第42話 白の騒乱 十 広がる合唱の輪
※330万PV達成。今しばらくお付き合いください。
第六位階上位
あれからおよそ1時間後。
合唱は11人……11キノコから22キノコに変わった。
「オォーィ」「ゥヒュァー」「ハッハッハー」「ハフッハフー」「フィァー」「ホゥホー」「アーアアァー」「ブェァーー!」「ビャー!」「アファッ」「ボッ!」「フヘゥ」「オウッ」「アィアィオー」「ブァブー!」「フフフー」「フハハー」「ハハーフ」「ベァーブ!」「ヘアッ」「アィアー」「アオー」
辺りに響く奇怪な音。
心なしか人の声に近付いて来た様に思う。乳児くらいの声に聞こえる。
どうやら彼女らの従姉妹仲は良好の様で、仲間が増える毎におしくらまんじゅうが拡大していき、今や二段になっている。
山岳方面で捕獲したパフィ子達は、最初の内はかなりキノコっぽかった。
しかし、東方面のパフィ子と情報交換をして即座に人型っぽく変形したのだ。
……肉体の改変には結構な魔力を消費する様で、その魔力の供給源は周囲に生えているパフィニョン。
キノコがキノコから魔力を吸い上げて枯らせている様は、何処と無く猟奇的であった。
僕がクイーン狩りをしている間も西方面での戦いは続き、今やザッハーク君の周囲には十の球体が浮いている有様だ。
西方面にいる2キノコのアーククイーンからは、情報解析と組み上げの要請だけでなく、救援要請が引っ切り無しに来ている。
流石にアーククイーンの位置を見つけ出すのは無理かと思ったが、そこはまぁ人海戦術で、蟻1匹見逃さないような包囲網を形成する事で、逃す事なく進んでいた。
巨大な繁殖体には巨大な猪や熊、蛇等が体当たりでぶち壊し、慌てて転がり出て来たパフィ子は、小型の子達によって捕獲、連行され、球体に閉じ込められていく。
パフィ子達は捕まった当初は球体の壁を叩いているが、しばらくすると蹲って動かなくなる。
時折仲間が連れて来られると顔を上げるが、それだけだ。
……ちょっと可哀想に思えて来たので、早めに西方面へ向かうとしよう。
◇
移動は徒歩なのでフブキに任せ、僕は僕で別の件をこなしに行く。
時刻はもう直ぐおやつの時間。
そう……レイーニャ復活の時だ……!
と言う訳で、所変わってにゃん拠街。
僕が最初にこの世界にやって来た所だ。
「……ん?」
闇の中を進んでその地点に着いた所で、妙な物を発見した。
銀霊石 品質S レア度? 耐久力S
備考:銀の力を宿した霊石。
僕の魔力を発している謎の宝石だ。
形状はピンポン球サイズの球体。
透き通った水色の宝石は仄かに銀の光が漏れ出ており、闇の中にありながらもはっきりとその存在を主張している。
近付くまで気付かなかった理由は、大地の土属性魔力と暗闇の闇属性魔力が濃いからだろう。
近くなら銀の光が見えるが、少し離れると途端に見えなくなった。
発している魔力は寸分違わず僕の魔力。
場所から考えても、僕に所縁のある物だと分かる。
内部構造がとても気になるが、精神力の消耗は控えたいので後で確認しよう。
僕は石を拾い上げると、直ぐ様インベントリにしまい込んだ。
地上へ出る。
◇
午後の暖かな陽光が照らす廃墟。
遠くに見えるのは、相変わらず壊れたまま水を少しずつ垂れ流す噴水と、その水を飲む迷宮産のスズメ達。
僕が現れた場所の直ぐ近くに、レベル320になったワイルドキャットが1匹。
唐突に現れた僕に驚く事も無く、ただのっそりと立ち上がって此方をじっと見つめている。
それだけで無く、僕がニャンコと見つめ合っている数秒の内に彼方此方からニャンコ達が集まって来た。
その数何と、80匹。
鳥達は猫の接近に気付いておらず、チチチュンチュンと戯れている。
どうやら隠密能力が強化されているらしい。
猫達は特に襲い掛かってくる様子は見せず、ただただじーっと此方を見ている。
彼等が僕に何を求めているのか、それは言わずもがなだろう。
早速レイーニャを召喚する。
「『召喚レイーナ』」
僕の目の前に魔法陣が現れ、光を放ち——
——レイーニャが現れた。
「……」
レイーニャは蹲った姿勢からゆっくりと立ち上がり、緩やかな動作で顔を上げた。
紫水晶の瞳は、長く光の差さない場所にいたかの様に何度か瞬きをし、そして——
——僕を見て停止した。
「……し、死神にゃーっ!?」
『にゃーーっ!』
レイーニャの悲鳴を合図に、周囲の猫達が一斉にレイーニャへと飛び掛った。
「にゃっ!? にゃにが起きてるにゃ!? やめるにゃー!!」
『にゃーっ!!』
……うむ……皆レイーニャが帰って来て嬉しいんだね。




