第208話 希望は此処にあり
第六位階下位?
現時点で僕の支配下にある魂は、およそ500万にも達する。
その500万の内殆どは配下基本教育を受け、僕や僕に準じる存在への忠誠を持っている。
そして、彼等は今、唐突に現れた負の化身に恐怖している。
管理者たる黒霧なら、恐怖の心を同じくする数百万の魂、その意思を統一する事が出来るだろう。
その意思を利用して、ザッハークを討ち滅ぼすのが本作戦の概要である。
詳細情報は、黒霧が金の粒子さんを利用して意思を統一し、フタバが意志から発生した力を纏め上げて金の粒子さんを通しヨウイチに注ぎ込み、ヨウイチがイテアの創造能力を活用して金の粒子さんの補助を受けつつ放つ。
『と言う訳で『絆の光作戦』を決行します』
『りょ、了解』
『頑張ります!』
元気に返事する四月一日妹とは裏腹に、四月一日兄が若干引き気味に返事をしたのは、コトノチャンの悶絶する様を聞かされたからである。
『絆の光作戦』。命名者、白石琴乃。
彼女の能力は作戦の成功率を上げる上で必要だったのだ。
白く燃え尽きた彼女の犠牲は、きっと無駄にはならないだろうたぶん。
◇◆◇
絶望を前にした者達は、微かな希望をも見上げて祈りを捧げる。
願いは一つに重なり、希望への信仰は力を生んだ。
星々の様に煌めく幾万の意志は、それそのものが絶望の夜を彩る希望なのだ。
——ほうき星が瞬いた。
それは星々の意志。
7つの一等星が輝く夜空を流星は駆け抜ける。
——願いは夜の帳を切り裂いた。
直に夜は明ける。
希望の陽が大地を照らし、生きとし生けるもの達に祝福は降り注ぐ。
世界は尊き安寧を謳歌する事だろう。
……されど、忘れてはならない。
明けない夜が無い様に。
——沈まぬ陽もまた、ありはしないのだと。
もし私の心が貴方に少しでも届くと言うのなら、私は貴方に意志を贈ろう。
貴方の事だから、私が何も言わなくともその子を守ってくれるとは思うけど、それでも心配なのだから仕方ない。
もし私の遺志が聞こえているのなら、心配しないで。私はこの子と1つになるだけ。決して消えてしまう訳では無いのだから。
7つの一等星が輝く夜空。
駆けるほうき星は夜の帳を切り裂いた。
星々を見守る小さな銀の月が、堪らなく愛おしく見えて——
——あぁ……もし、私の願いが叶うなら——
——どうか、偽りの世を越えて貴女と共に……。
◇◆◇
意思を掻き集める工程、それを力に変える工程、その力を束ねる工程。
これら三工程全てが、金の粒子さんの頑張りで無事完遂された。
イテアの瞳で創造された光の槍は、生や聖を含む、負の化身への特攻を持った希望の槍。
輝く希望は金の粒子を纏い、閃光となって放たれた。
6人の勇者達も頑張ってザッハークを抑えたし、僕と黒霧もここぞとばかりに念動力でザッハークを縛った甲斐あって、『絆の光』は狙い違わずザッハークの胴体へ突き刺さった。
——世界が白く染まる。
降りしきる雨の音は遠ざかり、柔らかな光の奔流が荒野を走る。
世界が色と音を取り戻した時、僕の視界に見えて来た物は、その身をバラバラに朽ち果てさせ、空へ消え行くザッハークの姿だった。
——勝ったな。
そう思ったのも束の間。声が響く。
『……クク……クハハハハッ!!』
それは邪竜王の断末魔。
怨嗟を宿した呪詛では無く、ただただ愉快そうに奴は嗤う。
朽ちて消え行く身を震わせ、その深淵に宿る純粋な邪悪はニタリと嗤った。
『……守護者ヲ失イシ正霊ヨ——』
全てを希望に焼かれながら、最後に奴は呪詛を吐く。
『——始原ニ眠レ』
《【大陸クエスト】『大帝国の滅亡』をクリアしました》
《【世界クエスト】『希望は此処にあり』をクリアしました》
【大陸クエスト】
『大帝国の滅亡』
参加条件
・大帝国『ルステリア』の革命、衰退に関与する
達成条件
・大帝国『ルステリア』が革命、滅亡する
失敗条件
・大帝国『ルステリア』の革命、滅亡に失敗する
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント15P
・道具『遊楽の神子結晶』×15
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度88%ーー100%
・武器『武威の剣』
・防具『智慧の冠』
・道具『王の宝玉』
参加者貢献度選択報酬
貢献度88%ーー100%
・報酬選択権:SSS
【世界クエスト】
『希望は此処にあり』
参加条件
・『邪竜王・ザッハーク』を討滅する
達成条件
・『邪竜王・ザッハーク』を討滅する
失敗条件
・世界が滅びる
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント30P
・道具『遊楽の神子剝片』×3
参加者貢献度選択報酬
貢献度100%
・報酬選択権:SSS
エクストラ評価報酬
神性解放
金の加護
・スキルポイント5P
・道具『遊楽の神子結晶』×5
・報酬選択権:S
帝国の皇帝に成り代わっていた邪神の断片。
最後の負の化身は今、討たれた。
帝国の革命……の様な事も終わり、これで世界は救われた。
このゲームも最早クリアと言っても過言ではなかろう。
うん。クリアー!!
……なんて、そんな訳無いよね?
《【緊急クエスト】【神話クエスト】『絶望ハ此処ニアリ』が発令されました》
強まる雨音が嫌に響く。
静まり返った元帝都の荒野から、僕は北へと視線を向けた。
魔割山脈の抉られた峡谷。
邪神が封印されていると目される大地から、黒い柱が立ち上った。
邪悪の柱は天を貫き——




