魚の目のシキナと、それに付き合わされるチアキは、2人で携帯ゲームをやっていた。
それじゃあそろそろ僕もアナザーに戻って、溜まった仕事の処理を始めようか。





