第42話 ルーイリア研究所
第八位階下位
色々探っていて分かった事は、ルーイリアが密かに魂の研究を行なっている事。
これは他の熾天使にも話していないようで、秘密裏に、且つ片手間に行われていた。
内容は単純な死と生の挙動から始まり、魂の崩壊現象の徹底的な観察と、邪神の類い、負の化身との接触時に起きた事象の観察データ、その考察について、事細かに記録されていた。
それら記録を見る限り、最初の内は相当根を詰めて調べていたようだが……完全に崩壊した魂をどうやっても元に戻す事が出来ないと分かった後は、まばらにしか研究を進めていなかったらしい。
英雄の魂のコピーも、その研究結果を流用した物で、どうも崩壊した魂を元に戻したり、移植して互換する方向で研究したりしていたようであった。
これらはかなり昔、おおよそ一千年程前の研究である。
しかし、最近になって魂の研究を再開し、前と同じくらいの熱意でそれを進めているようであった。
主な研究の方向性としては、負の汚染を取り除く物と壊れた魂の自己治癒能力を高める事。
そしてそれらは、おおよそ5年前から再開されている。
5年前に起きたという黒の災禍と無関係ではないだろう。
まぁ、日記を見れば何が起きたのかはわかろう物だが……どうやら熾天使の1人が相当に無茶をして汚染を受け、現在休眠状態らしい。
つまり、現在戦闘可能な熾天使はその天使とローネリアを除いた4体のみ。
非常に残念な結果である。
だが、朗報もある。
それが、これだ。
熾天使人形 LV721MAX 状態:隷属
5年前から並行して行われていた研究で、天使達の光輪を集めて解剖し、その内部構造を解析して、複数の光輪を継ぎ接ぎし濃縮、生み出した熾天使級の光輪と、同じようにエンジェルシュガーを濃縮したセラフィムシュガーを用い、おまけにルーイリア達熾天使の抜け羽を加えて作られたのが、このセラフィムドールだ。
これの光輪を制作するのには、ただの天使なら……ロスも考慮すると5から10万人分くらいの光輪が必要だろう。
シュガーの必要量はそれよりやや少なくなる。これは天使という種族の最も強靭な部分が光輪だからだ。
そんなセラフィムドールが、5体。
天使が少なくとも25万人程度死んでいる。
研究にはそれなりに消費した数もあるだろうし、おそらく研究に使われた光輪は50万を超えるだろう。
何なら一千年も時間があったので、50万なんて比ではないくらいの数の光輪を研究に使っている事だろう。
これに加え、地上から持ち込んだ低位金属を巨大術式によって強化、製錬、十分なランクの武装を装備させている。
レベルにして780クラスは期待出来る。
……しかしよく見ると、暴走を恐れてか、光輪の機能の半分程度を制御に割いているので、100%の性能を引き出す事は出来ないだろう。
現状の戦力予測では、こちらが用意した戦力はたとえ一意専心シャルロッテ結晶と天界の太陽が大爆発したとしても過剰だ。
……もっと伏兵ない?
その後もルーイリアの研究者を調べたが、特別分かった事と言えば、帝国よりもかなりしっかりした低位素材を用いたジャッジメント装置とか、高位素材を用いた連射できるジャッジメントガンとかがあったくらい。
ジャッジメントはレベル300を起点に100体規模のレベル80相当ゴーレムをつかって発動させていた儀式魔術で、威力的にはレベル500程度。
それを丁寧に組み立てれば、レベル600程度まで通じる威力になる。
それをポンポン連射出来るジャッジメントガンは中々有用だが、所詮レベル600クラスの攻撃力だと、今の戦場では牽制になるか否か程度である。
後は……熾天使達の使う術について。
これは、どうやらローネリアが魔界に行った後に開発された術のようで、完全に未知の情報だったが……まぁ強者が強い力を振るうのは当たり前の事なので、特に気にする必要のある情報ではない。
勿論術式を解読すればその脆弱性や出力の限界も見えて来るので、そう言う点では知っておいて損のある物ではないが。
その術系統は要約すると、セラフィック系と呼ぶべき術式、または流派と言える物だ。
セラフィック系の術式は各熾天使の光輪にインプットされており、各熾天使の得意分野によっては幾らか初期より出力が向上している可能性はある。
主な術式は、極大光線を放つ必殺技セラフィック・ジャッジメント。それよりも小さな光線を放つセラフィック・レイ。剣を作るセラフィック・ソード。矢を放つセラフィック・アロー。広範囲無差別攻撃のセラフィック・ブレス。絶対強者のセラフィック・インカーネイト。
魔力の消費はそれなりに激しいだろうが、その分威力もとんでもない物になるだろう。
だがまぁシャルロッテ結晶や太陽の爆散には敵わない程度だ。
これら術式はドールの方にも刻まれている。
瞬間火力の期待値は少々上がるが、ガス欠を考慮すると些か不足だ。
ルーイリアの研究所はこんな所。
他の凡ゆる研究機関と比べても中々完成度の高い研究所だった。
これに匹敵するのは現状では血鬼郷のフォーレンくらいである。
それでは次に向かおう。




