第39話 天界の太陽
第八位階下位
直ぐにでも聖域の調査に向かいたい所ではあるが、そこは熾天使の居城である。
忍び込むにも多少は慎重に行動した方が良いだろうし、その為には、聖域に入る事が許された天使を調べる必要がある。
何でも光羽と呼ばれる天使達である様だが、中々聖域から出て来る事は無く、月に一度程度の頻度で物資を持って行くくらいの物。
そして、その月に一度と言うのが、護信軍が物資を地上から運んで来る日。
即ち、今日である。
情報は伝達されているので、間も無く遣いの光羽がやって来る筈だが、それまでの間、少し時間を潰す必要があるのだ。
と言う訳で、先ず最初に見るのは、天界四軍の支配者達。
天界四軍にはそれぞれ、ドミニオンと言う役職の四枚翼の大天使が1人ずつ配置されている。
その下にそれぞれ、十二翼と呼ばれる大天使、アルケー、エクスシア、デュナメイシスがいるのである。
総軍が他三軍から下に見られている理由は、それら十二翼の役職が無いからだ。
一方で、総軍が単純な使い捨てでは無い理由は、総軍担当のドミニオンが若干レベル高めな為。
詳しく見た訳では無いから何とも言えないが、他三軍のドミニオンがレベル450前後なのに対し、総軍のドミニオンはレベル500。
これは天界の傾向を考慮すると、役職を付与された本人が強いのでは無く、役職に込められたエネルギーが多いのだと考えられる。
考えられる事は多々あるが……もしかしたら総軍のドミニオンは、他のドミニオンのまとめ役の為に高レベルを付与されていた可能性もある。
さて、そんなドミニオン達だが、どうやら総軍のドミニオン以外は仲が良い様である。
今も報告やら何やらは部下に任せ、3人でお茶会をしている。
まぁ、仲が良いと言っても表面上だけの様だが、その理由と言うのも面白い話だ。
にこやかに微笑み合い紅茶を嗜む3人の意思の表層に常に浮かんでいる情報は、ドミニオンの罷免の仕様。
それを纏めるに……ドミニオンの役職を解除する方法は概ね3つある。
1つは、ドミニオンより上位の役職、セラフィムによる決定。
これは少なくともドミニオン達の認識としては一度も行われた事がない。
2つめは、ドミニオン2人が罷免に同意する事。
ただし総軍のドミニオンを罷免するには3人の同意が必要となり、一方総軍のドミニオンは1人で他のドミニオンを罷免する事が出来る。
つまり、総軍のドミニオンの実質権限はセラフィムと同等と言う事になる。
相違点は他ドミニオン3人が同意する事で罷免させられると言う事。
3つめは、自分の部下十二翼と、他のドミニオン1人の同意がある事。
つまり、自分の部下に限り、十二翼の全票がドミニオンの票と同等になると言う事。
また、ドミニオンの役職を得る方法も3つある。
セラフィムの指定か、先代ドミニオンの指定、もしくは、先代が罷免された際に第一翼が自動的に繰り上がるかだ。
つまり、三軍のドミニオンは3人仲良くしつつ、部下を最低でも1人抱き込めば、安全ラインをギリギリ維持出来るのである。
……天意軍のシーリンは、そこら辺何も考えてない脳筋なので、天意軍のドミニオンはバランス調整を失敗した模様。
まぁ、出動自体が少ない軍団で、出動しても大切に運用される傾向があるので、簡単に功績を稼げないから本来運用はそう難しくない筈なので、シーリンがおかしかったのだ。
実際にドミニオンの息が掛かっているのは第三翼の大天使の様で、何ならアルカノもおかしかった訳だが。
ともあれ、三軍のドミニオン達は、3人束になる事で安全ラインを保っており、総軍のドミニオンは歯痒い思いをしながらも、ドミニオンの総意に従っている様である。
また、三軍のドミニオン達はかなり明確に英雄達を見下している様で、レイ君やノーレルのオリジナルを失った件に関しては特に気にしていない様だった。
シーリンがマシな部類の辺り、天界はもうダメかもしれない。
「……ふむ?」
あまりにその他大勢が貧弱過ぎて、投入する戦力を考えつつ、空高くに輝く太陽を眺める。
熾天使以下の天使達について考えるより、太陽を眺めている方がずっと有意義だ。
天界の太陽 品質S レア度8 耐久力S
備考:
天界に輝く太陽。その光は遍く悪意を焼き尽くし、全ての命を祝福する。
……性質を見れば明らかだが、この太陽の元で暮らす天使達が、聖神と言う存在に順従であり、何処か幼稚で、やたらと欲望に素直なのは、この太陽の影響であろう。
想定レベル800相当の、極めて高強度な神性の器であり、使い道は幾らでも考えられる。
流石は信仰によって生じる世界、天界の太陽。
その他大勢とは比べ物にならない、素晴らしい拾い物である。
僕は気分を良くしつつ、今度は居住区の方へ視線を向けた。
壁など特にない町から、3人のお子様天使が出て行くのが見えた。
……暇だしちょっとついて行ってみようか。




