第48話 白の騒乱 十六 死を与える白
第六位階上位
先ず最初に総勢60のパフィ子をパフィ女王と接続する。
事此処に至っては、僕もパフィ子軍に何かを隠し立てするつもりは無いので、情報は全てパフィ女王にも共有されている。
僕自身がパフィ女王に送信した内容は、非常に分かりやすい物である。
即ち——黙って従いなさい——と。
お話ししている余裕は無いので、周辺の状況がどうなっているかしっかりと確認させた上での命令だ。
パフィ女王はそれを認識し、一拍置いて僕の指揮下に加わる事を承認した。
魂魄的にも精神的にも物質的にも接続された全61キノコのパフィ軍に、更に僕を接続する。
……まぁ、やる事と言えば、一列に並んで手を繋ぐパフィ子達の中に混じるだけだが。
手を繋げば、後は魂を繋ぐだけ。
其処が一番難しいのだが……僕は魂を融合させた経験もあるからね、お互いに手を伸ばしあっているこの状況で、失敗のしようが無い。
「ユィー、テー」
此方へ手を伸ばす幼い彼女は、僕が最初に捕獲したパフィ子。
僕はその小さな手を、そっと——
——握った。
◇
——世界は移り変わる。
僕の目の前に広がるのは、魔覚で見える世界に近いが、それとはまた異なる世界。
どうやらこれは、パフィ子達が見ている世界の様だ。
それと同時に元々僕が見えていた世界も感じられる。
パフィ子達の世界ではっきりと認識出来るのは、パフィ子達の魂魄体と物質体。
視覚情報はかなりしっかりとしているが、匂いや音は物理的接触で感知している様だ。
それ等に加え、地中や空中に存在する魔力と、大気中に存在する木級の風精霊が確認出来る。
……何とも微妙なパフィ子感覚だ。
差し当たってやるべき事は、パフィ感でくっきり認識出来ている竜帝の侵食。
それが終わったらパフィ感を改良するとしよう。
さて、件の竜帝とパフィ子達の戦いだが……何故か止まっていた。
その理由はおそらく、パフィ子達が僕の見えている世界を認識したからだろう。
僕は大気中の全精霊を認識しているし、パフィニョンの甘い匂いも、遠くから聞こえるフユキが放つ雷鳴も聞こえている。
取り敢えず情報を遮断した。
即座に僕が見ている物の解析へ移ろうとしたパフィ子達を止め、竜帝の攻略へ戻らせた。
——侵食率およそ10%前後。
その侵食方法は、休眠状態の竜帝から魔力を吸収し、肉体の支配権を極限まで奪い取る事。
奪い取った細胞は、手を加えると竜帝に気付かれてしまうので、そのままの状態で放置し、次の細胞に取り掛かる。
勿論、何の抵抗も無い訳では無い。
……と言うよりも、竜帝とパフィ子達の格の差がそのまま障害になっているのだ。
そもそもやっている事自体が非常に回りくどい物なので、時間が掛かるのは仕方無い。
作業を細かく分類すると、
・竜帝の魔力を吸い出して、パフィ子達の魔力を押し込む事。
・吸い出した竜帝の魔力を分解し、パフィ子達の魔力に変換する事。
・それら全てを隠匿する事。
それ以外の情報は僕の方で統率しているので、パフィ子達は件の三つの工程に集中出来る。
この三つの工程は、どれも同等の難易度だ。
隠匿係は常に全力で頑張っているし、変換係はその猛毒とも表現出来る竜帝の魔力を体内で分解しているし、交換係は直に猛毒と接触している。
攻めているのは此方だと言うのに、全パフィ子達が苦悶の表情を浮かべているのだ。
……と言う訳で、さっさと終わらせるとしよう。
僕がやる事は極簡単だ、竜帝の魔力を吸い出し、竜帝の魔力をパフィ子達の魔力に変換し、変換した魔力を竜帝の魔力と交換する事。
パフィ子達は全員でそれを隠蔽してくれれば良い。
◇
数十分の時間が経過した。
竜帝の侵食率は、実に90%と少々。
もはや竜帝が休眠から目覚めたとしても、満足に体を動かす事は出来まい。
後残っているのは、竜帝の頭、心臓、魔石の三つ。
侵食しようとしたら確実にバレる部位である。
このうち、魔石には膨大な量の魔力が込められているので、侵食は現実的では無いと判断した。
なので、最後に行うのは頭部と心臓の強奪だ。
これにより、竜帝は生きたまま死ぬ事となる。
それはつまり、死神に僕がやられた事と同じ事だ。
『……と、言う訳で……パフィ子達、一気に行くよ?』
僕の声に応じる61のパフィ声。
もはや隠蔽の必要が無いので、一気呵成に竜帝を仕留めるのである。
『それじゃあ……攻撃開始!』
そんな僕の声と同時に61のパフィ子達は、散々待たされてからお許しを貰った犬の様に、或いは屍肉に群がるハイエナの如く、はたまたお菓子に集まる子供が如きスピードで竜帝に襲い掛かり、そして——
——全てを喰らいきったのである。




