第5話 鍛錬島の商売
第七位階中位
取り出した天帝竜は、眠っている様にピクリとも動かない。
体の色は、場所が洞窟だからか壁と同じ焦げ茶色へと変わり、魂が無くとも生存しているのがはっきりと分かる。
また、天帝竜は周辺の魔力を少しずつ吸い取り、自らの肉体に溜め込み、余剰魔力を発散していた。
これの使い道は3つ程考えられる。
1つは、解体して素材にする事。
一応肉体は生きているので、素材を剥いで回復させてを繰り返せば幾らでも天帝竜の素材を入手出来る。
まぁ、一度剥いだら完全に元に戻るのには結構な時間が掛かると思うが。
2つ目は、別の魂魄を生成して注入する事。
……まぁ、無理だが。
天帝竜と同格の魂魄を生成するのは、今の僕では厳しいと言わざるを得ない。
最後に、僕自身が操作する事。
これは、ちょっと微妙な案である。
勿論、僕の力量なら天帝竜の肉体を十全に操作する事は出来るだろうが、それは飽くまでも肉体に残った力を操作出来ると言うだけの事。
天帝竜を天帝竜たらしめる力の源流は今、僕のインベントリに入っているのである。
まぁ、その封魂結晶を改造して宝珠にすれば、天帝竜の体を完全にコントロールする事は可能だろうが。
少なくとも現時点の魂魄の密度では、封魂結晶と神結晶を弄る事は出来ない。
詰まる所レベルが足りない。
当面の間は天帝竜は無限素材生成装置になって貰うしか無い。
さて、これで今回入手した戦利品の確認は終わった訳だが……何から取り掛かろうか?
◇
夕食を済ませ、他多数の雑事をこなして、迷宮へ戻って来た。
タクメールによると、現時点のプレイヤーのレベル帯は、一番下で24〜27、ボリュームゾーンは29〜32で、トップは36〜39。
タク達は42〜45で、一番レベルが高いのはリナだった。
リナは大海魔に大ダメージを与えているので、初期大海魔からの経験値分配が諸事情によりかなり少なかったとは言え、その一戦で大いにレベルが上がった様だ。
そんなプレイヤー達は、大剣士含む50名と他が僕の迷宮を攻略しており、一部が鍛錬島へ、一部が北の森へ、そして大多数が元霧の森を探索している。
既に鍛錬島の件は開示しているので、霧の森で成果を得られなかったプレイヤー達が鍛錬島へ殺到するのは目に見えている。
プレイヤー達が押し寄せて来る前に、鍛錬島の旨みを少しでも削っておかなければならないのだ。
そんな訳で。吸血鬼達に指示を出し、比較的安めの売家や売地を買い占めておいた。
これで暫くは鍛錬島に拠点を持つ事は出来ないだろう。
買った家は貸家として使い、かなり安めの値段設定で貸し出しする。
土地は、どこも家を建てる用の狭い物しか無いので、他の家々とは一線を画する豪華な家を建て、お高めの貸家にした。
豪華な貸家には、
空間拡張された地下倉庫『倉庫・小』。
一日だけ下級ポーションと同等の効果を発揮する水が湧き出る杯『生命の杯』。
一日だけ下級マナポーションと同等の効果を発揮する水が湧き出る杯『魔力の杯』。
などが設置されている。
そして一番重要なのが、『住居核』。
迷宮核の家版である。
出来る事と言えば、住居の拡張や施設の追加、クランショップに劣るショップの使用くらいの物だ。
それ以外だと、倉庫の物の出し入れや目録の確認が出来たり、動かせない杯の水を余す事なく瓶に注入出来たりする。
この貸家、勿論お値段は中々に高めだが、毎日迷宮攻略をするなら寧ろお釣りが出る様な物だ。
僕も儲かる、プレイヤーも儲かる。正にwin-win。
そんなこんなで各種準備を終え、最後に一際広くて好立地の土地に僕の屋敷を建てて、住居に関する準備は完了。
タク達にはそこで寝泊まりする様にメールを送り、吸血鬼達にはタク達が来る事を伝えておいた。
次は、商売についての準備だ。
貸家も商売だが、僕がやるのは消耗品の売買などである。
お店の位置は、各種迷宮広場と鍛錬島迷宮都市の出入り口に設置。
内容は、宿屋、料理屋、武具屋、道具屋である。
宿屋に関しては、素泊まりの格安宿。
ベットは良い物だし、照明は使いたい放題のお得宿だ。
料理屋は、ワーカーの中に何体かいたコックが作る料理を販売。
食材は、スノーで取れた野菜。鳥肉、兎肉。鹿肉。海鮮。などなど。
武具屋は、主にプレイヤーが放棄した破損武具を材料にした高品質な鉄の武具。
そこから更に鍛え上げた魔鋼の武具だ。
勿論魔鋼の武具はかなり高めの設定である。間違いなく売れるけどね。
道具屋は、下級から中級のポーションとマナポーション。最下級から中級までの魔法符と魔法石。光源や携帯食料、縄、布、小瓶、結界石、他色々である。
値段設定は、市販品がクランなどのショップよりも少し高め、しかして僕が手を加えたちょっと良い物を売り、ポーションや魔法符もまた同じ。
尚、殆どの商品、店にはスノーの印を刻んである。
これでプレイヤー達を受け入れる準備は整った。
次は僕の迷宮を弄るとしよう。




