ツ
遂に迎えてしまう、修学旅行の最終日。
こんなにも終えたくないと思う学校行事は、初めての経験かもしれない。
修学旅行が良いのではなくて、コノちゃんと過ごす時間が良いだけ、なのだけれどね。
だって普通にしていたら、家に泊まろうと誘う難易度なわけよ。それを学校行事だからという理由で、一緒にお泊りが出来てしまうという、もう恐怖にも近いわ。
結局、何もなかったは何もなかったけどね。どうしよう。
①当たり前 ②これから起こす ③一安心
ーここでは①を選ばないとですよー
あくまでも健全に行われるべき修学旅行なのだから、それが当たり前か。
そういったことが過去にもなかったからこそ、男女が同じ部屋で眠るだなんて、信じられないことが実現してしまっているのだろうからね。
夢のようなことが実現しているのだね。
その夢を壊してしまわないためにも、だれも間違いを起こしはしないのだろう。
本人たちが望まない限り、男女は同じ班にならないだろうし。
信頼のある男子じゃないと、女子には選ばれないよね。
ということはコノちゃん、俺を信頼してくれていたんだ。俺ならヘタレだから何もしないだろう、ってね。
それに班員だって他にいるのに、そうだよね、何も起こらなかったのは当たり前。
俺は何も期待なんてしていなーい。
しかし今度、俺の家に泊まるよう誘えたなら。それくらいの勇気が持てたなら、俺も卒業する日がくるのだろうか……。
はぁ、俺、何考えてんだか。どうしよう。
①楽しむ ②悲しい ③幸せ
ーここも①を選びますよー
まだ終わっていないのに、終わってしまうと嘆くには、少し早いよね。
終わりたくないと思うくらいなら、家に帰るその瞬間までを、思い切り楽しむのが正解だ。
今だって、隣にコノちゃんはいてくれるのだから、悲しいことなんて少しもない。
「それじゃあコノちゃん、修学旅行、楽しむよっ」
「ええ、そうしよっか。周りは全員とも味方だって、そう思えるくらいのポジティブで、最後の一日を楽しもうじゃないの」
自由な時間は少なく、クラスでの移動がほとんどとなった修学旅行三日目。
であるが、コノちゃんと一緒ならば、それだけで俺は楽しいのであった。
そうして俺だけでなくて、コノちゃんもそう思ってくれていることを、俺は願うのであった。
両想いを確認してもなお、不安なものは不安だからね。どうしよう。
①確かめる ②楽しむ ③不安になる
ーここは②を選びましょうー
しかしコノちゃんを信じたなら、素直に楽しむのが一番に決まっている。
不安になることが多いのはお互い様。それは俺もコノちゃんも、リア充とは違う場所で生きてきたから。
でもそれって、信頼の証にもなるものだと思うんだよね。
簡単な思いで近付き遠ざかるような人じゃないって、わからせてくれるようだ。
だから不安になんてならなくて、不安になんてならないようにって、自分を封じ込めようとする。
コノちゃんは、俺のことを好きでいてくれているって。言い聞かせるんだ。
「もう終わりだね。ふふっ、楽しかったなぁ。今度は、二人きりでお泊りしたいかも?」
好きじゃなかったら、こんなことを言うわけがないもんね。
妖艶かつ可愛らしい、花のような笑顔を浮かべるコノちゃんに、俺はそう思う。
帰りの飛行機の中、コノちゃんの言葉の真意を考え直す。
何度なんと考えようとも、やはりコノちゃんも俺と同じ気持ちでいてくれているって、導き出されるのはそう言った答え。
二人きりでお泊りか。どうしよう。
①誘う ②流す ③乗る
ーここは①を選択致しますー
今回はなんとか、無事に乗り越えることが出来たけれど、二人きりともなればそうもいきまい。
「俺の部屋、泊まりに来る? 何もないし狭い部屋なんだけどさ、一人暮らしだから、いつ来たって大丈夫だし、絶対に二人きりになれるよ」
半分は本気だったが、半分は冗談だった。
悪戯っぽく笑うコノちゃんが、本心から二人きりでの泊りを望んでいることは、大体読み取ることが出来ていた。
だからこそ、本気では返しきれないんだろう。
それほどまでの覚悟を持てなかった、とでも言うのだろうか。
だからこそ、冗談を言いきれなかったというのもあろう。
はぐらかしているようで、コノちゃんをやんわりと、拒絶しているようになってしまうから。
繊細な彼女のことを、傷付けてしまうかもしれないから。
「へ、部屋って、生活している部屋? それはもしかしてもしかしてなんだけど、ゲームとかグッズとかも、貯蔵されてたりする感じ? 入手出来なかったアイテムを、眺めることが出来ちゃったりなんてしちゃったりっ?」
……繊細な彼女、だよね?
思っていたところとは、全く別なところに食い付かれてしまったけれど、大好きなゲームに興味を示してくれるのは嬉しい。
恋人としては、少し悲しいところももちろんあるけどさ。どうしよう。
①拗ねる ②嫉妬 ③微笑ましい
ーなんともここは②なんだそうですー
自分だって、恋人が出来たからといって、ゲームをやめたわけではない。
二次元へと向けられる愛情は、以前と変わらないままである。
しかしこうした態度を取られてしまうと、どうしても悲しくなるし、嫉妬だってしてしまうよ。
現実で捧げられる愛と、幻想に捧げられる愛とは、完全に違うものである。
そのことは俺も理解しているけれど、だって嫉妬しちゃうものは仕方がない。
コノちゃんが好きなんだから、仕方がないだろ。
「アナタの匂いとかも、残っているのかな。あはっ、コノ、これだとなんだか変態みたいだね」
ゲームへ注がれる愛はお互いに同じで、それが仲良くなるきっかけでもあったくせして、ゲームを相手に嫉妬してしまっていた。
そんな中で、これほどまでに可愛らしく笑われたら、恋が止まらないよ。
大好きが止まらないって、こういうことを言うんだろうな。
一大イベントである修学旅行が、こうして幕を閉じることとなります。
鬼山雪乃となんだかんだもありましたけれど、結局、主人公と堂本木葉の絆を深めるという結果で終わりましたね。
ハーレムへと踏み出すまでの道は、随分と長いものでして、これでは個人ルート状態です。二人目へと踏み出してしまったなら、三人目、四人目と続くのは、そう難しいことでもないのでしょうが。
一体、次にはどういったイベントが主人公の攻略を、助け苦しめていくのですかね。くっくっくっく。




