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東方咀毒異変  作者: 彩丸
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再会合

「招かれざる客が居るようだけれど、ちゃんちゃら無視して始めましょうか。本日二度目の議会を」

 異変が起きてから実に数分足らず。八雲邸には本来居る筈の六人に加えて、射命丸文と四季映姫・ヤマザナドゥが居た。

「あれだけの伝言で伝わると思っているのですか? 状況とあの結論に至った経緯の説明を要求します!」

「古明地こいしに摂り憑いた何者かと博麗霊夢の容をした何者かが人里に居たモノどもの命を奪った。幻想郷の摂理を壊そうとする二人の前に龍神様が現れ、そして博麗霊夢の容をした何者かに喰われて絶命した。古明地こいしに取り憑いた何者かが、幻想郷の崩壊を示唆する様な言葉を残して姿を暗ました。以上の事実から、彼女らが次に狙うのは幻想郷を模る二つの結界だと考えた。しかし現職の博麗の巫女、博麗榊だけではいざという時に対処不可能。故に、先に閻魔様に博麗大結界の安定化を図って頂き、然る後に我が式、八雲藍を合流させて事態に備える算段でした。不測かつ緊急な事態であったとは言え、平素の様な横暴を働いた事については申し訳ありませんわ」

 咆えようとしていた四季映姫・ヤマザナドゥに対し、八雲紫は真摯に応えた。静かな騒乱がしんと収まり、その場に居た全員が一瞬目を閉じて深く息を吐いた。

「その二人はそれ程までに危険な人物なのですか?」

「古明地こいしに関しては、あの体に二人の覚妖怪が憑いたものと見ていいでしょう。その目に掛かれば意識も無意識も操られる、正真正銘の妖怪ですわ。そして霊夢、彼女に関しては全くの未知数と言っていいわね。生前のあの子からは大凡想像出来ない程幼く純粋。それでも能力はそのままだから、何をしでかすか分からないわ。古明地こいしが唆せば、二つの結界も一日と掛からずに解けるでしょうね」

「防戦に興ずるのですか? 今までの話から察するに、貴女はもう一つの方の結界の解呪に備えるのでしょう?」

「後半はイエス。でも、異変を野放しにはしないわ。妖夢と橙にあの二人を排して貰う予定よ」

「その場で貴女が処理し切れない程の相手を?」

「ええ。私では霊夢を前にして心が揺らぐから。それよりも躊躇わず動ける妖夢に期待しているのよ」

「橙は連絡役ですか?」

「それ以上に機能するわ。この子をあまり低く見ないで下さるかしら?」

 枳棘。西行寺幽々子が羊羹を口に運ぶのを止める程の。円卓を挟んで交わされる視線上の相克。八雲藍までもが気を張り詰める程の。

「分かりました。では今から私は博麗神社に向かいます。……もし、もし幻想郷が無くなるようなことが有れば、真っ先に貴女を無間送りにします」

「お気の済むままに」

 四季映姫・ヤマザナドゥは立ち上がり踵を返すと、静かに襖を開けて退室した。その後ろ姿を見送って、西行寺幽々子はお茶を啜った。

「羊羹はさっきの分。今から妖夢の指揮権を貸す分は異変が終わった頃に頂戴ね?」

「その器量に甘えっ放しね、私も」

 八雲紫と西行寺幽々子は互いに顔を見合わせて、ふふっと笑った。

「それじゃあ私が此処で待って居て上げるから、みんな頑張ってね」

「それじゃあ各自持ち場へ。妖夢と橙は地霊殿へと向かって頂戴。道中で何か異変が有れば、逐一私に報告する事。それでは」

 八雲紫は足元にスキマを開き、ストンと落ちて行った。その行く先を知る者は居なかった。

 重責。

橙は四本の尻尾をそわそわと動かしながら八雲藍を上目がちに覗き込んだ。

「大丈夫。妖術だって前よりも遣えるようになったんだし、いざとなれば紫様も見ている。日が暮れる前には終わらせて、今夜は祝宴だ。な?」

 八雲藍は橙の頭の上にぽんと手を置いて笑って見せた。それで自信が付いた訳でも不安が取り除かれた訳でも無かった。が、橙は覚悟を決めた。自分の居場所を守る為に。立ち上がった。

「妖夢さん、宜しくお願いします」

「こちらこそ」

 魂魄妖夢も立ち上がり、へらっと笑って見せた。

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