第78話 狂える悪魔
第五位階中位
「させねぇよ」
建国王クラットの大剣が空を斬り、斬撃の魔力が飛来する。
咄嗟に張った結界はしかし、ほんの僅かな拮抗の末、斬撃の勢いを幾分減らすだけに留まった。
「はっ!」
迷宮都市の兵士から奪っておいた剣に闘気を纏わせ、飛来する斬撃を迎え撃つ。
魔法の盾と斬撃を受け、クラットの飛剣は消滅した。
闘気練成では互角、しかし武器の格が違い過ぎる。
急速接近して来たクラットの剣と打ち合い、鍔迫り合う。
「残念ですねぇ」
「黙って死にな」
「本当に残念です」
「あぁ? ……っ!?」
内から湧き上がる膨大な魔力を剣に纏わせ、力任せに剣を打ち払った。
即座に剣を横薙ぎに振るい、クラットを弾き飛ばす。
「いやぁ、私に力があれば貴方方で楽しめるのですがねぇ。残念です。この力はあまりに膨大過ぎて、上手く扱えない様でしてねぇ」
そう言いつつも、拾った腕を膨大な魔力でくっ付けた。
懐から取り出したのは、グラシアの悪魔王様から保険として受け取っていた、切り札。
「これは名前を死魂結晶といいまして、周囲で死んだ生物の魂を集めて力に変える事が出来るのですよ」
地上では今も尚人間が死に続けていますからねぇ。
元々悪魔は生物の魂を喰らい力を得る事が出来ますが、これはそれを誰にでも出来る様にした物ですねぇ。
それも、広範囲から死者の魂を集め、それを相当量保持出来る。
流石は名門グラシアの悪魔が開発した道具と言った所でしょうか?
「クラット、無事?」
「無事無事。いや、ちょっと斬れてるわ。やべーな、これ」
「おや、思った以上に頑丈ですねぇ。これは甚振り甲斐がありそうです」
体を人の物から悪魔のそれへと変じさせ、二本の剣に闘気を纏わせた。
瞬時にクラットへ接近し、魔力を込めて剣を振り下ろす。
「っ! ぐぅ、重っ」
一方の剣でクラットを抑え込み、もう一方の剣でそれを弾き飛ばす。
「クハッ、コレハスバラシイチカラデスネェ」
吹き飛ぶクラットに一息で追いつくと、剣を振り下ろして大地へと叩き付ける。
「くそっ、化け物かよ畜生めっ!」
◇◆◇
それは、私の未だ短い生の中で得られた少ない知識の中でも、明らかに異常だと分かる化け物でした。
その人は、最初はとても紳士な大悪魔でした。
ですが、希少な真銀製ゴーレムの人と戦い変わってしまったのです。
今やその姿は悪魔ですらありません。
所々光沢のある紫色の液体が溢れ、肥大化した腕は黒い毛が抜けて筋肉が露出しています。
頭部に生えた角は枝分かれして伸び、胴体の至る所から白い骨の様な物が皮膚を突き破って出て来ているのです。
「ヤハァリィ、イタミガナィ、ゴォレムオォ、イタ、ブッテェモォ、ツマラァナィデスネェ……!」
「くそが……まんま化け物じゃねぇかよ……最悪だ……」
「駄目ね、これ……ミラちゃん、ごめんなさい。自力で逃げて」
変わってしまった悪魔さんは、瞬く間にクラットさんとウィゼルさんを倒してしまったのです。
2人が戦い、手足を破壊されて行く様を、私は動く事も出来ず、呆然と見ている事しか出来ませんでした。
「サァ、ギィシキィォハジメェナサァィ」
それを断る術を私は持っていません。
「ごめんなさい、クラットさん、ウィゼルさん……」
「……いや、仕方ねぇよ」
「ミラちゃん、私達が負けたのがいけないの。大丈夫よ」
「……ごめんなさい」
悪魔さんに渡されたナイフで指を傷付け、祭壇に血を捧げました。
後は呪文を唱えるだけ。
「……」
「ハヤァクゥシナサィ」
私は……。
「トカナィノナラァ、ヨウハァアリマァセン」
悪魔さんは剣を振りかぶりました。
たとえ私がここで死んだとして、もし次の人が封印を解いたら、私はただの無駄死に。
母の命を削って生まれ出で、何もなさずに死んで行く、そんな事、私には耐えられない……!
「解きます、結界を解除します」
「ハヤァクシナサァィ!」
ごめんなさい、お母様、お父様。
「……時は来たれり。英雄の時代。遍く闇は光の元に」
扉は開かれた。
ハーザット(小倉 涼太) 15(+25) 男
LV42
・チートスキル
【医術者】
回復魔法(中)
清浄化(中)
調薬(中)
医術(大)
医学(大)
直感(小)
疲労耐性(中)
睡眠耐性(中)
精神耐性(中)
・スキル
体術(微)
慈愛(小)
毒耐性(小)
疫病耐性(微)




