第18話 英霊の死因
第八位階下位
続けて、セロ、ナーヤは予想通り。
セロはあの地で負の力に大きく汚染された元マレの体によって殺害され、ナーヤは邪竜との戦いで戦死した。
アルベルトとヴァーミュラーは、ユウイチの死後、帝国へ電撃的に進むティアーネの後に続き、アルベルトはゼナード率いる隷属させられた魔物と人、とりわけメナーニャの手によって死亡。
ゼナードはその時に戦死、ヴァーミュラーもといタダト氏は、格上たるビアジーヌ・アンビシオンと刺し違えて戦死した。
エミリーは他と毛色が異なり、ユウイチが竜に殺された事で憎しみの炎を燃やし、全ての竜を根絶する事を誓って激しい闘争に身を投じたらしい。
つまり、セロ、ナーヤ、アルベルト、タダトはそのまま魂を同調させる事が出来るが、エミリーだけは生きた歴史とその性質が全く違う物となっている為、少しの調節が必要になる。
エミリーは結局、ベルツ大陸のドラゴンの9割9分が神獣ベルツェリーアの配下で人類領域にいなかった為、殆ど竜では無く亜竜を殺し回った様だ。
そして、北にドラゴンの住処があるらしいと人跡未踏の北部へ単身乗り込んで……ニベルに完封された後、散々に喚き散らし暴れて遂に力尽きた。
その後は改心した振りをして復讐のチャンスを伺い、竜達の中で数日暮らし、ある日急に自殺未遂。
根っこが優しいから、竜達が人間となんら変わらないのを見て、そもそも竜を殺すと決めたのも自分達だった事を思い出し、ユウイチの後を追おうとした様である。
ところが気配りのニベルにそれを止められ、連日の自殺未遂も止められ、絶食しても神獣のお膝元故に放出される膨大なエネルギーのせいで死ねず。
おおよそ一年掛けてようやく立ち直り、人の領域に帰って来たその一月後に戦死。
時期的にはルベリオン帝国初期も初期、ティアーネとエリザベートを筆頭に人類救済に向けて色々な整備をしていた時代だ。
その時期、特に問題視されていたのが、蔓延る迷宮である。
その駆除の為にあちこちに戦力を派遣していた訳だが、そう言った中で特に恐れられていたのが、黒い魔物。
偶に迷宮に潜んでいた負の欠片達だ。
エミリーはそれを何度か撃破していたが、英雄級の死者も多く出て、十分な人員を用意出来ない状況があった。
その結果、ある意味順当に、エミリーは大迷宮の攻略中に戦死したと言う顛末だ。
……エミリーの人生は最悪と言って良いだろうね。
愛する人を亡くし、友人達は次々と死に、悲願を達成した後も、残った問題を片付ける為に友人達がバタバタと倒れていく。
それは然ながら生き地獄。
だからと言って僕が彼女を利用しない理由にはならないが、その上で彼女が何を選択するかは彼女の心持ち次第である。
さぁ、次からがメーンディッシュ。トップ3の確認だ。
先ずはアガーラ。
詳しく記憶を調べた結果、彼は本当の意味で激レアな個体だと分かった。
それと言うのも……無貌のアガーラ。こいつは何度も転生を繰り返し、複数の世界で暗殺を行なって来た……シャルロッテと似て独特な精神構造を持つ怪物だったのだ。
その行動基準は、一番最初の命令に準拠している。
最初の師に曰く——
——其は道具に非ず。
泰平は淀み也。普遍の正義は無く、悪徳もまた普遍に非ず。
真は水底に沈み、偽は露となって降り止まず。
正義になるなかれ。夢と現は星と海。
ただ潜り、淀みを解いて海へと注げ。
平和が為に鬼となれ。
アガーラはその信念を貫き、どの世界でも平和の為だけに戦い続けて来た。
それは然ながら機械の様に……または一意専心シャルロッテの様に。
彼には己が無い。だが同時にその心の有り様が己であるとも言える。
確固たる意思に余念は無く、その機械的とも言える覚悟は揺るぎ無い。
従えるのは困難かとも思えるが、無数の正義の平均値を優先して悪を成す彼は、言ってしまえば集合知の正しいと言う物に従うと言う事で、集合知が=僕である現状では従えるのは容易かったりする。
僕が墨は白いと言えば白くなる様になっている。よって僕が正しいと言えばそれは正しい。
正に職権濫用。世界はとても美しく、全ては僕の正義の礎であり、その礎さえも僕の正義であるからして、即ち僕は美しい。
まぁ少し脱線したが、要するに美しい僕にアガーラは従うと言う、ある意味いつも通りの事である。
次、リターニァ。
彼女は金の因子を持つが、その総量はティアに大きく劣る。
地が似た因子で構成されている為キンキラキンに輝いて見えるが、実際の金の神の因子は少なめだ。
そんなリターニァだが、実はルベリオン王家に連なる者だった。
具体的には、ティアーネがティアに転生するずっと前に、漏れ出ていた金の因子に霊合して王家に生まれて来た。
年代的には500年程度前で、多分ザイエやデュナークはその存在を知っていた筈だ。
ただし……死亡時の推定レベルは50に行かないくらい。その為、超強化が施されたレベル650リターニァを目視以外でリターニァと判別出来るかと言うと……僕なら可能だが、同格クラスの敵を前にした皆では難しかっただろう。
リターニァの死因は、ティア同様に英雄願望を拗らせたリターニァが自前の騎士団を率い、騎士団としては十分な功績を残した末に、ただ長い時を生きて強くなっただけのつまらぬ大熊の魔物と相討った。
同じだけの時間があれば、リターニァはその熊を一蹴りで倒せる様になっただろうに、運命は時に残酷である。
最後のナハトロンは、例によってグラシア家の者。
各員の処理を手早く進めよう。





