第32話 白の騒乱 七 進化する白
第六位階上位
問題はどの様にして守るか、だ。
表に出て力を見せ付け、効率的に敵を屠るか。裏で密かに助けるか。
何方にもメリットとデメリットがある。
表に出るメリットは、敵を効率良く屠れる事。
デメリットは、今後のフユキの旅で変なしがらみが生まれる可能性がある事。
特に、権力者達は強い力を持つ者を自由にさせておく事は良しとしないだろう。
表に出ないメリットは、正に正体不明である事。
助けられたと言う実感も無ければ、しがらみなど生まれよう筈もない。
デメリットは、戦場を制御しきれない事か。
僕ならば兎も角、端末であるフユキには秘密裏に戦場を支配出来る程の能力は無い。
さて……どうした物か。
◇
「インヴェルノ殿! お下がり下さいっ!」
その声と同時に、周囲にいた巨大キノコを薙ぎ払い、一足跳びに前線から離脱した。
瞬間——
「——来たれっ、偉大なる竜の炎っ! 『火炎の吐息 』!!」
——凛と透き通る少女の声が響き、灼熱の炎が敵を薙ぎ払った。
特級範囲魔法『火炎の吐息』。
10段階あるらしい魔法の中では下から6番目。
儀式魔法とされる魔法の一種だ。
件の魔法は、特級下位の広範囲殲滅魔法に分類されている。
属性は火と竜の二つ。
彼女が持つ杖に竜の素材が使われているから発動出来るのだろう。
通常の発動方法は、単独で上級魔法を発動出来る魔術師が10人程集まり、専用の魔法陣を描いて、ある程度の質の杖を使い捨てにし、竜鱗等を幾らか消費してようやく発動出来る様な魔法である。
尚、以前僕が作った『大爆発』は、同格の特級下位に相当する魔法だ。
しかし、様々な理由によって、その威力は1段階上の王級になっていた。
そもそも、魔法は10段階あると言われてこそいるが、その実、特級以上の魔法は、全世界を通して発動した回数自体が少ない。
つまり、特級以上の魔法のランク付けはかなり曖昧なのだとか。
ともあれ、放たれた特級魔法、『火炎の吐息』は、少女、ルーシェレア・キルシアの目前にいたキノコ達を扇状に消し飛ばした。
単独で2度目の特級魔法を行使したルーシェレアは、顔色を青白くしながらも後方へ離脱して行く。
「怪我人は後退してください! 魔法師隊は詠唱をっ!」
声を張り上げている長身の女性は、副迷宮主のジョディ氏。
ジョディ・キルシア LV62 状態:副迷宮主
出来る女と言った風情の眼鏡さんだ。
何故フユキが前線に参加する事になったのかと言うと……その原因はこれである。
新種・ビックパフィニョン・硬身体 LV25
新種・ビックパフィニョン・魔抗体 LV26
新種・ジャイアントパフィニョン・迎撃体 LV44
新種・ビックパフィニョン・投擲体 LV21
——敵が更に進化した。
特に厄介なのは、斬撃や打撃では仕留め切れなくなって来たジャイアントパフィニョンと、自爆体のパフィニョンを投げ始めた投擲体。
最初の内こそ裏で行動していたが、そうも行かなくなったのだ。
幸いにして、新種が出始めた場所は公都北部のみ。
南部はエネルギーが足りないのか、ビックパフィニョン以上の物は殆どやって来ないし、他よりも必要エネルギーが多い自爆体は全く存在しない。
しかし状況はかなり悪い。
早く核を撃たないと、フユキだけでは迷宮都市を守れなくなってしまう。
だと言うのに——
——核は一向に見つからない。




