第1話 遊技神に可愛がられる
※しばらくの間『AC 叛逆の追憶記』をお楽しみください。
※一次選考を通過しました。今後も御愛顧の程を。
第七位階中位
風が吹き抜けた。
銀の髪がさらりと揺れ、陽の光を反射する。
そろそろ空が陰り始める時間帯、僕は転移施設の裏にやって来た。
此処に来たプレイヤーの数は今の所5000人程、この時間帯は皆迷宮に潜っているのか、転移施設の周りには人っ子一人居ない。
転移施設の遺跡の様な外見と相まって、秘境にでも来た様な気分になる。
早速門に触れてみよう。
「……うむ、やっぱり自動ドア」
門は、僕が触れると重い音を立てながら自動で開き始めた。
門の中に覗くのは、青白い光りで照らされる、程々に長い石造りの通路。
結晶が照明となり、通路は苔や蔦に侵食されていた。
……鍛錬島はいつからあるんだろう?
これだけ侵食されているのだから、少なくとも数年以内と言う事は無い。
勿論、そう言う風に作れば長い時間が掛かっている様に見えるだろうが、それを見抜く方法は現時点の僕には無い。
古代遺跡の様な通路を抜けると、見えて来るのは天井の高い大広間と広間を青く照らす魔法陣。
「……転移陣、か」
どうやら追憶の遊技場はこの先にあるらしい。
何処ぞの神によって何処とも知らない場所に飛ばされるのは躊躇しない訳では無いが、迷っていても仕方ない。
「……行こう」
転移陣に乗ると、魔法陣が光りを放ち始め——
◇
「ハーハッハッハッ! 私だっ!!」
見えて来たのは群青。
遥か彼方からは焼ける様な茜が差し込み、その反対には空と海の群青が境界を交わらせていた。
天では星々が競い合う様に輝きを放ち、そして——沈み掛けの太陽はピクリとも動かない。
——永遠の黄昏れ時。
終わる事の無い美しさが、此処にはあった。
「ハッハッハー! そうであろう? 美しかろうっ!? 我の傑作故、なっ!! ……だがな……君の方がもっと美し——」
僕がいる場所は水晶で出来た巨大な円盤の上。
周りには僕を中心に十二の大きな水晶が並び、終わりなき茜と群青が支配するこの世界で宝石の煌めきを放っている。
「我輩 変 身 ‼︎ ‼︎」
「……眩しい」
そんな神秘的な世界の中に、涙の雫が描かれた道化の面を付けた、高身長のジェントルマンが浮いていた。
遊技神 LV1かもダヨ 状態:見ての通りである! ハッハッハッ!!
光りが収まると、遊技神の性別が変わっていた。
短い琥珀色の髪は長く伸び、胸元のクッションが大きくなっている。
「ハーハッハッハ!! やはり女子同士でなければ警戒される物! これでどうかな? 女の子ダゾ? ンン?」
「で、此処はどう言う施設なのかな?」
一々大袈裟な仕草がちょっと凄くうざいので、先を促す。
と言うか、レベルと言い状態と言い、死神や瞳神をも超える面倒くさそうな気配である。
「うざいだと? 面倒くさいだと? ……クフッ、クハハッ、ハーハッハッハッ!! ……褒め言葉だ……!」
「うん。うざいね。で?」
「無関心は大敵なのだ……」
「うん。で?」
「(´・ω・`)」
「うん。で?」
器用にも微妙に可愛い思念が送られて来たが、これに付き合っていたら日が暮れて日付が変わってしまうので先を促——
「えい」
「おおっと」
唐突に僕の足元から空へ向けて強風が吹いた。
猛烈な風は死神のローブを巻き上げ、危うくめくり上がりそうになったのを念動で押さえた。
いやー、危なか——
「ふむ…………黒、大人だな」
——見られてた!?
「いやっ、下着じゃなくて肌着だから。ランジェリーじゃなくてインナーだからねっ?」
「ふむ……黒か、大人だな」
「……ん? ……んん!? むぅぅぅっ……!」
「HAHAHA」
どうして神と言うのはどいつもこいつも……!
と言うか、インナーの色を知られたからなんだと言うのか?
