第219話 光と闇は共にある
第?位階
誰かのすすり泣く声が聞こえる。
悲鳴が響き、怒号が轟き、嗤い声が木霊する。
——僕は闇に包まれた。
憎しみが心を焦がし、恐怖が体を震わせて、悲しみに魂を揺らす。
伝う涙は闇へと消えた。
——闇の中でこそ、光は輝く。
白夜は戦った。
友人を、今度こそ守る為に。
クラウは知った。
愛する仲間と共にある事、大好きな友達と過ごす日々を。
ツァールムは愛した。
無能な姉が、精一杯注ぎ込む愛に応えて。
ユウイチは腐敗を前に立ち上がった。
リョウタは人質を取られながらも帝国に抗った。
シドウは憎しみを断つ為に悪役の道を進んだ。
アニスは死の淵に立ちながらも仲間を信じて待つ事を選んだ。
ユー・ネィトは負の力に侵食を受けても甘言に惑わされる事なく己を保ち続けた。
レグルスは終わりに向かい行く世界を憂い、救済者にたる力を求めた。
神は人は魔物は、生きとし生ける全ての者達は、仲間を主人を僕を信じて邪神と戦う道を選んだ。
世界は絶望と共に歩み。
希望は何時も、此処にある。
——僕は闇に包まれて——
——僕は光と共にある。
光に染まり行く世界で、誰かがニコリと微笑んだ様な気がした。
◇◆◇
「馬鹿なのっ!?」
そんな悲鳴が口を突いた。
率直な僕の感想である。
終末が救いとか言った馬鹿は一回死んだ方が良い。僕だ。死のう……じゃなくてっ!
誰だっ、こんな筋書きを書いたのはっ! 遊技神かっ、死ね!! 金神さんですか? 凄いですっ!! ……じゃなくてじゃなくてっ!
……どうやら僕は、邪神に半ば乗っ取られそうになった衝撃で、混乱状態にあるらしい。
気がつくと邪神は縮んでちょっとフォルムが僕っぽくなってるし、僕は金のオーラに包まれてるし、蒼銀の力が先のアレより数倍程に増加している。
神霊の階段を無理矢理数段登らせられた感じである。
取り敢えず、憎々しげに此方を睨む六眼の僕もどきを消そう。
話はそれからだ。
僕は敢えて金の力を無視し、蒼銀の力を集約して放った。
触れなかった理由は明白である。
……厨二病とかの黒歴史がバレた恥ずかしさと言うのは、こう言う感じなんだろう。
乗っ取られ掛けた時の思考は永久に記憶から抹消します。
放たれた光を前に、邪神は抗う様子を一切見せず、ただただ蒼銀の激流に呑まれて消えゆく。
『臆せよ、光と闇は共にある』
そんな捨てゼリフに僕は——
「……知ってるよ。次も勝つ」
——塵芥と消えた邪神へ届かぬ声を返した。
《【緊急クエスト】【神話クエスト】『絶望ハ此処ニアリ』をクリアしました》
《【運命クエスト】【神話クエスト】『叛逆の追憶記』のクリア条件を満たしました》
《『叛逆の追憶記』クリア完了まで、残り10秒》
「むえ?」
唐突に始まったカウントダウン。
いきなりかと思う反面、10秒の猶予をくれた物とも思っておく。
《9》
差し当たって黒霧クラスタに接続し、保護した全生命の魂にミスや取りこぼしが無いか確認し——
《8》
——黒霧含む全ての魂と各肉体の接続を排除し——
《7》
——黒霧クラスタに道具と魂がちゃんと収まっている事を確認してから——
《6》
——黒霧クラスタをインベントリに仕舞い、持ち帰り枠に登録して、一息ついた。
「ふぅ」
《5》
これで、最低限やる事は全て完了だ。
思ったより衝撃的な試練も乗り越えたし、『叛逆の追憶記』でやる事は全て終えただろう。
後は……連れて帰れない皆に、せめて心の中でだけでもサヨナラを言う事か。
《4》
それとなく別れの挨拶を済ました。
後、他に気になる事は……——
《3》
——……そう言えば……何で金の粒子さんは邪神がもういないのにこんなに活性化しているのかな?
《2》
黄昏れの世界、ふとナニカを感じた気がして、僕は空を見上げた。
《1》
其処には——
《——
——黒い太陽が輝いていた。





