第213話 己の内に神はある
第?位階
魔王ルヘーテの軍勢は、イヴとベルツェリーアが僕に従うと言う事で、少し疑いつつも納得してくれた。
改めて戦力の確認を行おう。
先ずは悪魔と天使。
ディアリードは、悪魔の宝珠を5つも持っている危険人物だ。
多分おおよそ1,500年程先の未来では、レベルも800を越えているだろう。下手をすれば900以上になっている可能性もある。
アシュリアの方は、何処から取り出したか蒼の鎧を着込み、剣を装備して、背後に天秤と本を浮かせている。
未来では試練の魔物に数えられるだけあり、放つ闘気は先まで顔を赤らめていた少女とは似ても似つかない。
次いでルヘーテ。
灼熱色の髪と瞳を持つ彼は、端的に言って武人だ。
仙気に通じる闘仙であり、その戦闘力はアシュリアやディアリードとほぼ同格。
柔な人の身でありながら天使や悪魔の最上位種と同格と聞くと凄く感じる。
配下は、極僅かに金の力を感じる獅子を筆頭に、数体黒霧クラスの強者がいる。
種類から見ると猫科が強いが、他にも妖精や幾らかの動物型魔物が無数にいる。
次、イヴ。
彼女は言わずもがな最強クラス。神霊の域に立つ絶対強者だ。
空間操作系の能力が得意で、次元倉庫の中には無数の神血機装が収納されている。
本体である船は此処にはいないが、端末でも十分な力を持っているだろう。
続いて、ベルツェリーア。
彼女は、北の大陸を統べる神獣である。
その戦闘力は……正確に測れないので何とも言えないが多分イヴと同じくらいだろう。
配下に連れて来ている魔物は、三体の竜を筆頭に亀竜型の魔物や蛇竜型の魔物、翼を持つ動物型魔物と、ルヘーテ同様種類に富んでいる。
尚、レスタが僕の配下になった事は両親及びベルツェリーアから正式に許可を貰った。
また、ナイオニス大清流の中流にいた触手が生えた亀の魔物は、ベルツェリーアの遠い眷属であったらしいが、それの許可も貰っている。
最後、僕と僕の配下。
先ずは黒霧。
彼女は、クラスタを統括する本体と大迷宮クラスの7人を魂魄の保持に残し、あとの軍勢を邪神戦の戦列に加えた。
事此処に至っては領土も地脈も意味が無いので、人間領域の至る所に設置されている小迷宮の迷宮核は回収済み。
それに伴い、各地に散らばっていた国民やら家畜やらペットやらは全てクラット大迷洞に移送済みである。
邪気に倒れた七勇士と精霊帝も、疲労は拭いきれないとは言え戦える程には復活させている。
今持てる全ての報酬装備は各適正の子達に換装で装備させ、装備出来ないアイテムは黒霧クラスタに埋め込んだ。
此方の総合戦力は、頭数だけ見ると他より桁が3つぐらい違う。
レベルは低い者が多いので水膨れの戦力だが、つい今しがたまで金属加工や木材加工をしていたので、装備も加えると最低値はレベル150程だ。
戦闘時は補助魔法を重複させて掛けるので、レベル200相当の実力を持つ200万の軍勢と思って構うまい。
これらの戦力を考慮して大雑把な作戦を考える。
まぁ、実際の所は、強大な敵を相手に出来る事は限られる。
それは作戦とも言えない白兵戦だ。
先ず、切り札を全て解放した僕が邪神と相対する。
神霊級のイヴを南に、ベルツェリーアを北に配置し、僕と邪神を囲んで僕の援護をさせ第2包囲陣を形成。
その際、発生するであろう邪神の欠片を優先して撃滅する。
第3包囲陣として、北にディアリード、南西にアシュリア、南東にルヘーテを配置し、第2陣を援護させつつ、発生する邪神の断片を撃破する。
更に続いて、レベル500クラスのベルツェリーアやルヘーテの配下、僕の配下を第4包囲陣として配置、邪神の剝片を討伐させる。
次に、第5包囲陣でレベル300代を設置して邪神の粒片を討滅させ、第6陣のレベル100〜200と小黒霧で万が一の取り逃がしを無くす。
特に第3陣と第4陣の間くらいではオピオニダイ君達が手助けしてくれると思われるので、これで勝てない事は無い。と思いたい。
「さて、と……」
配置は完了し、準備は万端。
後は僕の問題だ。
僕以外に誰もいない荒野に立ち、邪神とオピオネウスの戦いを見上げる。
倒すべき敵をこの目に焼き付けながら、魔覚を発動させた。
見定めるべき物は敵では無く、己の内にこそある——
◇◆◇
深く、深く。
魂魄の奥底へと深化する。
其処にあるのは金色か、銀色か、はたまた僕の紺碧か。
果てない御霊の陽だまりに、誰かの心が優しく響く。
怯え、竦み、されど立ち向かう意思を、人は勇気と呼ぶのだろう。
絶望に抗う不撓不屈の意思を宿し、正義の道を邁進する者を、人は勇者と呼ぶのだろう。
だが……力なき正義に悪は屈しない。
——だから僕は君に助けを求めた。
君が偽りの世、幻の絶望に抗うのは、愛されたが故だろう。
君は試練を求めた。
偽りを真実へと変えるに足る、己が納得出来る試練を。
——愚かで愛しい君に、応えよう。
遥か此方の深奥で、金の光が僕を包む。
力には代償が必要だ。
その身、その魂、その心さえも彼に捧げれば、神は討てるだろうか?
不滅の金色は世界と溶け合い、小さな世界は満たされて——
——今回はこれだけで許してやろう。
いたずらな声を残して、世界は変わる——




