掌話 燦然と戦果 十一
第四位階中位
雑魚を蹴散らしながら突き進み、スピリトーゾ達と合流をはかる。
程なくして見えて来たのは、全身金属のゴーレムが、鋼の大盾を持ったデカネズミを正面から捻じ伏せる姿だった。
「ひゅー、やるぅ」
必殺級アーツを使うでも無い、ただの拳の一撃だと言うのに、とんでもない威力。
これにはついつい軽口も溢れると言う物だ。
後方で蟻達と殿を務めていた姐さんが、此方に気付いた。
「あら、生きてたのね」
「そりゃねぇっすわ」
俺の顔をまじまじ見ての言葉に、よよよと涙を拭うフリをする。
そんな軽口にお互いニヤリと笑みを浮かべ、改めて今ある戦力を見回した。
前線は、スピリトーゾの主力、金属ゴーレム。
一撃必殺の拳を巨体の割に素早く振り回し、雑魚ネズミも上位雑魚ネズミも関係なく殴殺の限りを尽くし、その止まらぬ進行に合わせて洞窟へ直進している様だ。
そんな金属ゴーレムの隙を埋めるのが、これまたスピリトーゾの戦力、ドール2体。
片方は、以前の筋肉白羊のクエストのガントレットを主軸とした白系統の装備で纏められた、レベル30オーバー、ドール・ホワイトナイト。
金細工のガントレットに合わせた中々に豪華な白い金属鎧の騎士は、そんじゃそこらのカード使いの主力と比較して明らかに強く、今やスピリトーゾの2枚看板となっている。
槍の戦闘はキレがあり、大盾の取り回しは安定していて、並大抵のプレイヤーを凌ぐ。
一方もう一体は後続だが、そこそこに資金を割いているので、この戦場でも十分な働きを見せている。
また、スピリトーゾも投げ物系アイテムを投じて、細かい援護をしている。
そんなスピリトーゾの戦力を中心に、左右に並び立つのは、お嬢の召喚した青い大結晶2体、それが召喚した、水のゴーレム10体だ。
戦力としては、動きの遅さとキレの無さから劣っていると言わざるを得ないが、雑魚ネズミ程度に遅れをとる程では無い。
掛かってくるネズミには水の柔軟性で受け止め、窒息させたり殴打したり締め上げたりしている。
ただし、上位雑魚ネズミ相手だと互角で精一杯らしく、お嬢とスピリトーゾ、そしてお嬢のカエル君は主にその援護をしている。
後方で暴れているのは、姐さんの蟻達だ。
全部がレベル30を超えて進化しており、ジャイアントアント系なのは変わらずだが、上位職っぽい進化をしている。
ガードアントの進化、ガーディアンアントは、誘引系の能力が使えて、雑魚ネズミを上位下位問わず全部誘引して引き付ける。
ソルジャーアントの進化、ジェネラルアントは、後ろの2本足で体を支え、4本の鉤爪で雑魚を容易く切り裂く。
ワーカーアントの進化、チーフアントは、一見した戦力はジェネラルアントの下位と言った様子だが、立ち回りが上手い。
コンダクターアントの進化、ロードアントは、姐さんの召喚するビックアントの群れを統率し、上手く雑魚ネズミの群れを殲滅している。
アシッドアントの進化、ヴェノムアントは、毒液を放つ魔法が使える様で、何もない空中から毒の弾を次々と放って全体の援護をしている。
その要塞の様な堅牢さは、蟻の群れ、侮り難しと言った所。
そんな兵力に参入するのが、俺等。
一のレッサーウルフロード5体。
ぱんきちは流石の戦闘力で余力を残しつつ全体の援護を行い、他の4体はぱんきちの下雑魚ネズミ狩りを行う。
速度に物を言わせた遊撃部隊であり、それが通過した場所には申し訳程度の残敵が青息吐息で此方へ向かって来る。
サヨナキのメインアタッカー、クイックラディッシュから特殊進化したジャスティスラディッシュ。
それは白い大根のボディに青い紋様が刻まれた、ものすごくカッコいい大根。
俺達の希望たる大根は、誰よりも高速で戦場を駆け抜け、雑魚ネズミをボコボコ殲滅する。
これでまだ2段ギアを上げられると言うのだから凄い。
正直うちのモンスター達の中では、現状耐久力と攻撃力と言う面でスピリトーゾのゴーレムを越える戦力は無かったが、我等が大根の最大解放状態は下手をしたらそれに迫るか凌ぐ程だ。
その代わり召喚可能時間を大きく減らすので、連用や長時間発動は出来ない。
ソライロのメインアタッカー、ジャイアントスライムは、見上げる程の巨体のスライム。
基本的に雑魚ネズミ達ではサイズ差で核へ攻撃が届かないので、雑魚ネズミ達にジャイアントスライムを倒す手段は無い。
動きが鈍いのが欠点と言えば欠点だが、敵が積極的に襲い掛かって来る現状、まさしく入れ食い状態でネズミを殲滅している。
ソライロもサヨナキもメインアタッカー以外はあまり上げていないので、その他のドールやウルフはメインアタッカーの補助が精一杯と言った所。
お嬢と姐さん、スピリトーゾが魔力と物資を投入して維持されていた戦線は、俺達が加入した事で万全となった。
後はゆっくり侵攻しつつ、カイト達が来るのを待つだけだ。