第31話 白の騒乱 六 迷宮都市にて
第六位階上位
フユキの視点では、遠くに街が見えている。
公都は王都同様草原に囲まれており、王都と比べて草原の範囲が2倍近い。
迷宮都市から出て草原を通り、森まで着くのに徒歩で一時間掛かりそうな程である。
そんな迷宮都市の草原は、全体の4割程の面積が白に侵食されていた。
迷宮都市は完全にパフィニョンによって包囲されていたのだ。
草原には、パフィニョンの他に何人かの人間がいた。
進行するパフィニョンの軍勢に対し、必死に戦っている兵士や冒険者達。
前線では近接戦士がパフィニョンを打ち減らし、後衛のローブを羽織った一団が、爆発したパフィニョンの肉片や白く染まった大地に火を放っている。
戦士が侵略者を倒し、魔法使いが侵食する白を燃やす事でどうにか戦線を維持しているのだ。
それでも、パフィニョンの侵食速度と人間の対抗力は五分五分だ。
「むむ?」
と、フユキが変な声を上げたのは、色々な物を同時に発見したからである。
キュリナ LV22 状態:眷属 《ユキ》
ジーナ LV24 状態:眷属 《ユキ》
ヒペリカ・ナラハ LV8 状態:パフィニョン侵食《微》
図らずして僕の眷属になった例の二人。
彼女らは件の子爵……の、娘であるヒペリカと言う名前の少女と共に戦っていた。
ヒペリカは、日に焼けた小麦色の肌を持ち、光の加減によっては金色に見える茶髪を一つ結びに纏めた少女である。
年の頃は14程、癖っ毛らしく、纏められた髪はボサボサに広がっている。
武器は何の特殊効果も無い鉄剣を使い、防具は身軽さを重視してか、若干露出多めの毛皮の軽装鎧を着ている。
オスカル・ナラハ LV32 状態:パフィニョン侵食《極微》
ナラハ子爵本人は、何名かの若い兵士を率いて迷宮都市西方の草原を守っていた。
前線で戦う戦士達は、皆一様に『パフィニョン侵食』と言うちょっと恐ろしげな名前の状態異常に掛かっている。
おそらく、この侵食が進行すると体の内外からキノコが生えて来るのだろう。
眷属の二人にこの状態異常が無い理由は、僕の魔力が彼女等を保護しているからだと考えられる。
僕の魔力の加護によって、二人は状態異常に掛かりにくくなっている様なのだ。
次は本命その1。
ルーシェレア・キルシア LV202 状態:迷宮主
一見すると、金髪サイドポニーのロリッ子で戦場には似付かわしく無い。
しかしレベルは、兵士や冒険者のボリュームゾーンが10〜30に対して、彼女だけが3桁。それも200レベルに到達している。
そして一番重要なのが、状態欄にある『迷宮主』と言う情報。
迷宮主と言う事は、彼女は迷宮都市にある迷宮の迷宮主なのだろう。
また、彼女はローブを羽織った連中のボスらしい。
ローブを羽織った一団は概ね十代から二十代程の年齢だ。
一体どの様な集団なのだろうか?
そして本命その2。
新種・パフィニョン・観察体 LV10
新種・パフィニョン・爆裂体 LV10
新種・パフィニョン・硬身体 LV11
新種・パフィニョン・迎撃体 LV12
新種・パフィニョン・護衛体 LV14
新種・パフィニョン・魔抗体 LV12
新種・ビックパフィニョン・迎撃体 LV20
パフィニョンの種類が増え、その上強くなっている。
物理攻撃に耐性があるパフィニョンや、魔法攻撃に耐性があるパフィニョン。
巨大化した者や、自爆する者など、確実に進化して行っている。
ただ、一番危険な香りを放つのは、観察体。
観察体のパフィニョンには、目玉らしき物が一つついていた。
つまり、およそ30分程の時間でこの生物は目玉を獲得した事になる。
……僕が最初にパフィニョンと遭遇した地点は、パフィニョンの侵食速度と侵食範囲から考えると、侵食率《小》と言った所だろう。
対して迷宮都市は、侵食率《中》と言った所か。
核のスキルや情報を共有する能力は、核に近い程早いのだと推測出来る。
故に、末端エリアはパフィニョンが弱く種類も少ない。
迷宮都市があるエリア、区分にして中層エリアは、末端エリアと比べるとパフィニョン達が強く、種類が多い。
実際に、迷宮都市北西の森をずっと進んだ場所、僕の配下達がパフィニョンと戦っている場所は、外敵が少なかったのかパフィニョン達のレベルも低く、種類も少ない。
パフィニョン達は核に近い程、強く、種類が多く、進化が早い、のだ。
それに、パフィニョン達は数が増えれば増える程、時間当たりの経験蓄積数が多くなり、スキルが磨かれて行く。
やはり、時間を掛ければ掛ける程パフィニョンは刻一刻と強くなって行くのだ。
硬身体は、斬撃や打撃を受け続けて物理耐性のスキルを会得し、そのスキルを使って産み出されたのだろう。
そして魔抗体は、魔法を受け続けて魔法耐性のスキルを会得し、産み出された。
この様な事態になった原因の一つは、パフィニョンがキノコだったからだと考えられる。
パフィニョンは1匹の魔物だが、その実肉体は菌糸で出来ている。
それ故に、死後もその肉体に存在する生きた菌糸から、死に至る理由となった経験が他のパフィニョンに伝達されてしまうのだろう。
結果、あり得ない速度での急成長を実現するに至った。
その裏には、この事態を巻き起こした理由の二つ目。
パフィニョンを増殖させる膨大なエネルギーが存在している筈だ。
情報やスキルの伝達速度、進化速度がエリアによって異なるのは、そのエネルギーが不足しているからだと推測出来る。
もし迷宮都市がパフィニョンの手に落ちたら、其処にいる人間のエネルギーを吸収して一気に支配領域を広げてしまう事だろう。
迷宮主だけは生き残ると思うが、それ以外は死滅する。
それを阻止する為にも、フユキには頑張って貰わなければ。




