第127話 水精王と水精女帝
第五位階下位
水に関する超越存在を祀っていると思われる祠には、そこそこに強力な結界が施されていた。
ちょちょいと解錠して扉を開けると、中にあったのは青色の金属像。
私の腰程もあるその像は、何処と無く三姉妹さんに似た女性を象っており、その中に強力な力を持つ何かが封印されている様だった。
水精王の御霊像 品質? レア度? 耐久力?
備考:神霊金属『ナイオーネ』で出来た像。成霊。水精王が封印されている。
神霊金属が本当にあった。
それも、成霊と言う位階だ。
私の進化の過程と同じなら、幼霊と成霊の間には亜成霊みたいなのがある筈なので、幼霊よりも二段階上の力を持っていると思われる。
その像の中には、水精王とやらが封印されているらしい。
取り敢えず差し迫った危険性は無さそうなので、早速解析を始める。
◇
ざっと調べた所、この像には確かに王級の水精霊が封印されている様だ。
この像自体は強力な魔道具であり……神霊金属で出来ているから神器と言うのが適正なのだろう。
それの製作には、おそらく賢神グリエルが関わっている。
像が持つ機能は、魔力の吸収と生属性魔力の放散だ。
もっと具体的に言うと、水精王に魔力を供給し、水精王が持つ強大な力を利用してその魔力を生属性に変換、それを放出する。と言う物だ。
要は変電設備だ。
変換された生属性魔力はかなりの広範囲に放出されている様で、ここら一帯やクランゼル王国の土地が肥沃なのはこれが原因なのだろう。
これを作った者たちの狙いも想像がつく。
放出される生属性魔力は、まるで霧の如く超広範囲の土地や空に撒き散らされていた。
この事から、豊作豊漁はただの副次的効果でしか無いと言う事が分かる。
では何故この様な方式をとっているのかと言うと……負の存在を抑える為だろう。
正の存在にとって生属性魔力は天の恵みだ。
しかし、負の存在にとっては、まるで生物が瘴気に囲まれるかの様に、その知覚領域を封じるのである。
つまりはジャミングだ。
負の化身がお互いの位置を掴めない様、膨大な生属性魔力によってそれを妨害する施設である。
クランゼル王国に封印されていた負の化身は討ったので、これは回収してしまっても構わないだろう。
ちょっと不作になるかもしれないが、良いのが普通になるだけなので頑張って欲しい。
無理ならスノーブラックの方で新しい職を斡旋しよう。
この像に関して問題があるとすれば……精霊王の封印を解除出来ない事か。
いやまぁ出来ない事も無いのだ。
ただちょっと……少し……まぁまぁ苦労しそうなだけで。決して出来ない事でも無い。
流石は神霊金属、それも今まで見た中で一番強力な品物と言った所である。
取り敢えずじっくり解析する為にも、この像は迷宮に持ち帰ろう。
……放散する生属性魔力と迷宮は相性が良いので、何ならしばらくこのままでも良いかな。
ここでやる事はもう無いので、転移でクラット大迷洞に帰還する。
転移後直ぐに、インベントリに入れておいた精霊像を特別に拵えた部屋に安置した。
しばらく私が落ち着くまではDP生産機となっていてくれ。
その後、私の研究室に移動し、胸元から取り出した幼女長女さんを台に寝かせ——
「さて……施術を開始する」
——弄り回してみる事にした。
◇
施術と言っても大した事では無い。
一度ゲームをやめ、本に登録されている長女さんの魂にアクセスし、記憶をコピーして、ゲームに戻る。
勿論幼女長女さんの未だ柔な魂では長女さん数千年の記憶を受け入れる事は出来ないし、銀の加護が無い状態の僕も長く記憶しておくのは負荷が激しいので、長女さんの記憶は魔結晶に保存しておく。
水精女帝の記憶結晶・壱 品質? レア度? 耐久力?
備考:水精女帝の記憶が封印された魔結晶の一つ。
これを段階的に幼女長女さんに注入して行けば、魂の同期が成され、ブルーフェメレットである幼女長女さんはウンディーネ・エンプレスである長女さんになるだろう。
また、ちょっとした実験をした所、持ち込み枠に金の本を入れられる事。と、持ち帰り枠に黒霧の核を入れられる事。が分かっている。
要は、本当に切羽詰まった時は皆を連れて来る事が出来るし、黒霧の処理能力の範囲内ならこのゲームの皆の魂を持ち帰る事が出来ると言う事だ。
ただし、人間1人でも魂の力は侮れない物で、如何に黒霧が優秀でも、数十万の魂をその器の中に封じる事は出来ない。
優先順位を付けておくとしようか。
……しかしまぁ……良かった。皆を連れて行く事が出来て。
魂を同期させた子達は、面倒な事になる前に合成してしまうのが良いだろう。
元々同質の物だし、個体の強化にも繋がるからね。
未来の憂いが一つ無くなった所で、次の作業や調査に移る。
リベリオンがモンデシウルに到着するまでまだ少し時間があるし……新しい配下の教育と強化を推し進めようか。




