御影雪人と佐武秋の食料事情。
今日は、やたらと運が良かった。学校を出た後、ゾンビとは一度も遭遇せずに、家についたのだから。
現在、俺の目の前にはポテチ食いながら、寝転がってテレビを見ているチビが一人いる。
「おかえり、雪人。」
「お前ん家じゃねーよ」
人の家に上り込んでその上わが物顔のチビに、蹴りを入れてみよう。
「痛い、いたいよ雪人! あーあ、そうだ。何買ってきたの雪人? 」
「あ、そうだな。タイマー四つに、マルチツール3個。ナイフを三本買ってきた。
あと、火薬制作用の、硫黄・硝酸カリウム、あと塩酸と硝酸を盗んで来た。」
「あはは、そっかぁ。買ってきたのはともかく、この状況じゃなかったら、盗んで来て怒られるじゃすまないね。」
秋に戦利品について聞かれたので答えると、そんな感想が返ってきた。この状況……うん?
「とにかく中を見せてよ。」
「ああ。」
中を見せろと言う秋に短く返答すると、ごそごそとあさり始める。すると物凄い嫌な顔をして、
「うわ。雪人バカ、塩酸の蓋がちゃんと閉まってないんだけど。手洗ってくる。」
秋がなんか怒って、台所で手を洗っている。
こういうところ間抜けなんだからー。とかなんとか。
蛇口をひねれば水は出るみたいだ。ライフラインは止まっていないみたい。
うん? 待てよ。
「秋、お前はいつからゾンビの事を信じていたんだ? 」
「なにこれ雪人、中々これ濃度高いやつでしょ。で何? ゾンビの事だっけ。それはみーちゃんに色々教えてもらってからだけど? 」
「そこなんだよ。何で俺たちはこんな簡単にみーちゃんの言っていた事を信じているんだ?]
初対面の人(?)の、こんなしかも、ここまでファンタジーな内容を信じるなんて、ありえない。
仮に信じても、切羽詰まらない限り、盗みなんて普通しないはずだ。
考えて見れば疑問が多すぎる。集団ドッキリだと言った方がよほど信じられる。
お、秋の顔つきが変わった。
「僕それを聞いても何故か確信してる。これがドッキリでも何でもないって。ううん。違う。多分知っていたんだ。こうなるって。」
秋が自分に言い聞かせるように、ゆっくり言葉を紡ぐ。『知っていたんだ』この言葉が一番しっくりくる。
「まあ、考えても仕方ないけどね。」
秋が締めくくった。
「雪人、おなか減ったよ。」
「さっき食ってただろうが、動き回ってた俺の方が腹減ってるよ。」
秋が腹減ったと言い出してびっくりした。食いすぎるだろ。
「まあ今のは誤差だよ。誤差誤差。20日分もあるし。サプリメントもいっぱい買ったよ。ほら」
「ほらって多すぎだろ……」
秋がほらって言いながら見せてきたのは、人一人入れそうなくらいの大きさの段ボールに入った食料だった。
「多すぎって、雪人も要らないものをいっぱい盗んで来たじゃん。
それに食料は生命線だよ。」
「頂いたと言ってくれ。ん? そう言えばこんな大量に誰の金で買ってきたんだ? 」
「あ、え、えーとホラ雪人のへそくりがあって……どうせ価値も……」
「ふうん……おいチビどうしてくれるんだ!! 俺がバイトして欲しいものも我慢して貯めた金だぞ‼ 全部返せ、おい‼」
金の出所を探ったら、俺の金だと判明。ガクガクと揺さぶったら首が、
がくんがくんと揺れる。ちょっとシュール。
「ひどいよ雪人……」
「ひどいのはてめぇだ秋……とにかくお前の家に行くぞ。」
「?」
「俺のへそくり取り返すのと、なんか有るかなーって。」
「なんかって……」
秋がなんで? て顔をしていたので説明してやる。
「えー分かった。行っといでよ。」
「お前も行くんだよ。へそくり取り返さないといけないんだから。場所分かんねーんだよ。」
「雪人って方向音痴だもんね。いいよ。でも帰ったら寝るよ。」
よって俺たちの食料は五割ほど増え、俺のへそくりが半分ほど帰ってきた。




