第21話 死者の軍勢
キーワードに、男の娘? を追加
第三位階上位
《《【王国クエスト】【緊急クエスト】『生羨む死者の行軍』が発令されました》》
《《
【王国クエスト】【緊急クエスト】
『生羨む死者の行軍』
参加条件
・進軍する死者の軍勢と戦う
達成条件
・死者の軍勢を殲滅する
失敗条件
・王都が滅びる
・備考
悪魔の計略に気付いた『匿名』が悪魔を討伐するも、計略の阻止に失敗。
永きに渡り封印されていた死者の軍勢が全ての生命の灯火を消し去らんが為、行軍を開始した。
・主な出現魔物
スケルトン
ゾンビ
ゴースト
カースマッド
デッドツリー
グール
デスナイト
リッチ
》》
空は血の様な赤に染まり、遥か彼方から闇がゆっくりと這い寄ってくる。
ただ日が沈むだけ……果たして本当にそうだろうか。
赤く染まる遺跡を、墓地から溢れ出した黒い靄がゆっくりと、しかし確実に包み込んでいく。
「ティア、王都に戻るよ」
「うむ、急がねばなるまい」
「ウォン!」
遺跡を包み込む黒い靄。遠回りする事でそれらを避け、遺跡から脱出した。
吹く海風に怨嗟の声が混じっている。振り向くと、遺跡から黒い靄が溢れ出し、それと同時にアンデットも溢れてきた。
「不味いな……」
あの黒い靄は負属性の魔力だろう、一般的には瘴気と呼ばれる物だ。
あれを少し吸った所で人を殺める程では無い。だが、長い時間瘴気の中にいると体が徐々に衰弱し、やがて死に至るという代物である。
それが森に入れば草木から生命力を吸い取り、木々は枯れ、土は腐り、生き物が住めない不浄の地へと変わる。
ワイルドドックの森はもう駄目だろう。
むしろ森が防波堤になる事で作物への被害を抑えられると考えるべきか?
「ユキ! 急ぐぞ!」
「お?」
僕が色々と考え事をしながら走っていると、それに焦れたらしいティアが僕を抱き上げた。
所謂お姫様抱っこである。
「おぉ、楽」
ティアのバイタリティは底知れない、僕を担いでいて尚、ウルルと同じ速度で走っているのだ。
これなら夕食に間に合う……いや、先に迎撃準備をするべきか。
メニューを開きフレンドを選択、タク、アヤ、アラン、セイト、一斉にメールを送信する。
『遺跡より闇、溢れ出さん。勇気ある者たちは剣を手にし、南の草原にて待たれるべし。
都合の良い人は連絡してね。byユキ』
これでログインしている人から連絡が来るだろう。
数秒後、案の定直ぐに4人から連絡が来た。
各フレンド項目が点滅しているので、それを全て選択し繋ぐ。
「『連絡』タク、アヤ、アラン、セイト」
『もしもし? おにぇちゃん?』
『ユキ……とアヤか、どうした?』
『……繋がったのか? ユキ以外の声も聞こえるが……』
『えっと、これで良いのかな? もしもし? ユキさん?』
どうやらうまく繋がったらしい。
早速本題に切り出す。
『ハイ♪ 皆、ユキだよ♪ 緊急クエストが発令されたのは知ってる?』
『やっぱりユキか』
『流石おにぇちゃん』
『あぁ、えっとこの声はユキさんとタク君と……『血濡れの鬼』?』
『知ってるが……悪魔の計略の阻止に失敗した『匿名』ってのはユキだったんだな……予想はしてたが』
どうやらアランは血濡れの鬼、と呼ばれているらしい、大方生きたまま解体している姿を見られたのだろう。
……髪が赤いアヤの事では無いと思う。
『簡単に説明すると、南東の遺跡から骨やら屍やらが王都に向けて進軍中。到着時刻は推定……4時間後くらいかな?』
『成る程、なら適当にフレンドに声を掛けとく』
『皆にも伝えとくねぇ!』
『4時間後か、なら一回ログアウトしておこう』
『僕も皆に伝えておくよ、ユキさんも気を付けて!』
『よろしくねー』
フレンドチャットを終了させる。メニューを開いた状態だとログが見えるので、何かと便利だ。
ついでに、敵の規模と、平均レベル、画像を添付。メールしておく。
『【死者の軍勢】
スケルトン 平均レベル8
動物型スケルトン 平均レベル5
スケルトンソルジャー 平均レベル12
スケルトンメイジ 平均レベル12
スケルトンナイト 平均レベル15
ゾンビ 平均レベル8
動物型ゾンビ 平均レベル5
ハイゾンビ 平均レベル11
グール 平均レベル18
ゴースト 平均レベル7
ワイト 平均レベル15
カースマッド 平均レベル5
デッドツリー 平均レベル5
デスナイト 平均レベル30 50体
レッサーリッチ レベル50 10体
? レベル? 1体
合計:一万程のアンデッド軍団
』
うむ、見れる範囲は全て見た。
数は大きいのや小さいのがいるので、大雑把に数えて一万だが、実際にはそれよりも多いだろう。
それと、レベルが上がったお陰かレッサーリッチのレベルが見える様になっている。
大軍の中に1体だけしかいない不明な魔物は、レッサーリッチの上位種なのだろう。名前もレベルも見れないが姿形が非常に良く似ている。
規模が規模なので、いまログイン出来るプレイヤーだけでは厳しいかも知れない。
……と言うか、デスナイトから上は完全にプレイヤーのレベルでは太刀打ち出来ないだろう。
何か手を打たねばなるまい。




