第2話 ゲームを始めよう
※420万PV達成
第七位階中位
ハート型の謎物体を全力で回避していると、遊技神はいつのまにか影も形もなく完全消滅していた。
最早回避は不可能と悟り、全霊でそれを破壊するべく指に全力の斬属性を纏わせ振るおうとした瞬間——
——ハートは標的を僕の胸元から指へと変えたのである。
斬撃を暖簾に腕押し柳に風と回避したハートは僕の指へと迫り、身の毛もよだつ長い一瞬の後——
——指輪に吸い込まれた。
そう、『遊技神の導き』に吸い込まれたのだ。
その時の僕の感情を簡潔に纏めると、こうなる。
『——おのれ遊技神。望み通り撲殺してくれる』
それと同時に僕の冷静な部分は、神々の狙いが僕の感情を揺さぶる事にあるのだと推測していた。
おそらく、銀の力は僕の冷静さの源なのだろう。
常に冷静であり続ければ、やがては大神に至るものの、それ以上になる事は出来ない。と遊技神は言っていたのだ。
情報不足から今一ピンと来ない話だが、分かった事も多い。
先ず、遊技神は神霊階梯の第十二位階と言う物で、所謂大神とやらよりも高い位置にいる神。
そして、金の神は遊技神よりも凄い。
続いて、銀の力は危険。これに頼り過ぎると僕と言う人格が死ぬらしい。
対処法は不明。
だが、『追憶の遊技場』にそれへ対抗する事が出来る何かがある。
最後。奴は遊技神らしい。気にしても仕方ないが気になる。
遊戯神では無く遊技神だ。と言う意味なのか。或いはもっと別の何かがあるのか。
気には留めておこう。
◇
追憶結晶を詳しく調べた所、何も分からない事が分かった。
この結晶は、無数の意味を成さない魔法機構が無秩序に刻まれている。
十二個の結晶全てが、僕の理解出来る範疇では完全に無意味な代物なのだ。
そして、その全てには鍵穴が付いている。
となれば、『追憶結晶の鍵』を差し込めばこの無意味な結晶が意味ある物へと変わるのだろう。
問題はこの鍵がどの追憶結晶に対応しているのか、だが……片端から試して行こうかな。
もしかすると全ての鍵穴に対応していて、一度使うと使えなくなると言う仕様かもしれないが……取り敢えず一時の方向にあるクリスタルから試してみよう。……説明書無いし……。
◇
「さて……」
何が起こるか分からないので、念の為王都や公都、僕の領地や鍛錬島の皆の様子を確認した。
これで何の憂いもなく追憶結晶に挑戦出来る。
インベントリからクリスタルの鍵を取り出し、鍵穴へと差し込んだ。
「……回らない……ハズレ? おっと」
鍵を回そうとしても回らず、仕方がないので取り出そうとしたが、物凄い力で鍵を引っ張られた。
咄嗟に鍵を手放すと、クリスタルの鍵は鍵穴の中へと吸い込まれ、結晶に溶ける様に取り込まれていく。
「ふむ……」
鍵を取り込んだ追憶結晶は、まるで息を吹き返した様に明滅を始めた。
鼓動の様な明滅は徐々にその光を増していき、その間隔を狭めていく。
結晶は黄昏の世界に蒼の粒子をばら撒き始め、そして——
カッシャーンッ!!
——砕け散った。
その次の瞬間。
周囲に飛散した結晶片が僕の目の前に集まり始め、感じられる気配がどんどん濃縮されて行く。
無意味だった機構は砕け散り、意味ある形へと再生成されて行く。
そして——
——1つの水晶玉へと姿を変えた。
水晶玉は青白い光を放ちながら、重力に引かれ、ゆっくりと地面へと落ちて行く。
追憶結晶 品質? レア度? 耐久力?
備考:『叛逆の追憶記』 叛逆の歴史、大乱の世。君は何を成す?
手の平の上に乗る水晶玉は、見た目と異なり羽のように軽い。
僕がこれを所有したのがトリガーになったのか、水晶玉は光をゆっくりと収めて行く。
《追憶結晶を起動しますか?》
唐突に聞こえて来たメッセージ。
何が起こるかは分からないが、やる事はもう終えてある。
最後に遥かなる群青と燃え盛る茜の境界を見上げ——
——YESを選択した。
意識がブツリと途切れる。
◇
気が付くと、其処は何処までも続く白い世界。
何一つ遮る物の無い、果てなき白に染まる世界。
《解析が完了しました》
《『遊技神の導き』を確認しました》
《『遊技神の戯れ』を確認しました》
《貴方に適正のある種族は『鳥獣』『水棲』『昆虫』『植物』『不死』『傀儡』『精霊』『竜龍』『神霊』の9種族です》
《『神霊』は選考から除外されました》
《『叛逆の追憶記』は人型種族以外に制限が掛けられています》
《ランダム選考の結果、貴方の種族は『精霊 悪魔 淫魔 淫魔女王・幼体』に決まりました》
——異議ありっ!
突然なんて事を——
《『遊技神の加護』により、貴方は残り3回選考が可能です》
《ランダム選考の結果、貴方の種族は『精霊 精霊人 ドワーフ ミーニュファノン・幼体』に決まりました》
《ランダム選考の結果、貴方の種族は『竜龍 竜龍人 竜人 水竜人・幼体』に決まりました》
《ランダム選考の結果、貴方の種族は『鳥獣 亜人 人獣 人妖狐・幼体』に決まりました》
……結局何の種族に——
《持ち込み枠に登録するアイテムを選んでください》
《登録はいつでも可能です》
《『遊技神の加護』により、貴方は6つまで登録可能です》
……ふむ。
何やら良く分からないが、取り敢えず表示された物を確認する。
出て来たのはインベントリと、6つの空き項目がある板。
インベントリからアイテムを選択し、それを持ち込めるらしい。
……何処に?
……推測するに、選択された種族の体になって何処かに飛ばされると言う事なのだろう。
その際にインベントリに入っている物は使えない。
兎に角、いつでも登録可能と言う事だし、弄らないでおこう。
そこまで思考すると、メッセージが現れた。
《スキルポイントを30P配布、スキルを選択してください》
新たに現れた無数のスキル項目から、取り敢えず錬金術を選択した。
これで配布されたスキルポイントは0である。
《叛逆の追憶記を開始しますか?》
僕は迷わずYESを選択した。




