第7話 合成獣研究施設
第六位階中位
中に入ると、即座に屋敷中に隠れている偵察用の合成獣を血刃で殲滅した。
各部屋は壁に沿って微弱な結界で分けられ、それぞれの気配が分かりにくい様に作られていた様だが、構わず全て殲滅。
邪魔な気配を取っ払い、地下への道を探すと、それも直ぐに見つかった。
二階にある一番広い私室のクローゼットの中である。
地下への階段は一階の壁の間を通っていて、割と巧妙に隠蔽されている。
暗闇に染まる階下からは、奇妙な臭いと生暖かい風が吹いて来ている。
何とも言えない嫌な気配を感じるが、そうであれば進まない訳には行かない。
「……行こう」
そう声を掛け、闇の中へ一歩踏み出した。
◇
長い階段を進む事しばらく。
真っ暗闇の中に扉が見えて来た。
場所は地下水路よりも少し上くらいの位置。
……だから、崩落するって。
迷宮、地底湖、地下水路ときてこの謎の空間、その上、高さ的には王城地下の書庫と同じくらいの深度である。
審判の間はその更に下、地下水路より僅かに下くらいの位置だ。
ルベリオン王国の人は地下が好きなのかな?
扉は、通常の鍵と魔法的な鍵を組み合わせた様な作りの代物であり、解析するまでも無く簡単に解錠する事が出来た。
さて、開くか。
「ふむ、また無駄に広く……」
扉の先にあったのはそこそこの広さを持つ広間であった。
天井も高く、かなり奥行きがある。
「私がやるの、任せるの」
灯り石によって照らされた広間に入り、中央くらいまで進んだ所で、アルネアがそう言った。
次の瞬間、左右の壁が重い音を立てて沈み込む。
壁の向こうにいた者は——
合成獣:タイプ・オルトロス LV42 状態:崩壊《小》
合成獣:タイプ・ミュルメコレオン LV32 状態:崩壊《中》
合成獣:タイプ・四腕大猩々 LV36 状態:崩壊《小》
合成獣:タイプ・ユニコーン LV23 状態:崩壊《小》
合成獣:タイプ・グリフォン LV41 状態:崩壊《中》
合成獣:タイプ・コカトリス LV24 状態:崩壊《中》
合成獣:タイプ・アラビス LV29 状態:崩壊《小》
合成獣:タイプ・ホーンラビット LV12 状態:崩壊《微》
合成獣:タイプ・多頭蛇 LV31 状態:崩壊《中》
——夥しい数の合成獣。
タイプ・〜と言う名前が付けられた個体は綺麗な物だが、他の合成獣は奇妙な物ばかりである。
その上、どの合成獣も体の繋ぎ目らしき部分が紫色をしたゲル状の物質になっている。
状態欄にある崩壊とやらであろう。
其処から生気が漏れ出しているので、倒さずともその生は短い物であろう。
獣達の全身には何やら液体が付着しており、灯り石の光に照らされてぬらぬらと光っている。
とっても気持ち悪いです。
その合成獣達は、悲鳴の様な雄叫びを上げると部屋の中に飛び込んで、アルネアが張った細い糸によってバラバラにされた。
辺りに飛び散った肉片は、どうも新鮮さが足りない。
とにかく色々と気持ち悪い。
……だが、錬金術師の視点で見ると、これは少し参考にすべきだろう。
「不完全なキメラね……材料不足に魔力不足、使った生き物の品質も低い。……こんなんで伝説の魔物を再現しようなんて……製作者の高が知れるわ」
「終わったの」
「うむ、ご苦労」
「じゃあ、行こうか」
遺体は全て回収し、『合成獣』ファイルを作って保存した。
連中が出て来た壁の先は、合成獣を投入してから封鎖された様で、完全に密閉されている。
進む道は正面の扉しかない。
特におかしなギミックも無く、扉は開いた。
その先にあった長い通路を進み、もう一度扉を潜った先は、
——合成獣の実験施設であった。
「ふむん」
其処彼処に用途不明の管や水槽、ゲージがある。
直ぐ真横にある大きな水槽は、中が緑色の液体で満たされており、その中には蠍と蟻をくっ付けた様な奇妙な生物が浮いていた。
合成獣 LV9 状態:休眠
どうやら施設自体はしっかりと稼働しているらしい。
◇
軽く見て回った所、本が沢山置いてある所に着いた。
其処にあった資料をインベントリにしまって確認した所、沢山の資料の中からこの施設の地図らしき物を発見した。
僕達が最初に入って来た所は『魔獣研究区画』。
今いる場所は『研究資料室』で、それらの他に『魔獣育成区画』『亜人研究区画』『亜人育成区画』『精霊研究区画』『竜研究区画』『保管庫』『居住区画』などの複数の区画がドーナッツ状に並べられて存在している。
出入り口も幾つかあり、地下水路に数箇所、王城地下や他の貴族街、はたまた北東の岩場や北と南の森にも繋がっていた。
思っていた以上に広大な施設である。
更に付け足すと、動力源はどうやら地底湖の巨大結晶の様である。
ほぼ全て自動で動いている。
研究資料室は各研究区画に一つある様なので、僕としては全て回収しておきたい所だ。
魔獣研究資料には、幾らかの古文書もあり、『古エルフ言語』や『旧ルベリオン帝国言語』の物もあった。
これらの言語は後で解読、と言うかスキルで取得しよう。
「さて、それじゃあ進もうか」
怪しい場所は沢山あるが、取り敢えず、ドーナッツ状の中心部、『総合管理区画』を目指そうか。
◇
移動中、周囲の警戒は三人に任せて、各施設の研究成果なんかを軽く見ておいた。
それによると、未完成品を『合成獣』、完成品を『合成真獣』と呼び分けている様だ。
名前の理由は、研究の象徴、獅子の体に山羊の頭、蛇の尾が付いた伝説の魔獣、キマイラにあやかっての事らしい。
研究区画は、ドーナッツ状の外側に未完成品が、内側に完成品が、保存、研究されている様だ。
実際に、進んで行くと次第に水槽の中に浮かぶ魔物達から綻びが消え、より完全な姿に近付いている様に見える。
最深部には何があるのやら。
楽しみでならない。




