第36話 白鬼、泣く
第四位階上位
何事も無く侵略が進んでいる草原エリアは、他のエリアよりも少し狭く敵がいない為、僕が手を加えずともその侵略率は既に30%を越えていた。
このまま何事もなければ期日以内に侵略が完了するだろう。
他のエリアも上手いこと制御核から支配権を奪えば、案外期日以内の完全攻略は可能かもしれない。
ゴーレム・ナイト LV52 状態:待機
フォートレスシルダー・ゴーレムズ LV72 状態:待機
ロボティクス・ゴーレムズ LV77 状態:待機
スワンプ・ゴーレムズ LV71 状態:待機
草原を防衛するのは、進化したゴーレム達合計80体分と、整備した上位種ドール50体。
ゴーレム達は進化の際に僕の小細工を上手い事取り込んだ様で、結構強くなっていた。
これなら唯一の退路を守らせるのに十分な戦力と言えるだろう。
勿論山の頂上の魔物が来ない事を前提として。だが。
森に連れて行く戦力は、頭数にして54+α。
主力は、ディヴァロア。ティオロア。2鬼。オートマタ4体。僕。
ドール達は、精鋭の5体。魔導鎧装備者2体。双剣持ち。小悪鬼王武具持ち3体。少し強化した小悪鬼将武具持ち5体。最大強化済みの小悪鬼武具持ち17体。河馬の盾と蟷螂の鎌持ち10体。合計43体。
これらに加え、プチジェムゴーレムの2体と、おまけで妖狐火3体にモンスターカード2枚分。
頭数こそ少ないものの、精鋭揃いである。
森の侵略は然したる苦労もなく終わる事だろう。
◇
「ふむむむむ」
「ますた、おなかいたい?」
「な、なんだ? また何かやばいのが来たのか?」
「別にお腹は痛くないしやばいのも来ていないけど……」
「じゃ、じゃあ——」
「——あたまいたい?」
「何処も痛くないよ。強いて言うなら……奇妙?」
「奇妙?」
そう、奇妙だ。
森の中心付近で侵略核を設置、起動したのに、迷宮からの手応えが無かった。
草原でも弱めの敵意は感じたのに、森ではそれが一切無いのである。
もしかすると、迷宮は度重なる攻撃を受けて疲弊しきっているのかも知れない。
取り敢えず害は無いし、侵略スピードもその分早くなる筈なので、今の所は要警戒としておこう。
「ドール達がボスを発見するまでは待機ね」
「りょうかい」
「うぅ、危険な事になりませんように」
白鬼は些か警戒し過ぎだね。
勢力と状況から考えれば、山頂のヒドラ・亜種よりも強い魔物は居ない筈だ。
……まぁ、霧竜の様な例外はあるけどね。
◇
そう、例外はあるのだ。
天殻樹・分霊体 LV?
「なななんかいるぅ!?」
落ち着け白いの。敵意は感じない。だから離れて。肋骨がゴリゴリ当たって痛い。
「邪魔」
「ひゃうぉ!?」
「ますむぐむぐ」
白いのをクラウに押し付け、改めて唐突な闖入者と向き合う。
感じられる力は大まかに見積もってレベル200相当。
容姿は白緑の長髪に藍色の瞳を持つ、植物そのままの服を着た美女だ。
植物系精霊の一種と思わしき美女は、ニコッと余裕を感じさせる微笑を浮かべた。
『ふふ、とても素敵な主人に仕えましたね。私の友達』
「ヴァウォ」
「クルァ」
美女の言葉に応えたのは、ディヴァロアとティオロアの2体。
どうやら友達? らしい。
2体に対して再度微笑むと、美女は僕へ真っ直ぐ視線を向けた。
『清く強き方。この地が今危機に瀕している事は理解しています。どうか貴女様の御手に私の手を添えるお許しを頂けませんか?』
真剣な表情でそう問い掛ける彼女は、特に企みがある訳でも無さそうだ。
信頼しても良いだろう。
「よかろう。我が剣となり盾となる事を許す」
『感謝します。強き者よ』
「僕はユキ。よろしくね」
『はい。ユキ様』
「ふふ」
『ふふふ』
ニコニコと微笑みながら握手する。
「て、敵じゃ無いのか。ほっ」
「しろいの。ほね。おしつけないで」
「骨!? おおお押し付けて無いしっ! あるしっ! お前よりあるしっ!!」
「ほねがあたっていたい。さわがないで」
「むきーっ!! あかーっ!!」
「ん? しろ、どうした?」
「……きょうがく。あっとうてきかくさ」
「あ、あかの馬鹿ーっ!?」
「え、ごめん?」
何やってるんだあの3人は。
「悪いね。昨日まではあんなに騒がしく無かったんだだけど……」
『いえ、賑やかなのは嫌いではありませんから。ふふふ、微笑ましくて良いですね』
慣れたのかな? まぁ3人共精神年齢が近そうだし、仲良くもなるか。……あ。
「よしよぉし、泣かないで良いのよぉ。白ちゃん、貴女もきっと大きくなるわ〜」
「……で、でか——」
「——きょういてきかくさ。これがもつものともたざるもののさ」
「びぇ」
「あらあら〜」
「ゆきぃ〜っ!!」
何でこっちに来るのか。
そもそも性別が違うし。胸が小さいのは性差と言う物だ。
種族にクイーンとかサキュバスとか入っているが、あれは何かの間違いだから。
「しくしく」
「はいはい、胸なんて脂肪の塊。あっても重いだけだよ」
「ゆきぃ」
飛び付いて来た白鬼を抱き止め、宥める。
どうやら白鬼は胸のサイズにコンプレックスがある様だ。
勿論口から出任せではなく、実際メロットと融合した時のあれは重か——
「——しょうげき」
「待つんだ——」
「——ますたはきょにゅうをいつわっている?」
「落ち着こうか。虚言に惑わさ——馬鹿。よせ。引っ張るな。破れる」




