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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
恋人と友だちと知り合いと、初めましての微笑みを。
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 我ながら適当で、オリジナリティの少しものない言葉だと思った。

 返答に困ったけれど、何も言わないわけにもいかなくて、そんな俺の心理が簡単に悟られてしまうことだろう。

 しかし彼女は、俺が思っている以上に、ピュアなようである。

「僕には僕の魅力、ですか。サラッとそういうことを言えるとこも、なんかすごいです」

 瞳を輝かせて、本気でそのようなことを言っているようなのだ。

「あれ、桜、彼氏と帰るんだったんか。桜が一人で泣いてるかもと思って、せっかく走ってきたのに、俺はお邪魔だったかな?」

「あっ、ううん、彼氏じゃないよ。てか恋、一緒に帰れるんだったら、寂しいこと言わなくたって良かったじゃん」

 彼女の素直さに戸惑いを感じていると、後ろから女子生徒が走ってきて、新木さんに飛び付いた。

 彼女こそが、一緒に帰る予定だった子、なのだろう。どうしよう。


 ①去る ②いる ③迷う


 ーここは①を選びますー


 代わりに俺と一緒に帰る、とのことだったのなら、もう俺は必要なくなったことだろう。

 新木さんと帰ることが嫌なわけじゃないけれど、やっぱり大丈夫です、なんて断りづらいことだろうから、ここは俺から去った方が良いに決まっている。

 それにしても、新木さんの友だちの彼女、制服を着ていなかったら女子だとはわからなかった。

 こんな言い方は、女の子に対して失礼なのかもしれないけれど、そういうことではないのだ。

 可愛らしい顔をしているとは思うのだ。

 なのに、なぜだか男子に思えてならない。

 短髪ではあるけれど、女子でも別に普通な程度。よく鍛えたものだと感心するレベルに、筋肉質ではあるけれど、ムキムキのマッチョというわけではない。所謂、細マッチョという奴だ。

 胸の膨らみは全く感じないけれど、貧乳だって女子は女子であって、男子に見えるようなことはないと思うんだけど。どうしよう。


 ①よく見る ②会話をする ③気にしない


 ーここは③を選びますー


 きっと、口調のせいだろう。

 新木さんだって一人称が僕だけれど、彼女に至っては、俺と言っていたような気がする。

 だからそのせいで、ボーイッシュさもあって、男子のように思えているのだろう。

 自分でそう納得して、気にしないことにする。

 あまり考えても仕方のないことだし、あまりジロジロ見ても悪いだろうし、どれを取ってしても彼女に失礼に当たるように思えてならない。

「ちょっ、なんで行っちゃうんですか。桜と一緒に帰ろうとしてたんでしょ、俺も桜と一緒に帰ろうとしてた、なら三人で帰れば良いじゃないですか」

 静かに立ち去ろうとしていたところ、気付かれてしまったらしく、それを止められた。

 気付いても気付かないふりをすれば良いのに、そうしなかったということは、少なくとも悪意は抱かれていないということだろう。

 まあ、何もしていないのに、現時点で嫌われているのだとしたら、相当にショックだからね。

 これも何かの縁だと思って、というような感じの認識で大丈夫なのかな。どうしよう。


 ①三人で ②二人で ③一人で


 ーここは①を選びましょうー


 別に相手側が嫌でないならば、俺としては喜んで、だ。

 不思議なことに、これは下心というものが本当になく、彼女たちの素直さが単純に魅力的に思えたからなのだろう。

 恋人だとか、そういったことではなくて、友だちには違いないのだけれど、雪乃さんではなくて春香ちゃんと同じになるような、愛らしさを思う感情である。

 年齢の差とはいっても、たった一歳なのだから、感覚としてはそんなに変わらないと思うのに、俺の持つ後輩への憧れというものがそうしているのだろうか?

 もちろん、中学校だって後輩くらいはいた。

 いたけれど、だれとも少しの接点を持つことも出来なかったから、そんなのは二次元みたいなものだろ?

「そうですよ先輩、迷惑じゃなかったら、僕も先輩と帰りたいです」

「俺の名前は金子恋です。あっ先輩のことは、桜から今、聞いたので大丈夫です。よろしくっ」

 初対面だとは思えないほど、自分の人見知りが治ったのではないかと思ってしまうほど、二人との会話を楽しみながら帰宅することが出来た。

 俺が一番近かったようで、最初に別れることになる。

 新木さんが最初にいなくなるようなことがなくて、安心するべきだったろう。

 いくら楽しく話を出来ていたとはいえ、初対面二人きりはさすがに辛いからね。

「先輩、今日はありがとうございました。良かったら、また一緒に帰りましょう!」

 部屋の鍵を開けようとしていたところ、新木さんの叫び声が聞こえ、そちらを見てみれば、二人が大きく手を振ってくれていた。どうしよう。


 ①手を振り返す ②笑顔を返す ③答えを返す


 ーここではなんと全てを選びますー


 嬉しさが胸に込み上げてくる。

「こちらこそ、ありがとうございました! 是非、また誘って下さいね!」

 普段は出さない大声で返事をして、笑顔で手を振り返す。

 だけど部屋に入って、一人になってふと思う。

 恋人だというのに、俺とコノちゃんは、一緒に帰るくらいのこともしたことがない。家の方向が違っているのだろうか。

 天沢さんや雪乃さんの家へは行ったことがあるのに、コノちゃんの家は、話さえも聞いたことがない。

 そもそも、あのまま新木さんと二人きりで帰っていたら、それは恋人なのではないか。

 最初に金子さんだって、彼氏だと勘違いしてしまっていたようだし、そう見えるよね。

 三人だったから、二人よりは友だちらしく見えたかもしれないけれど、コノちゃんはこれをどう思うだろうか。

 雪乃さんのときの彼女を思うと、不安になるのであった。

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