第25話 神族を作ろう
第八位階下位
全てを凍てつかせた白雪一行を撫で回し、その奮励に十二分な報いを与えた。
細部はまだまだ詰めて行く必要があるが、これで神話を顕現させ神域を展開する事が出来る様になったので、取り敢えず良しとしておこう。
神域の主な効果は、指定の範囲内を凍結させると言う物。
それにより氷属性の精霊を爆発的に活性化させ、領域内に存在する全てのモノに凍結を強制させる。
その力は白雪の純粋な眷属と僕以外の全てにデバフを与え、氷白やレアス君等を大幅に強化する。
目下の問題点は、神域を展開すると肝心の白雪が疲労困憊になる所。
まぁ、そこは休憩所で何百回でも神域を降ろして、感覚の慣れと関連スキルのレベリング、それから魂自体のレベリングをして行くしか無いだろう。
なに、神域を降ろすなんて誰にでも出来る事では無いので、白雪にはちゃんと才能があるし、ゆっくり鍛えて行けば良い。
あと僕が何か付け足すとすれば……現時点では雑兵の生産しか出来ていないハバチュリオン達をもう少し強化した方が良いだろう。
具体的には、黒霧合体をしているハバチュリオン4体を正式に合体させて能力の上限を引き上げる。
より具体的な数値としては、レベル600程度を生産出来るのを目標とし、最低でもハバチュリオンのレベルは750程度へ到達させる。
魂をストックできる様にして生産のコストを下げるのが良いだろう。
それによって産み出すのは、白雪と言う神の眷属、神族である。
月の徒や鈴の徒、天殻人や天樹人、機装人類の様な精強な雑兵だ。
……まぁ要は、ちょうど良い捕獲対象がいないのが現時点での問題なので、勢力を増大するには神族を産み出す他無い。
これが出来たら、白雪一行を神群と呼んで良いだろう。
◇
白雪達の更なる奮励を期待しつつ、向かったのは中位環境迷宮を攻略しているタク達の元。
中々素早い物で、既に10の迷宮を攻略し、現在11個目の迷宮に挑んでいた。
まぁ、マシロやリナがいるのだから然もありなんと言った所か。
場所は、攻略難度の高い迷宮、大雲海。
光系統や飛行系の魔物が多く生息する浮き雲を縫って進み、遥か空へ到達するのが目標のこの迷宮は、他の迷宮と比較して自由度が高く、探索範囲が広い。
なんと言っても積層型迷宮であり、単純な表面でしか無い大森林等の迷宮と比べると、探索可能範囲は実に10倍近い。
つまりは1番面倒な迷宮と言う事である。
基本的には大きな浮島が幾つか存在しており、小さな雲の道を辿って行く事で、浮遊や飛行の能力を持たない者でも登って行く事が出来る。
また、幾らか浮遊スキルがあれば上に行けるショートカットがあったりもするし、逆に落とし穴があったりもする。
まぁ、飛行スキルがあれば、迷宮を迷う必要すら無い訳だが。
他の迷宮にも幾らか見られる宝箱からは、申し訳程度の光や聖系統の道具が出たりする。
完全に孤立している小島なんかにはよりレアな宝箱が設置されていたりするし、雲に閉ざされた小迷宮の最深部にもあったりするが……作れる身からするとそう大した物は出ない。
そんな大雲海にて、タク達は概ね6つ程度のパーティーに分かれて探索を進めている。
レギオンで地図を共有し、地図埋めをしながら探索している様だ。
パーティーもそれぞれ役割を決めている様で、中々効率的な探索が出来ている。
先ず最前線を走るのは、マシロ達新規組6人。
レベルが低い一方で技量は高いマシロやシキナ、ミカ、キリカ達がとにかく敵の多い最前線に殴り込みし、ちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回り……と言うかまぁ、乱獲。
一応経験値は分配されるが、貢献度により分配の量も変わるので、専らレベリングの為であろう。
それに続くのが、タクとアヤのチーム10人。
撃ち漏らしの殲滅と小迷宮の発見が主な任務であり、前線と後続のバランスを取りつつ探索を重視するそれなりに練度が必要な役割だが、タクやアヤ達なら問題は無い。
