第210話 集う綺羅星
※920万PV達成
第?位階
——テメェなんて事しやがったぶっ殺すぞっ!!
……とは言わないが、それくらいの気持ちで微笑んであげた。
「ねぇ、君は何したの? 分かっててやったの? 殺すよ?」
若干本音が漏れでているのは仕方ない。と言うかなんで笑ってるの? 折って欲しいの?
珍しく激怒する僕を前に、ディアリードは若干乱れた黒髪を直しつつ無駄にイケメンな顔で歯を光らせている。
「まぁまぁ待て……我とてアレは想定外よ」
ディアリードは鋭い目付きでオピオネウスと戦う邪神を見上げた。
「よもや邪神とやらがこれ程までの力を有しているとはな……」
いやはや、まいったまいった。と肩を竦めるディアリードの双肩を握り潰せないか試みつつ掴む。
「取り敢えず全部吐いて貰おうか」
話はそれからだ。
◇
高位の精神生命体との会話は早くて良い。
ディアリードとの情報共有は数瞬の内に終わった。
先ずはディアリード、魔王統導主について。
彼はとある異世界で人類の天敵たる魔王を作成する仕事をしている者達の長だったらしい。
それが何故この世界にいるのかと言うと……何でも聖女とか呼ばれている人間に統導システムの概要を見抜かれた事が原因らしい。
聖女とか言っても所詮人間と舐めて掛かり、一応は勇者統導主の長である天使と協力して潰そうとしたが……派遣した勇者と魔王が聖女の自爆で死亡。ディアリード自身は巨大な力の奔流でこの世界に流れ着いたのだとか。
後、天使の長は自爆のエネルギーがモロに直撃したから多分死んだ。と笑いながら言っていた。
因みに、聖女の名前は……シャルロットだかシャルロッタだからしい。
……………………まぁ、うん。
次に、今回の邪神復活についてだが……これは本当にディアリードの意図する所では無かったらしい。
簡単な話が、ディアリードは邪霊・イヴリースに謀られたのだ。
実際の所は、邪神復活は勇者達がもう少し強くなってからにする予定だったらしい。
邪霊・イヴリースを少し強化して勇者達と戦わせ様としていたが、思った以上にイヴリースが強くなっていたとか。
だが勇者も思っていたより強かったので結果的には良いであろう。
良くないだろ結果が今の惨状だよ笑ってるのは折って欲しいの?
その他幾つモノ情報のやり取りがあった。
『彼の者共の力では持って四半刻であろう。あまり連中を消耗させるのはオススメ出来ないがな』
『星海蛇の片方はこの世界のモノでは無い、近傍の滅んだ世界から邪神を追い掛けて来たのだろう』
『我の見立てではこの星の星霊とやらはまだ生まれて居ないが、この危難を乗り越えれば数千年内には生まれよう』
『我の切り札? 神威の霊徴なら後5つあるが……宝珠? この世界ではそう呼ぶのか』
ディアリードは知りたい事をどんどん教えてくれるので、僕の好感度は少し上がった。殺さないでおいてやろう。
ふむ、星霊は星核の顕現と共に生まれる、か。となると星核を持つイヴは星霊と言う事になるのかな?
そう言えばキットとシュフォールは宝珠が星珠になった時に生まれた様だけど……星珠と星核の違いは何だろう?
……気になる事は山ほどあるが、取り敢えず今は邪神をどうにかしないと。
改めて邪神へ視線を向けると、それを遮る様にオピオニダイ君が顔を寄せて来た。
彼等はレベルの割にかなり強いので、特に重力場が強い顔を向けられると……少し怖い。
「む……むむ!?」
再度僅か数瞬見つめ合うと、唐突にオピオニダイ君のつぶらな黒い瞳が零れ落ちた。
落ちる瞳には青白い星々を纏う体が繋がり、それらは地面に落下する間に蛇へと変化した。
オピスパルム LV100
つぶらな瞳だった部分は形を変えて小さな瞳や口腔の重力場などになり、頭には角の様な突起と小さな触覚の様な物を備えている。
産まれたてのオピスパルムはうねうねと宙を舞って僕に絡み付き、チロチロと頬を舐める。
「……くれるの?」
そんな僕の問いに片目の無いオピオニダイはコクリと頷き、身を翻して邪神の戦場へと飛び込んで行った。
「ふむ、好かれたか? 星海蛇は一にして全。大事にするが良いぞ」
そんなやや上から目線なアドバイスをアリガタク頂戴し、オピスパルムを支配下に置いた。
黒いつぶらな瞳はマイクロブラックホールだと考えると怖いが、可愛らしいので蛇達仲間で仲良くして欲しい。
さて……。
「……勿論、協力するよね?」
主語のない僕の問いに、ディアリードは肩を竦めた。
「我は世界の破滅を望む者では無い。この様な事態では仕方あるまい。手を貸そう」
ディアリードが手を軽く振るうと、悪魔の宝珠が5つ出現した。
四半刻もあれば、此方の準備を整えるのに十分と言えよう。
問題は……。
「ディアリード、配下は?」
ディアリードは無駄にキメ顔で応える。
「ふっ、全て貴様に滅ぼされたわ。雑兵程度なら用意出来るが……無駄であろうな」
「となると……僕の配下と君だけで何処までやれるか……」
正直言うと、かなりギリギリ……いやまぁ、希望的観測でのギリギリアウトなので、実際の勝率は20%……10%くらいかな?
