第17話 冬鬼 戦いたい
第六位階下位
森の中をテクテクと歩んで行く。
隣を歩くフブキは、元の強くてかっこいい装備を着替え、今はアワユキと同じ、やたらと防御性能が高いチュニックを着ている。
対する我は、大姉君から制限を受けていない。
かっこいい鬼の面を被り、かっこいい真っ赤な鎧を着込み、かっこいい刀を腰に挿している。
更に言うと、この刀は元々無銘であった物だが、今は大姉君が手ずから鍛え直し、大雷精金属の刀として生まれ変わった物なのだ。
銘は『雷樹』。
白に染まる大地から、遥かなる天へと昇る雷の大樹。
それがこの刀の名前。
……凄いかっこいいっ。
流石大姉君だな!
◇
大姉君のテストとやらが終わった。
我としても、大衆の実力を測る良い機会だったので本気で挑戦してみたのだが、やはり大姉君と姉君にはとても敵わぬ。
しかし、武具の性能や個々の実力、そのレベルになるまで掛かった年月などを知る事が出来た故、とても有意義な時間であった。
この後直ぐに大規模な戦があるらしい。
実戦を観察出来る絶好の機会だ。
大姉君が表示させていたカウントダウンが、今、ゼロに変わった。
シンと静まり返る戦場。
其処へ聞こえて来た、地響きと雄叫び。
次の瞬間。
草原に開いた大きな穴から、ゴブリンの大群が溢れ出して来た。
その様は鉄砲水の如く、一直線にプレイヤーへと突き進んで行く。
戦場の視点は3つ。
大姉君の闇の中から地上を見上げる視点と、姉君の外壁の上から戦場を見下ろす視点。そして、アワユキの後方から戦場を見渡す視点。
戦いの様子が良く分かる。
どうやら、プレイヤー達は戦場を四分割し、4人の男がそれぞれの隊、750人を指揮、何人かの女がそれの補佐をしている様だ。
リーダー格の4人の内2人の男は、内に秘める魔力の丈に合わない非常に強力な武具を身に付けている。
他の2人も同じく強力な武器を装備し、それらを補佐する女達も同等かそれ以上の武器を持っている。
彼等が、大姉君の友人達だろう。
襲い掛かって行くゴブリンは、隊の隙間へと突き進んで行く。
各自で命令系統が統率されているので、最初の混乱が収まった後はゴブリン達が挟み撃ちに合う事だろう。
ゴブリン側の部隊は、ゴブリンジェネラルを隊長に据えたゴブリン500体の大隊を10個。
中央に切り込んで行ったのが1,000匹の二部隊。
他の部隊は進行半ばで別れ、四部隊が別の狭間へ。残り四部隊がプレイヤー達と正面からぶつかり合う。
数や武具では優っていても、個々の戦闘力では圧倒的に劣っている為、やはり最初の混乱が収まればゴブリン達は瞬く間に殲滅されるだろう。
そして今、
ゴブリンの先頭部隊とプレイヤー達が、
——衝突した。
◇
戦闘が始まって数分。
戦況は概ね予想通りに進んでいた。
各部隊の隙間に飛び込んで行ったゴブリン達は、自らの命を顧みる事なく、言うなれば、骨を断たせて肉を切る様な戦法を行なった。
その捨て身の突撃は、多数の犠牲を出しながらもプレイヤーの壁を突破、一時的にプレイヤー軍を分断する事に成功した。
それだけではなく、後方にいた回復専門のプレイヤー集団へと攻撃し始めている。
分断されたプレイヤー部隊、特に四方を囲まれた中央の二部隊は、捨て身のゴブリン軍により密集陣形だった筈の前衛が混戦状態。
ゴブリンの身長が低い事と槍持ちが多いせいで、同士討ちが目立つ状況になっている。
……大姉君、上手くやり過ぎじゃないか? これ……。
中には槍から短剣や剣に切り替える者もいたが、多くは槍とスペアの槍しか持っていない様で、衝突に備えた硬い密集陣形が裏目に出た結果となっている。
四方八方をゴブリンに囲まれた前衛は、捨て身を辞めたゴブリンによって立て続けの攻撃を受け、レベル差で死者はいないものの、それも時間の問題に見える。
また、中央二部隊の中衛は、部隊を四つに分け、前衛の補助、左右の壁の破壊、後衛の救援へと向かわせ。
外側二部隊の中衛は、前衛の補助、中央二部隊の救援、その他敵の警戒、の三つに分けた。
尚、外壁の上にいる遠距離攻撃部隊は、最初こそゴブリン軍へ攻撃を加えていたが、如何程も削れぬ内に混戦になってしまったので、殆ど攻撃出来ずにいる。
まぁ中には、的確にゴブリンの頭蓋を射抜く弓使いがいたり、5秒に一本くらいのスピードで追尾型の矢魔法を放つ者がいたりと、出来る者は攻撃し続けているが。
ともあれ、このままの戦いが続けばゴブリン軍は半分まで削れるだろうが、代わりにプレイヤー軍の前衛は全滅。中衛と後衛にも爪痕を残す事態になるだろう。
私なら刀の一振りで100匹は狩れる自信がある!
と言うか、このかっこいい刀を振るいたくてしょうがない。
見ている事しか出来ないのが口惜しいっ。




