第26話 白の騒乱
第六位階上位
セツナの体で壁を作りつつ、同時にフブキの方の操作もする。
壁は高さ10メートル、幅ざっと15メートル程。
規模は迷宮を中心とした200メートルの円形で、その素材は外殻が石材、その内部が魔鋼となっている。
防壁の中は3階層。
兵士の詰所や武器庫や倉庫、内側や外側に向けた兵器の設置もしている。
防壁の四方には鋼の門があり、その門は二階の直ぐ横にあるレバーを使って開く事が出来る。
自力で開けられるなら何の問題も無いが、開けられない場合は一度防壁の中に入る必要がある。
勿論、レバーがある部屋からは門の前後が見える様になっているので、そこに兵士を配備すれば何時でも門を開く事が出来る。
一応、団体用の大きな門の隣に小さめの門を用意してあるので、迷宮を探索する際はそこを使って荷車などを持ち込んで欲しい。
そんなんこんなでセツナが壁の作成をしている間、フブキ達の方では緊急事態が起きようと——
《【王国クエスト】【緊急クエスト】『白き死の舞う地』が発令されました》
【王国クエスト】【緊急クエスト】
『白き死の舞う地』
参加条件
・対象を目視する
達成条件
・原因を排除する
失敗条件
・迷宮都市が滅びる
備考
・迷宮都市近辺の森が、突如として白く染まった。
白き死は周囲の木々を枯らしながら進行を進めている、直ちに原因を突き止め、排除せよ。
——起きた。
◇◆◇
「フブキ、ちょっと体を借りるね」
『ふひゃあ!?』
そんなやり取りがあってから、フブキを操作し始めた。
フブキが悲鳴を上げたら、何故かフユキがカラカラと笑いだし、その隙を突いたフブキがフユキの足を操作して転ばせた。
様々な魔法を使った実に鮮やかな手並みでフユキの隙を広げ、転ばされたフユキは一瞬何が起きたのか分からない様な顔をしていた。
ともあれ、視界に写り込んだ妙な物の確認である。
場所は、迷宮都市へ繋がる長い坑道。
それを8割程進んだ所だ。
元々坑道に入る前から不思議な気配はしていたのだが、そこまで進んだ所で、遠目に不思議な物が見えたのである。
近付いてみれば直ぐ分かった、それは——
「……鎧か?」
「……キノコか」
——キノコに覆われようとしている鎧だ。
どうやら鎧の中身はまだ生きている様だったので、回復魔法で治癒させながらキノコを焼き払い、ついでに中身の中身を浄化して救出した。
クゥヘス LV10 状態:気絶
年若い少年である。
ショックウェイブで起こす事も考えたが、自力で調査した方が面倒が少なく、より正しい情報を得られると判断したので、念力で運んで行く事とした。
進む事数分。
僕達の前に、白い壁が現れた。
《【王国クエスト】【緊急クエス——
◇
新種・パフィニョン・繁殖体 LV51 状態:待機
新種・パフィニョン・侵略体 LV3 状態:警戒
新種・パフィニョン・護衛体 LV5 状態:警戒
新種・パフィニョン・迎撃体 LV3 状態:警戒
新種・パフィニョン・蓄養体 LV1 状態:待機
パフィニョンとは。
真っ白いキノコの事である。
迷宮都市北西の森で偶に発見される高級なキノコの事なのだ。
今僕の目の前にいるのは、僕の膝程の大きさをした足があるキノコ。
白い壁には、普通より少し大きなキノコが何本か生えており、ちょうど真ん中辺りに僕が入れそうなくらいの大きな穴が空いていた。
そこから件の歩キノコが定期的に10匹ずつ行進して来ているのだ。
歩キノコはどうやら数種類いる様で、笠が大きいのが侵略体、太いのが護衛体、スマートなのが迎撃体らしい。蓄養体は一見してただのキノコだ。
10匹の編成は、侵略体1匹、護衛体4匹、迎撃体5匹。
出てきて直ぐに侵略体を中心とした陣形が組まれ、数分に一度くらいの頻度で侵略体が笠を振って、白い粉を撒き散らしている。
観察していると、侵略体が蓄養体を体に取り込む瞬間を目撃した。
彼等がやっている事を分かりやすく纏めると——
「——キノコの進撃だ……!」
「何!? キノコだと!?」
先のクゥヘス少年にくっ付いていたのは、おそらく蓄養体だろう。
ざっと見た所、繁殖体が歩キノコを生産し、侵略体が胞子を振り撒く。
護衛体と迎撃体が侵略体の防衛を担い、蓄養体が侵略体のエネルギー補給を行うのだ。
繁殖体が侵略軍を生み出すのは、おおよそ10秒に一回。そうかと思えば、急に生み出さなくなった。
おそらく、一度に大量に生産してから排出し、しばらくエネルギーを貯めてからまた生産するのだろう。
……さて、観察はここまでにして、少し仕掛けてみるか。
取り敢えず、7匹のアニマル君達には下がって貰って、フユキに行かせよう。
「という訳でフユキ、よろしく」
「うむ、任せろ! ……所であれは美味いのか?」
「パフィニョンは美味いらしいよ?」
「そうか! ……では行ってくる」
パフィニョンは美味いらしい。パフィニョンは。
あれが美味しいかは僕にも分からない。
と言うか、フユキはキノコ好きなのかな? それとも食べるのが好きなのか。
フユキが刀に手を添え、キノコへ向かって歩くのを見送った。





