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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
一日目
9/223

 天沢さんとの運命を信じ、家に帰るともう夕方。時間はぴったり六時だった。どうしよう。


 ①勉強 ②運動 ③読書 ④ゲーム ⑤寝る ⑥風呂


 ーここは①にしておきましょうかー


 二年生になったんだから、勉強もしないといけないよね。どうしよう。


 ①宿題 ②提出物 ③予習復習


 ーここも①なんですー


 そういえば、宿題が出ていたんだった。

 期限に猶予がある提出物や、真面目に予習復習なんてことはヤル気になれない。

 親に送られた問題集もあるが、やはり面倒になってしまう。

 それでもさ、明日提出するべき宿題くらいは、ちゃんとやらないとだよね。

 まあ、それも先延ばしにしてきて、遂に提出前日までやってきてしまった宿題なんだけどね。

 だって面倒なんだもん、しょうがないじゃん。

 教科書を見ながら、頭を抱えてなんとか宿題を終えると、既に七時を回っていた。

 一時間以上集中力が続いていたことを考えると、俺にしては上出来だっただろう。

 疲れた。勉強って、新しい運動だよね。どうしよう。


 ①運動 ②読書 ③ゲーム ④寝る ⑤風呂


 ーここは⑤にしますー


 時間を考えたら、お風呂に入っておこう。

 買っても読めていない本。買ってもプレイ出来ていないゲーム。

 手を付けたら、きっともう翌日まで止まらないだろう。

 それを考えたら、やることを先に済ませておいた方がいい。

 だから俺は、ちょっと早めにお風呂に入るのです。どうしよう。


 ①部屋の風呂 ②銭湯 ③温泉


 ーここでは②を選ぶんだそうですー


 一応、部屋にも小さな風呂が付いてはいる。

 それでも、風呂掃除をするのが面倒で、ほとんど使ったことがない。近くの銭湯へ行ってしまうのだ。

 わざわざ外出して、そこまで行く方が面倒かとも思う。

 家で入れば節約にもなると思う。

 それはわかっているんだけど、やめられないのよ。

 寂しさも紛れるし……。

 これ以上考えていると、自分が可哀想になってくるから、そのことについてはもう考えないようにと封印しておく。

 宿題を片付けると、いつもの用意を手に取り、銭湯へと出発した。

 春の風が妙に冷たくて、その寒さがちょっと寂しく感じられる。どうしよう。


 ①温もりを ②温かい女の子を ③早く行こう


 ー飢えているのですね では③にしましょうー


 女の子と腕を組んでいれば、体が暖かかったんだろう。手を繋いでいれば、それだけでも暖かくなったんだろう。

 体が、そして心が暖かくなったんだろう。

 妄想を繰り広げていると、一時的な暖かさを味わえる。

 それでもその後が物凄く寒くなってしまうので、早く温まりたいと走っているくらいの早歩きで行った。

「はぁ」

 着いてからも早送りなくらいの速さで、温かい湯船を求めた。

 男だらけの空間でも、その暖かさには幸せの吐息が漏れる。

 周りが女の子だったらいいのに。そんな痛々しい妄想を繰り広げていると、幸せになれてしまうのだから、人間の想像力は怖いと思う。

 想像力? 妄想力? それとも、現実逃避なのかな。

 また自分が哀れに思えてきてしまう。

 だからゆっくりと立ち上がり、着替えを済ませる。

 そういえば、ずっと制服で過ごしていたんだな。早帰りなんだから、着替えてから行けば良かった。

 でも制服じゃなかったら、同じ学校だと天沢さんに気付いてもらえなかったのかな。そうしたら、話し掛けてもらえなかったのかな。

 そんなことを考えながら、制服を畳んで持ってきた部屋着に着替える。

 どうせこんなところだし、帰宅までの間くらい、部屋着でもだれにも会わないさ。

 だれに会ったところで、だれも俺のことなんて見ていないだろうし。どうしよう。


 ①溜め息 ②ポジティブ ③帰ろう


 ーここも③ですねー


 大人しく帰ろうか。

 考えれば考えるほど自分が可哀想だし、そう思えば思うほど現実逃避をしたくなる。

 駄目だ! 今年の俺はリア充になるんだって、そう、決めたじゃないか。

「きゃははっ、うわっ!」

 トボトボと男湯を出たところで、何か足に当たる感覚があった。

 幼稚園生くらいの女の子である。

 いやいや、さすがの俺だって、ここまで小さな女の子にはなんとも思わないよ?

 俺の妄想だってそんなに酷くない、はず。どうしよう。


 ①抱き締める ②話し掛ける ③目を擦る


 ーここは普通に②でいいでしょうー


 きっとこの女の子は、俺の妄想なんかじゃない。妄想ならば、もっと同世代くらいの女の子が出てくるに決まっている。

 たしかにこの女の子は、物凄く可愛らしい。

 このくらい年齢の子はだれだって可愛らしいものだろうが、そうじゃなくて、純粋に可愛い女の子だと思うんだ。

 大きくなったら絶世の美女が生まれる。推測ではなく、はっきりとそう言い切れるほどに可愛い。

 でもだからといって、妄想ではないと信じよう。

「どうしたんですか?」

 なぜ幼女相手に敬語を使ってしまったのか。

 自分の癖を呪いながらも、目線を合わせて彼女に問い掛ける。

「おじさん、一緒に遊ぶ? 今ね、お姉ちゃんとおにごっこしてるんだ」

 泣かれたりしたらどうしようとも思ったが、幸いそんなことはなかったらしい。

 しかし高校生でおじさんと呼ばれることになろうとは。この無邪気な少女の言葉に若干傷付きながら、保護者を探すのが得策と知る。

 そのお姉ちゃん、と呼ばれている人と来ているのかな。

 怪しまれる前にこの子を預けてこよう。

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