配下の調整やら何やらを急ピッチで進めつつ、どうにかして勝てない物かと思考を巡らしていると、ディアリードは呟いた。
「我と貴様の下僕のみ? ふむ、ではあれも貴様の下僕か」
そう言って彼は南西の空へと視線を向けた。
つられた訳では無いが、僕も邪神から目を逸らし南西の空へと振り返る。
其処には流れ星があった。
——イヴだ。
神速と言うのに相応しいスピードで、遥か彼方から此方へ飛来する。
リエ&ベスタのコンビの様に、空間魔法で摩擦を減らしたり距離其の物を縮める神血機装を使用しているのだろう。
そんなイヴ・ハルモニアは、瞬く間に僕の前に着地した。
音も無く、衝撃も無い……もしかすると移動行為すら行なっていなかったのかも?
つまり……短距離転移と同じ様に目視範囲の空間を歪め、本来なら発動と同時に位置が入れ替わる物が、その歪み自体に乗って来たと言う……要は念力で自分を運ぶのを圧倒的に高度にした様な技術だ。
彼女等を視認出来たのは、青の瞳の因子とやらが活性化しているからなのかもしれない。
イヴは抱えていた少女を放ると、僕の体をまさぐり始めた。
「こんにちは、ユキ。邪神の討伐に御協力ください。後、この星海流に似た魔物は何でしょうか? 後で資料を送ってください」
「僕もまだ知らないんだよね。何だろう。星海流って」
「星海流とは。宇宙空間内に存在する根源因子の流れです。正式名称『星海大奔流』。別名『星海航路』。地脈程活発ではありませんが根源因子の絶対量が多いので、多くの場合はこの航路を用いて星海を渡ります。西暦3048年には小型の『星海航路』を発生させた世界初の星間レースが行われ——」
「——まってまって、データを読み上げなくて良いから。うん、成る程。要するに宇宙の地脈ね」
「はい、ユキ。その解釈で間違いありません。若者の間では『宇宙脈』や『宇宙道路』などと呼ばれており、最盛期では『星海交通法』を無視する若者が跋扈して1200番代のアジムスが——」
「——良いから。今は邪神との戦いを一番に考えよう?」
「はい、ユキ」
多分僕が情報たくさんくれると好感度上がるなんて思ったのが悪かったのだろう。
僕とディアリードの会話は観測されていた。
僕の体を弄くり回すイヴは置いといて、イヴが抱えて来た少女を見る。
少女は白髪に碧眼だ。年の頃は僕と同じくらいで、ざっと12歳くらいに見える。
そんな少女の頭上には光輪が輝き、背中には3対6枚の白翼が生えている。
どう見ても天使である。そして僕へ跪いて何かを祈っている。
僕に初対面で祈りを捧げる奴なんて碌なモノがいないが……彼女、アシュリアは如何なのだろう?
熾天使 アシュリア LV?
「えーと、こんにちは?」
「お初に御目文字致します。幼神ユキ様。拝謁致しまする御慈悲に感謝を捧げます」
「拝謁と言うのなら祈ってないで僕を見るべきじゃない?」
来るなり直ぐに目を瞑って祈り始めたアシュリアに物申す。
すると彼女はぽっと頬を染めた。解せぬ。
「み、見ろと仰るのなら……はうぅ……イヴ様、そんな、ユキ様に、あぁ……」
「ちょっとまって、機械神イヴ、今僕に何してるの?」
「生体管理第3行程を施行中。採取した深層特定因子から精神消耗を計算、当機の特定因子を注入し精神消耗を回復させ、ました」
ふむ? 確かに幾らか気分が良くなっている。聞いた感じだと輸血みたいな物だと思うんだけど……。
「これがどう言う意味を持つのか教えてくれるかな?」
「そ、それは……い、言えと仰るなら……その……せ、せせせ——」
「——性交渉だな」
「です!」
「なぬ」
……なぬ? ……本当に?
「我の知る限りでは、精神体の肉体を持つ者はお互いの深層精体を交換し合う事で繁殖をする」
「ライブラリーに情報をアップデートします。友好情報の編集を完了しました。当機の性交回数、1回。対象ユキ」
「突っ込んでたらキリないから無視するとして」
「突っ込んっ!? あわわ」
「友好情報の編集を完了しました。当機の性交回数、1回。対象ユキ。内容:当機の根源因子がユキの深層根源因子をサルベージしたので、当機がどちらかと言うと雄またはタチ。ユキがどちらかと言うと雌またはネコ」
うるさいよ。僕はツッコミ役じゃないんだから。全力でボケないで欲しい。
そんな事より、イヴには嵐の調査をして貰っていた筈だ。どうだったのか詳しく聞かせて貰おう。
「イヴ、報告」
「はい、ユキ。当機はネコですがユキがどちらかと言うと誘いネコなのでどうしてもタチに回らざるを——嵐はベルツェリーアの忠臣『雲海竜ニベル・アナン』による物です。邪神を誅するべく嵐を用いて軍団を送り込む為に現在ルステリア帝国帝都へ向かっています。帝都はこの地点だと記録がありますが、移転しましたか?」
「イヴ、ご苦労様。帝都はついさっき僕が頂いておいたよ」
「ベルツェリーアが帝都跡地に到着するまで、およそ2分16秒81。ルヘーテが帝都跡地に到着するまで、およそ5分39秒43」
「うん、ありがとう、イヴ」
さて、どんどん強い人達が集まって来ている様だし、迎合する戦力から安全且つ効率的な作戦を立てないとね。