更に続くのが、小島や小迷宮の攻略を行う後続組、セイトチーム、リンカチーム、リナチーム+アラン&メィミーの3チーム、合計13人。
若干練度で劣ると言わざるを得ない者達もいるが、小島や小迷宮に配置されている小ボスは所詮レベル60が良いところなので、サクサク倒して進んでいる。
これら主に3部隊が全力の攻略を行う事で、大雲海ともあろう迷宮は忽ちにその全貌を露わにされている。
では、それぞれの頑張りの様子をちょびっとだけ見に行ってみよう。
先ずはマシロ達。
相対する敵は、レベルにして30〜50程度のそれなりな雑魚達。
ウェザーマン LV32
ウェザージャイアント LV48
ライトスピリット LV41
ライトゴーレム LV23
ワイバーン LV44
ジャイアントイーグル LV45
デミレッサーリトルサンダーバード LV53
空間を広く取れるからか大型の雑魚も多く、戦場は中々に激しくド派手。
ドカンドカン激しく敵を撃墜しては、アイテムを回収してご満悦だ。
主にシロとナツナとシハルの3人がアイテムで喜び、キリカとクンとミカが戦いで喜んでいる。
まぁ、貴重な光系や竜素材が手に入るのは嬉しいよね。
戦いも大きいのを撃墜するのが楽しいのはそこはかとなく理解出来る。
そんな分家達が狩りを楽しんでいる一方、タクとアヤチームはと言うと、それもそれで楽しんでいた。
「残党狩りじゃー!」
「殲滅だー!」
「いたぞ! 追えー!」
誰とは言わないが妹と双子が暴れ回り、小型故に見落とされた鳥とかを駆逐していたり。
「……この穴って、小迷宮かな……?」
「流石に……小さ過ぎない?」
「覗いてみようか……うわ!?」
ちょっと大きめの穴に顔を突っ込んだケイが天翔けるモコモコ兎、シエロットに頭突きをかまされたり。
まぁ中々楽しそうである。
因みににケイが頭を突っ込んだ穴はシエロットの大きな巣と言う設置型のスポナーであり、この他にもシエロットの巣と言う小さめの穴があちこちに良く設置されている。
大きな巣はビッグシエロットの出現率が高めで、稀にヒュージシエロットが湧くポイントである。
それらがわちゃわちゃしている更に後方に視線を向けた。
アランを前衛にしたリナ、アマネ、メィミーのパーティーは小島を探索している。
そこはレッサーワイバーン等が主に出現するワイバーン島で、ボスは単体で出現したグレーターワイバーン。
中々の強敵だが、残念ながら単体ではお話しにならない。
メィミーの魔眼で動きを止められたワイバーンは、アランに叩き潰され、至近から頭を射抜かれて終了と相なった。
出現した宝箱に入っていたのは、ポーションと大した事の無い装飾品、そして唯一ちょっとレアな、竜骨槍。
見たところワイバーンの骨と牙を使った槍で、亜竜石を使って短時間竜属性を纏える槍だが……グレーターワイバーンを倒した割にしょっぱい武器である。
他方、雲の回廊を探索中のセイトチームは、順当に進み、ライトスピリットとウェザージャイアントのレベル50個体であるペア小ボスを撃破、宝箱を開封した。
中身は、ちょっと面白い、光の精石。ライトスピリットがゴーレムを生成するのと同じ事が出来る石だ。
生成出来るゴーレムはかなり弱いレベル10くらいで大きさも人くらいの物だが、魔力があれば幾らでも生成出来ると言うそこそこに高性能なアイテムである。
ライトスピリットの魔石を抽水錬磨して光系統の金属で指輪とかに加工、接続させて術式補完の範囲を広げれば、より強いゴーレムを生成出来る様になるだろう。
そんなこんなでおおよそ半刻。
大雲海のボスは易々と討伐され、間も無く夕食の時間。
タク達はおおよそ2時間程の休憩を経て攻略を再開する様だが、その前に次の迷宮の下見をするらしい。
そう、宮の迷宮の探索である。
【皆様に大切なお知らせ】
この度、第13回ネット小説大賞にて、小説部門に入賞いたしました。
ここに、ここまでとても長くお付き合いいただいた読者の皆様に感謝を。
本当にありがとうございました。
これからも永く続くユキの冒険を、よしなにお願いいたします。