第1話 神域の入り口
第七位階上位
空には暗雲が立ち込め、時折走る稲光が暗闇を照らす。
荒野を乾いた風が駆け抜け、体に害のある黒い砂埃が舞い上がった。
——大地が揺れる。
遥か遠く、視線のずっと先にある無数の火山が、連動する様に噴火し、溶岩を撒き散らした。
——大気が揺れる。
遥か遠く、視線のずっと先。
黒砂の荒野を越え、無数の活火山を越えた更にその先。
地平なき彼方にそれはあった。
暗い雲を突き抜けて聳える巨大な金属の壁。
山よりも巨大な鎖で繋がれた、巨大な足。
刹那、大地を覆う程に巨大な何かが空を切り裂き、暗雲が払われた。
暴風が地上を削り、無数の火山がマグマを吹きながら弾け飛ぶ。
遅れて轟音と暴風が荒野を吹き抜けた。
? LV?
遥か彼方、大地から空の頂きにかけて。
其処には、天を突く赤銅色の巨神が立っていた。
巨神は先に振るわれたのと同じ、巨大な片手を空へと振り上げる。
現れたのは太陽。
ニルバーナの白い太陽と同じかそれ以上の力を持つ灼熱の太陽。
巨神は腕を振り下ろし——
——太陽は僕等へと迫り来る。
「——撤収」
「……了解。撤収する」
「てっしゅー?」
無理だコレ……無理っ!
だって鑑定結果が出てないんだもん。
おそらく最低でもレベル900はあるだろう。
全兵力動員して五分とか言うレベルの奴だね!
◇
改めてその絵画を見る。
名前が鑑定出来ないこの絵画は、手前に荒野と火山が描かれ、その奥に金属の大壁とそれに括り付けられる赤銅色の巨人が描かれた絵画だ。
中に入ると……謎の赤銅巨人と戦う事が出来るらしい。
コレも含め、入手した絵画は12枚。
その全てが、何らかの巨人ないし巨獣と戦う事が出来る絵画の様であった。
これらの絵画は、掃除して行ける様になった楽園の宝物庫に収められていた。
差し当たってこの絵画は暫く封印である。
宝物庫には、絵画の他に大きな宝箱があった。
鍵は、それぞれの迷宮で入手した楽園の鍵。
中に入っていたのは、12種の霊珠。
ありがたく頂戴し、僕は宝物庫を後にした。
◇
アム、リュカ、アンジュにお城の整備を進めさせ、エイミーは狩りに向かわせた。
夕食の時間まではまだまだ時間があるので、今の内に入手したアイテムやスキルの確認をしておこうと思う。
先ず最初は、天座の鍵。
これは、他の鍵類と同様に大きめだが、ちゃんと鍵の形をしたアイテムだ。
僕が腰掛けている玉座や円盤と同じデザインの白い鍵からは……特に大きな力を感じない。
それはつまり、神気の類いを宿していると言う事なのだろう。
この鍵の使い方は、天座に立った時から理解している。
僕は玉座に座ったまま、膝の間から円盤へ向け——鍵を振り下ろした。
何の抵抗も無く、鍵の先端が円盤に突き刺さる。
次の瞬間——円盤から光が放たれた。
同時に現れたのは、半透明なボード。メッセージウィンドウ。
【神力】
〔10,814/1,000,000〕
・火:901
・風:901
・水:901
・土:901
・闇:901
・光:901
・毒:901
・森:901
・砂:901
・死:901
・聖:901
・雷:901
・銀:2
「……ほう? 成るほ……ううん?」
天座。即ち円盤の中に神気が入っている事は分かっていた。それ自体に驚きはない。
問題は単価、もとい数値1分のエネルギー量と、不自然な数字だ。
残念ながら、解説のアムは今サイクロプスから剥いだ魔石で食料庫の整備をしているので質問する事は出来ない。
まぁ、僕なりにざっと考察すると……銀以外の十二属性は迷宮や使徒由来の最初から込められていたエネルギー。
銀と不自然な1の羅列は……僕が天座を入手してから回復した、または天座が吸収したエネルギー量を表していると考えて間違いないだろう。
この事から、天座は神気もとい神力の貯蓄結晶と考えられる。
また、不自然な900と言う数字は……多分元々999か1,000だったのを、何かの為に100消費したと言う事だろう。
仮にこの数値1あたりの単価がスキルポイントと同じくらいと考えると……100もあれば機神に大ダメージを与えられる。
この100と言う数字をエネルギー量に換算すると…………大体、おおよそ、おそらく使徒1人分のエネルギーになるだろう多分。いや、ちょっと足りないかもしれない。
後でエイミー以外に聞こう。
単純に計算して、数値1の回復に掛かる時間が30〜60分くらいだとすると、100回復するには4日前後掛かる計算になる。
4日に1、いや12体使徒が生産出来る計算になる訳である。
そして、城の迷宮の支配権が僕の物になっているので、そこに配置される使徒はこの天座のエネルギーを使っているのだろう。
つまり、失われた数値100は、僕が倒した使徒が再配置された事を表している。と考えられる。
……勝手にエネルギーが使用されるのはあまり嬉しくない。どうにかそこら辺弄れないだろうか?
後でエイミー以外に聞こう。





