第7話 禁断の果実
第八位階下位
楽園に顔を出した後は、元β島、生産拠点スノーにやって来た。
鎌首をもたげるマレは、随分と小さくなり、体高もとい頭の大きさはおおよそ2メートル。
その調子で頑張れと撫で回した。
マレと別れ、早速向かったのは島の西側。農業プラントである。
森を出て直ぐ。見渡す限りの畑に実るのは、ポメスの赤い実。
実はトマトで根はじゃがいもと言う不可思議植物だ。
『種芋と種での成長の差異ですが、種芋の方がより大きく育ちました。予想通りですね』
「そうだね」
そりゃあね。蓄えてる栄養の差だよ。
『これらを元ルベリオン王国で大規模に栽培し、元ルベリオン王国民の主食とするのが良いでしょう』
「それなら北部だね。人がいないから土地も空いてる」
『その方向で調整しましょう』
次に見えて来たのは、バナナ園。
『豊魔の実は種が取れなかった為、株分けにより増産しました。そのまま生命力及び魔力の回復に使えます』
「構造は?」
『種が無いのは品種改良による物でしょう。魔力回復量が通常の食物より多いのは、果肉に極小の魔力結晶体が含まれる為です。解析データからその他の植物類に同じ性質を与える事が可能になりました』
「一通り試しておいて。完成したら高級食材として管理しよう」
マレビトや一部住民向けだね。
続けてりんご園。
『幼魔の実は豊魔の実同様に極小魔力結晶体を含む果実です。属性配合が異なり、闇と生命に特化している為、悪魔の幼体を生み出す、又は召喚、育成する触媒として使えます』
「ペルセポネにあげるくらいかな」
闇魔法の補助にも使えるだろうが、それならちゃんとした結晶を使った方が良いし。
……人間でも使役可能なレベルの悪魔の幼体を召喚出来る道具と考えると、悪用方法は無限大だ。一般流通は無しとしておく。
更に次、楽園。
『幸魔の実、此方も極小魔力結晶体を含む果実です。純度の高い生命属性魔力に特化している為、強力な治癒効果を持ちます』
「山を整地しよう」
『しません』
……?
「……ポーションの材料に」
『使いません』
「……」
『あくまでも嗜好品の類いであり、ポーションの材料としては非効率です』
「そこはプレイヤーや一般薬師の育成用に」
『現在の生産量で十分賄えます』
……ふむ。足りなくなれば増産する訳だね?
『続きまして、仙桃。此方は果実自体の肉質が極めて強力であり、幸魔の実よりも純度、質の高い生命属性魔力を保有しています。単純な肉体の欠損や老化に効果がある為、研究及び大量生産を提案します』
「整地する?」
『魔力を生命力に変換する機能が極めて高い事を考慮すると、土地の回復等にも使える物と思われますので、至天霊郷での生産が良いでしょう』
「埋め尽くすか」
『そこまでは言ってません』
とは言え霊郷の開発はそのまま国力に繋がるから、直ぐにでも着手した方が良いだろう。
……魔滅環境下で仙桃を育てようとしても枯れるかもしれないからね。
そして最後、結晶樹の元にやって来た。
これが本日の本命だ。
農業区画の奥。敷地を他よりも大きく取られた小高い丘の上に、それはある。
元は拳大の種であった小結晶樹の木だ。
結晶樹の種は小結晶樹が成功したら育てる予定なので、此処には無い。
件の小結晶樹は、僅か数日で僕の身長程に大きくなり、黒っぽい幹からは幾らかのキラキラ光る枝が生え、青や赤色をした結晶質の葉を生い茂らせている。
そんな結晶樹の葉に紛れ、一つだけ“実”が出来ていた。
スキル結晶『槍術』 品質A レア度6 耐久力A
備考:槍術のスキルが刻まれる結晶。
「ふむふむ」
『私の主が調べますか?』
「…………いや、黒霧達に任せるよ」
調べる所だった。と言うか大体調べた。
小結晶樹は転移門の様に地脈へ接続されている。
最初の結晶体に封入されたエネルギーは成長の為と言うよりも地脈に対する呼び水として働き、引き寄せた地脈のエネルギーから本体を守る役割も担っていたと考えられる。
地脈に接続した小結晶樹は、それを通して世界知に接続、積み上げられた信仰、歴史と言った物からスキルの情報をダウンロードし、結晶化している様である。
槍術の実が真っ先に出来たのは、偶々最初に拾った因子が槍術だったからだろう。
小結晶樹の魂には槍術のスキルデータが圧縮保存されており、どれとは見なかったが他にも幾つかのスキルを構築している様だった。
また、副次効果として、地脈に接続されているが故に付近の大地が富み潤う様である。
それは然ながら、星に積み上げられた歴史とこれから積み上げられる未来の象徴。
夢の国の砂時計同様に、神造の生産施設の一つと言える。
成長に必要なエネルギーは、単純な生命力は勿論、樹木が故の森属性魔力。後は宝石だったり結晶だったりの高次概念属性があれば尚良いだろう。
即ち、宝石の大精霊ルェルァや、七色の結晶竜シャクナとかの協力があればより成長出来ると言う事だ。
更に付け足すなら、世界知に接続できる者ならば結晶樹の情報処理を手伝う事が出来る。
……とは言え黒霧は防衛の要だし、リブラリアは主に攻めの予定だが守りの援護も出来るから……もう1人くらい世界知に接続出来る者が欲しい。
そう言った関係の物に対する当てがあるとしたら……瞳神の試練くらい。
そこに至るのはまだ先の話だし、差し当たり今日の所は鍛錬島の方のクエストをクリアして戦力拡充を行うとしよう。
「それじゃあ諸々の生産は任せるよ」
それだけ言うと、生産活動に従事している樹精達を撫でて周り、スノーを後にした。





