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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
恋人と友だちと知り合いと、初めましての微笑みを。
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 今年に入ってから、驚くほどにいろいろなことがあった。

 どういう過程で天沢さんと出会っただとか、もはや覚えていないレベルだもんね。

「久しぶり。僕のこと覚えてる?」

 そんなわけで、俺は今、かなり困ったことに直面しているのだ。

 下校しようとしてのこと、突然、女子生徒に話し掛けられたのである。少し子どもっぽい、ツインテールの可愛い子だった。

 覚えているというからには、どこかで会ったことがあるのだろう。

 しかし、覚えているような覚えていないような、覚えていないような……。どうしよう。


 ①覚えていません ②覚えています


 ーここでなんとか②を選びますー


 はっきりと覚えていないと言うのは、失礼に当たることだろう。

 全くもって少しも覚えていないわけではないのだから、覚えている、ということにしておいても問題ないのではないだろうか。

 たぶん、それが正しいと俺は思う。

「覚えています」

 信じてくれたようには見えないが、俺の言葉に、彼女は笑顔を浮かべてくれる。

「あっごめんなさい。前に話したときも、タメ口になっちゃってましたよね。先輩。それで、良かったらなんですけど、一緒に帰りませんか?」

 彼女の浮かべた、元気いっぱいな笑顔で、思い出した。

 そういえば、前に一度だけ話をしたことがある。名前は、新木桜とかいっただろうか?

 これで覚えていますという言葉が、嘘ではなくなったというわけだ。

 しかし今更になってどうして、なぜ俺と一緒に帰ろうなどと考えたのかが不思議だ。どうしよう。


 ①歓喜 ②却下 ③理由 ④許可


 ーこの選択肢の中から、ここは③を選ぶのですよー


 社交的なように見えるから、クラスに友だちだって出来ていることだろう。

 俺が同学年でないこともわかっているのだし、部活だって違うのだから、これから接点を持つ可能性だって低いだろうと考えられる。

 ネガティブ発言はいけないと思うのに、理由を訊ねずにいられなかった。

「本当は一緒に帰ろうとしていた子がいたんですよ。だけど、部活の先輩に誘われたとかで、断れなかったみたいなんです。したら僕は一人、と思ったら、先輩を見掛けたので、声を掛けちゃいました。いけませんでしたか?」

 代わりを探していたところに、俺が通り掛かったからというわけか。どうしよう。


 ①歓喜 ②却下 ③許可


 ーここで③と致しますー


 好きだから、とかふざけたことを言われたなら、断っていたことだろう。

 しかし理由が普通に考えられる理由だったので、それなら断る理由などない。

「わかりました。話でもしながら、一緒に帰るとしましょうか」

「はいっ、ありがとうございますっ」

 彼女自身が実際に飛び跳ねたわけではないけれど、なんだか彼女の発する言葉は、一つ一つが飛び跳ねているようであった。

 微笑むばかりでなくて、俺もそういった笑顔が浮かべられたら良いと思うのだけれど。

 なんて、そんなことばかり考えていたら、隣にいる人に悪いかな?

 羨んだり考えたりは、一人のときに纏めてしておいて、だれかといるときはせめて微笑んでいよう。

 それがリア充への道だと信じているから。

「ところでなんですけど、先輩は何部に入ったんですか? 練習場でもグラウンドでも会ったことないから、少なくとも外の部活ではないですよね?」

 最初の時点で、彼女が部活が楽しみだという話をしていたことを思い出す。

 なのだから、部活の話に流れるのは、極めて自然なことであっただろう。

 この場合、それに対して、返事を用意しておかなかった俺が悪いと言える。どうしよう。


 ①正直に ②動揺を ③嘘を


 ー嘘は吐かずに①を選べば良いと思いますよー


 返事を用意しようもない気もするけれどね。

 同じ学校に通っているのだから、嘘を吐いたところで、簡単にバレてしまうことだろう。

 それに、帰宅部のどこが悪いってんだ!

「部活には入っていないんです」

 彼女にとっては、かなり意外な答えだったらしく、驚いたような顔はしているがそれだけである。

 驚いているという様子で、それ以外に何もない。

 運動部、文化部、帰宅部などという階級を、だれもが持っているわけではないものね。

 彼女は見るからに運動部だけれど、帰宅部というものを、憐れむような子ではなかったのだ。

「先輩は先輩なのに、後輩の僕にも敬語を使ってくれますし、決まりが厳しくて上品な部活かと思いました。イメージですけど、えっと、茶道部とか?」

 敬語を使うということが、厳しい決まりに縛られてのことだったら、そうなるだろうね。

 しかしどちらかといえば、反対に俺は敬語で話してしまう癖をなくし、フレンドリーになりたいと思っているくらいである。

 ただ、茶道部というのは、コノちゃんの部活でもあるから、俺の中では一番、入部に近い部活といえるかな。どうしよう。

「その丁寧で落ち着いた、大人って感じ、すっごい憧れるんです。だって来年になったって、僕は絶対に先輩みたくはなれませんもん」

 内容としては、自分で望んでいないことだけれど、褒められて悪い気はしない。どうしよう。


 ①なれる ②なれない ③ならなくて良い


 ーここでは③を選んでしまうのですねー


 憧れだと思ってもらえるのは、とても嬉しいことだと思う。

 でもだからこそ、何もしていないくせして、良い気になってはいけないとも思うんだ。

「ならなくて良いんですよ、俺みたいになんて。だって新木さんには、新木さんの魅力があるのですから。ね」

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