第7話 進化アイテム
第七位階中位
チェス兵達は、キングとクイーンを先頭に、より高位の者ほど前になる様整列していた。
その総数は、おおよそ1,000体。
真っ黒な兵士達が綺麗に整列する様は中々壮観である。
無限生成は説明の上ではDPを使用しないと書かれているが、DPの元である魔力を消費するので、僕にはどうにも本末転倒に思える。
しかし、一日の供給DPが減少する訳では無い。
そもそも迷宮はDP供給に制限がかけられている様なのだ。
僕が見た範囲だと、核が地脈から吸収する魔力量は核の能力に比例して一定値。
迷宮内部から吸い取る魔力は壁に接している微量のみ。
唯一生属性魔力、即ち生命力だけは、生物が発散すると同時に吸収している様だ。
生物は常時微量の生命力を発散しているが、生をより強く意識している際に、より多くの生属性魔力を作成、発散する。
つまりは迷宮に生物を引き寄せ、必死に戦わせる事で生命力を回収している訳である。
それ以外でDPを入手するには、侵入者を殺して魂を喰らい尽くすか、物を売買するかくらいの物だ。
ともあれ、無限生成とは、迷宮内部に存在する核が汲み上げた結構な量の魔力を、そのまま流用して魔物を生成する機構なのだ。
そんな無限生成は、やはり高位の魔物程作成に時間をかけるらしく、チェス兵達の数はポーンが群を抜いて多かった。
このままの速度で増殖して行くと、彼等の拠点が手狭になってしまうので、拠点の拡張を行っておく。
◇
西の迷宮最後は、第1層の調整である。
調整と言っても、魔物の配置や数を変える事はしない。
やる事は一つ。
——魔物召喚板のドロップ追加である。
此方の迷宮では、全ての魔物からモンスターカードがドロップする様に設定する。
入手可能なモンスターカードは、同系統最下級の魔物のみ。
その代わり、ボス級からのドロップ率はかなり高めに設定してある。
有象無象からは1万回に1つくらい、ボスからは10回に1つくらいのドロップ率である。
プレイヤー達には、劣悪な環境にも負けず、頑張って攻略し、魔物の軍勢を率いて貰いたい所だ。
それと、純結晶の一件で少し思い付いた事がある。
モンスターカードの強化についてだ。
レベルを上げるのは大量のマナ貨幣を払うだけで十分だが、召喚出来る魔物を進化させるのに関してはマナ貨幣だけだとイージー過ぎる様に思っていた。
なので、必要素材として幾らかの資材を集めて貰う事を想定していたが、それだと些か難易度が高過ぎる。
高位の魔物に進化させる為には高位の魔物の素材が必要です。
……となると王都近郊にそれが無い以上、此方側がそれを用意してやらなければならなくなる。
それは勿論吝かでは無いが、需給の観点から見て競争が激化したり、プレイヤー間でのトラブルが多発する可能性がある。
という訳で、そのやり方を変える事にした。
要となるアイテムがこれだ。
属性石・火 品質B レア度3 耐久力B
備考:火の属性魔力が込められた石。
これらのアイテムは、僕の迷宮の魔物からドロップしたり、僕の店で資材を交換する事で手に入る。
全ての属性石が同じ規格で作られており、これを使う事で魔物を進化させたり、魔法の道具を作成する事が出来る様にする。
これで難易度が程々に落ち着くだろう。
早速大量生産し、モンスターカードを誰かが入手したら、各迷宮の魔物からドロップする様に設定する。
おまけで、最初にモンスターカードを入手した人に、クエストを通してワンセットプレゼントもする。
これで、属性石が何に使う物なのか直ぐに分かるだろう。
◇
あれこれやっている内に、帰還指示を出した配下の子達が迷宮入り口へと集まって来た。
西の迷宮でやりたい事は全て終え、属性石もかなりの量を生産した。
なので、今日は最後に皆の性能を確認し、『リスティア』の攻略状況を確認してから寝るとしよう。




