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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第?章 Another Chronicle 第一節 叛逆の追憶記

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第16話 vs.ディヴァロア

第??位階

 



 森の主は困惑の坩堝にいた。



 彼の絶対強者は、ただ平穏を望み森を荒らす者にのみ怒りの鉄槌を下す、森の賢王なのだから。


 故にこそ、身を焦がす激しい怒りと憎しみに違和感を覚えた。



 しかし、平穏を愛する彼だからこそ、慣れぬ強烈な害意の支配に抗う事は出来なかった。



 己が内に猛る憎悪のまま、雄叫びを上げる。



 敵は直ぐそばにいるのだ。



 自慢の大角に光を灯し、あらゆる外敵を打ち払って来た突進で木々を粉砕する。


 通り抜け様、壊れ弾け飛ぶ木々を見て、彼はただただ森を破壊する己に違和感を感じるのであった。







 敵は森で見かける事のある木の生物。



 それに囲まれる様にして、何かの幼体が立っていた。

 銀色の体毛に青の瞳を持つその幼体は、此方をじっと見つめている。



 森の主の動きを縛る憎しみは、その幼体へと向けられていた。



 いよいよ持って、強い違和感が彼の絶対強者の心を満たす。



 木を切り倒した。


 ——許そう。



 生き物を殺した。


 ——それは(ことわり)故に。



 森に大破壊を齎す者。己が身へ降りかかる火の粉にこそ、怒りを振るうべきなのだ。



 この幼体が何をした?


 ——己が怒りを買う様な事はしていまい。



 この幼体に何が出来る?


 ——所詮幼子なれば、木を切り小さき者を殺せたとて、森を犯す事など出来よう筈も無い。




 ——湧き出る憎悪は己が意思によるモノでは無い。



 森の主は理解した。


 敵は己が身を操る何者かであると言う事を。



 しかし、幼子の辿る未来は変わらない。


 どうあっても、森の主を縛る憎悪を打ち払う事は出来なかった。



 遍く外敵を粉砕した必殺(・・)の一撃は——




 ——小さき幼子へと放たれた。






 それは驚愕と言う感情。



 彼の絶対強者は絶対強者であるからこそ永らく感じていなかった、それ故に大きな感情であった。



 ——幼子は生きていた。



 己が必殺と『不壊の岩壁』に挟まれ、赤き血を吐きながらも、その瞳には不屈の意志を宿し。



 己が必殺(・・)を耐えられる程の力を持ちうるモノなど、森の主は四肢と同じ数だけしか知らない。


 森の奥にある大樹の友か、山の頂に縄張りを張る3つ首の大蛇か、或いはその麓で大蛇を見張る同胞か、はたまた森へと攻め入って来た小さき緑の者共の長か。


 到底、小さく幼き者に耐えられる筈は無かった。



 故に知る。理解する(しる)



 幼子が放つ強き光に弾かれ、そして見た。



 ——その光から現れ出でた異形の姿を(・・・・・)



 夜の闇より尚深き漆黒の鋭角。陽の光を受け輝く純白の豪角。


 森の主の永き生の中で一度も見た事の無い、鮮烈なまでに明るい蒼と、禍々しくも美しい黒き大翼。


 四肢は獣、胴には蜥蜴の鱗を鎧が如く身に纏い、3本の銀尾には同色の炎を纏わせている。



 獣とも蜥蜴ともとれない鋭い牙を生やした口からは、血の雫が滴り落ちているものの、その青き瞳は幼体のまま変わらず、深き叡智を宿していた。



 ——分かってしまった。



 己が身を操る憎悪が招いたのは、理不尽の権化たる絶対強者(・・・・)


 小さき者達が森の主たる己に道を譲る様に、彼の異形が進む道を阻んではいけなかったのだ。



 ——然りとてそこに悔しさは無い。


 この美しき異形には翼があるのだから。

 己が願い、届かぬと知り、尚も見上げる遥か遠い空。


 その空へと至れる力強い大翼が。この異形には存在する。


 なればこそ、麗しき異形の糧になるのも良いかもしれぬ。と。



 森の主の心を満たすモノは、大翼持つ蒼銀の獣への尊敬、憧憬、そして、己が必殺を受け切った美しき獣への賞賛。



 憎悪と怒り、尊敬と賞賛。



 激しい意思の相違は今、身に打ち込まれた憎しみの楔を、その身を縛り上げる怒りの鎖を、一つ、また一つと打ち砕いていった。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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