プロローグ
少しエグイので、苦手な方は見ないでください。
戦争の後だろうか。よほど大きかったのだろう。
神殿であっただろう神場所には首と胴が離れた状態で兵士であったであろう者たちの亡骸が転がっていた。
そこにくるくると踊る少女がいた。楽しそうにくるくると。
中世ヨーロッパの村娘のような服を、真っ赤に染め上げたその少女。
十三歳くらいだろうか。
「ああ、人は何でこんなにも脆いのかしら。もう少し遊んでくれても良かったのに。」
血の池の上でピチャピチャと鳴らしながら、踊っている。
血の池からすうっと、鉄の剣を取り出す少女。
血濡れた剣で、剣舞を舞う。
それは神に捧げる踊りのような、悪魔に祈る、踊りのような、そんな独特な雰囲気を持っていた。
あまりにそれは美しく、あまりにそれは残酷に見えた。
一通り踊り終えると後ろを向く。
そこには十四、五才だろうか。一人の少女がたっていた。
青い瞳をした少女。
小さな赤ん坊を抱えながら、震えて動けずに立っていた。赤い少女が近寄ろうとすると、
ひっ、と声をあげて後ずさる。
けれども誰かの亡骸につまずいて、尻餅をつく。
血でびっしょりと、尻が濡れた。少女の手も赤く染まる。
いや、と小さく声を上げる少女。
「ずいぶん怖がらせてしまったわね。」
赤い少女はつまらなそうに、つぶやく。
「では私から祝福を」
そう言いながら少女に近付こうとする赤い少女に対し、
「いやああああぁ!! 近付かないで、私たちに近付かないで! 」
少女は叫びながら、血の池の血を、赤い少女にばしゃりと浴びせる。
赤い少女の髪と顔に、血が掛かる。
今度目を見開いたのは、赤い少女だった。
彼女は口の端を、つり上げ、
「あはは、なんて、なんて可愛らしいの?そんなに弱いのに、なんて滑稽の? 」
良いわ。あなたに最高の祝福を。そう言って、ひゅっと指を下げると、
少女と赤ん坊の目は、赤く染まった。
さようなら。また会うときが来たら。言い終えた赤い少女は、
剣舞に使っていたその剣で、
その喉を、
掻き切った。
読んで下さりありがとうございます。