どうして僕はここまで憤って——
「——人は蟻や蝿に裸を見られても恥ずかしくなど無いであろう?」
遊技神はニヤリと嗤い、そう言った。
その言葉の意味は……。
「……それはつまり、僕が仲間を小虫程度にしか認識していない。と言いたいのかな?」
僕にしては珍しく、怒りの感情が吹き上がって来るのを感じる。
……でも、その理由はおそらく……。
「然り。少なくとも貴様の力を物に出来ぬ程度の君には、例え血を分けた家族であろうと小虫に見えているであろうな」
遊技神は先程までのふざけた態度から一転し、神の名に相応しい壮絶な存在感を発している。
態度をコロコロと変える、掴み所の無いや——
「——怒りをもう忘れたか。 何なら君の姉や妹を犯し、殺して差し上げようか? ンン?」
「……」
……こいつの狙いは何だ? 僕を怒らせて何がした——
「あ、怒った? 怒っちゃった? ぷーくすくすっ」
唐突に、張り詰めた気配が霧散し、後に残ったのは何処までも巫山戯上がった道化の、僕をおちょくる様な笑い声。
「……絶対殴る。いつか、絶対、本体を、殴るっ!」
奴の言葉が本気で言っている様に感じるのは、精神力の絶対量に圧倒的な差があるからだろう。
奴にとっての1が僕にとっては100なのだ。
そして、どう考えてもこれが本体の筈が無い。
死神や瞳神も義体でこの世界にいたのだから、これを殴っても本体には何の痛痒さも無いだろう。
「ハーハッハッハッ! 言質は取ったぞ麗しの銀っ!」
「む」
道化の神は大仰に両腕を広げ、愉快とでも言わんばかりに高笑いを始めた。
何か言ってはいけない事を言っただろうか?
いや、言ってない。いつか絶対殴る。本体を。
「いつの日か神霊を越え、大神の領域すら超越し、第十二位階へ至り私を殴り殺す。と、君は、そして貴様は、そう言ったのだよっ!!」
殺すとまでは言ってない。簡単に殺せるとも思えないし。
「愉快っ。愉快であるっ! これ程胸踊る宣言が我が永き神生で何度あっただろうかっ? ……10回は無かった様に思う」
……つまり、これを聞きたいが為に態度を変転させて僕をおちょくり怒らせた、と。
「——幼神よ、心せよ。麗しの銀は精体を鈍麻させ大神へ至る偉大なる愚者である!」
道化は高らかに嗤い——
「銀の支配に抗わねば、やがては強大なる銀の力に呑まれ君は永遠に消えるだろう」
静かに言の葉を紡ぎ——
「然りとて君と貴様を切り離す事は最早何者にも出来はせぬ。古き神々の定めた神霊階梯をすら越えんとする金の神ですら不可能だっ」
魂の叫びを伝播させ——
「君 が 神 へ と 至 る の だ !」
——宣告した。
僕が、神に、至る?
言葉から類推するに、今の僕のままではいけないと言う事だろうか?
道化の神の言葉は続く。
「その為の場は今っ此処に用意したっ! 君が真に戦うべき場所はこの地を置いて他に無い!! 勿論オトモダチを呼んでも良いがね。寧ろ大歓迎だがね。そして私は遊技神っ!! おっと。今のは忘れてくれ」
「?」
何故唐突に遊技神である事をプッシュし、それを忘れろと言うのか。
気にはなるが、気にしても仕方ない。
兎に角、此処で何かを頑張れば、僕はより強くなれると言う事らしい。
まだまだ分からない事は多いが、どうせ答えてはくれないだろう。
兎にも角にも、この『追憶の遊技場』をやって行くしかあるまい。
「詳しくはゲームの説明書を見てくっれっ給えっ。さ ゆ き ちゃん♡」
そう言って遊技神は僕に投げキッスを飛ばして来た。
当然回避したが、ハートは急旋回して僕へと迫る。
何これ、何か凄く追ってくるんだけど。凄いやだ。
遊技神の戯れ 品質? レア度? 耐久力?
備考:君に届け、私の お も い ♡ ※逃げられません。
ひぃ




