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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
修学旅行 二、三日目
89/223

 何をどう頑張っても、たった数分での状況の改善は見込めないな。どうしよう。


 ①諦めない ②部屋に戻る ③諦める


 ーここは②を選びましょうー


 だとしたら、時間に遅れてしまわないためにも、今は部屋に戻るべきなのではないだろうか。

 この時間が続くのも辛いし、三人で仲良く先生に叱られるなんて、間違えなくコノちゃんの機嫌が悪化する。

 せめてそれだけは避けるために、今この場では諦めようじゃないか。

 しかし誤解は解かなければならない。それにおいては、諦めるつもりもない。

「雪乃さん、もう時間ですから、部屋に戻りますよ。コノちゃんも、部屋に戻ってから、ゆっくり説明をすると致しましょう」

 時計を見せれば、二人とも仕方がないと立ち上がる。

 移動中も睨み合ったままだったのだから、エレベーターという狭い密室はかなり気まずかった。

 一組ということで、雪乃さんが先に降りたのだが、コノちゃんと俺だけでも気まずさは変わらない。

 楽しい修学旅行。初のリア充学校行事。

 そのはずだったのに、どうしてこうなってしまったのだろう。どうしよう。


 ①俺のせい ②コノちゃんのせい ③雪乃さんのせい


 ーここで①を選ばずにどうしますー


 呼び出されているのを、無視するのはあまりにひどいだろう。

 名前は書いていなかったのだし、明らかに怪しかったけれど、雪乃さんには少しの悪意があったわけでもない。

 その場で声を掛けなかったのは、彼女なりの遠慮。

 手紙に名前がなかったのは、きっと書き忘れただけ。

 文字の汚さと説明の下手さは、ああ見えて彼女の頭が悪いから。

 時間に少し遅れたのは、部屋を出てから指定された場所までに掛かる時間を、考えていなかったのだろう。

 結果として、コノちゃんを怒らせる原因になってしまった。

 とはいえ雪乃さんは、春香ちゃんが遊びに来てほしいと言っているから、それを俺に頼んだだけ。

 それじゃあ、そんなことで怒っているコノちゃんが悪いとでも?

 早とちりで勘違いして不機嫌になっている、コノちゃんが?

 悪いように言ってしまったけれど、そう思っているとか、絶対にそういうわけじゃない。

 彼女は自分に自信が持てないから、すぐに不安になってしまうんだ。

 そして俺は、そんな彼女が好きなんだ。

 ここまで来たら間違えないだろう。

 コノちゃんを不安にさせてしまって、雪乃さんにもきちんと説明をしなかった、全ては俺の責任だ。

 多くの友だちと大切な恋人と一緒に、リア充ライフを満喫するなら、周りを気遣うくらいのことは出来なければいけないね。

 それこそ、人を惹き付けるものなのだろうから。どうしよう。


 ①謝る ②話し合う ③誤魔化す


 ーここは②を選んでいきましょうー


 周りを気遣いながらも、従うばかりでない存在。

 願わくば、人気者とまで言われるくらいの存在に。

「二人で話し合おうか。まずは、説明をしたいから、話を聞いてよ。コノちゃんの質問にもちゃんと答える」

 部屋に戻ると、迷わず窓際まで歩いて行った。

 窓へ向けられていた椅子の向きを直し、最初に部屋に入ったときに、コノちゃんが絵を描いていたあの席で、二人は向かい合っている。

 もう落ち着いてくれているようで、俺の言葉にコノちゃんは頷く。

「雪乃さんが美人だとは思うけれど、彼女とはそういったことは少しもなくて、俺の恋人はコノちゃんだ。一緒にテスト勉強をしたり、妹の面倒を見たり、本当にそれだけだから」

「それだけじゃないじゃん!」

 真実を言ったのだから、何を言われているのかわからなかった。

 どうしてコノちゃんが大声で、俺の言葉を否定したのか理解が出来なかった。

 本当に他に何もしていないのに、それだけじゃないとは、コノちゃんは何を指して言っているのだろうか。

 もしかして、今日のこと? どうしよう。


 ①説明する ②言葉を待つ ③諦める


 ーここも②を選ぶとしますー


 何を持ってそれだけではないと言うのか、彼女の方から教えてくれるかと思い、俺は言葉を待った。

 すると不機嫌そうにしながらも、コノちゃんは続けてくれる。

「一緒にテスト勉強をするということも、コノにとってみれば結構なことなんだけど、リア充からしてみれば普通のことなのでしょうね。友人として流してあげる。だけど、妹の面倒を見るだなんて、それは流せないわ。親密な関係じゃないと、そこまでは行かないでしょうよ」

 他にも何かがあるのではないかと、疑ったわけではなかったらしい。

 なるほど、そう言われてみれば、コノちゃんが思う気持ちもわからないでもない。

 異性と家でテスト勉強をするだなんて、去年までの俺が聞いたら、驚くことだろうからね。友だちのいない俺からしたら、同級生の妹と面識があるだなんて、信じられないことだろうし。

 そうだね。そうだよね。

 よく考えてみたら、それだけで流せるような内容じゃないや。どうしよう。


 ①動揺 ②大丈夫 ③驚く


 ーここは③を選びますー


 驚いてしまっていけなかった。

 俺は雪乃さんとそんなことをしていたのか……。

 それを俺には感じさせず、コノちゃんに感じさせたのは、雪乃さんの外見と性格のギャップのせいだろう。

 彼女は見るからに全くもって俺を異性とは感じていない。

 だから俺だってそうは考えずに、彼女との時間と楽しもうとしているんだ。

 とても素直な人で、俺を頼ってくれているのだと、妹や弟のために頑張っているのだと、伝わってくるから。

 そんな彼女を変な目でなんか見られるものか。

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