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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
修学旅行 二、三日目
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 朝食の食べ始めの頃は、まだ少しぎすぎすしたようで、俺も胸が痛かった。

 しかし食べ終わった頃には、だれもそんなことは忘れてしまったように、いつも通りに戻っていたのだからさすがだ。

 友情や信頼とは、やはりなんとも素晴らしいものなのか。

 いつまでも気にしていても仕方がないと思い、俺も精一杯に自由行動という夢の時間を、楽しませてもらうことにした。

 学校行事でこんなにも楽しめるときがくるなんて。

 こんなにも最高で、時間があっという間に過ぎ去ってしまうなんて。


 主人公は修学旅行を満喫しています。そうしてあっという間に過ぎ去ってしまう、はずだったのですがね……。

 自由行動の時間はあっという間に過ぎ去ってしまったようですが、修学旅行の二日目自体が、そうあるわけではありません。同じ班のみんなと、選択肢を出現させることもなく、仲を深めることが出来ましたのにね。

 また、新たな波乱が生まれてしまうのです。それが修学旅行というものなのですから。くっくっくっく。


 もう二日目も終わってしまうのかと、残念な気持ちで部屋に戻り、椅子に座ったときに、ポケットに何かが入っていることに気が付いた。

 不思議に思って取り出してみれば、それは覚えのない紙。

 何度も折られているようなので、開いてみたならば、汚い文字で何かが書かれているようだった。どうしよう。


 ①読む ②捨てる ③相談する


 ーここで①を選択しますー


『今日の夜九時に、お風呂に入る前の、ひらひらのところに来なさい』

 よくわからないけれど、呼び出されてしまっているらしい。

 十時以降は部屋にいなければならなくて、十一時には就寝となる。しかし九時といえば、夕飯も入浴も終わったが、まだ部屋に戻らなくて良いという、遊び放題認定がなされている時間だ。

 しかし今日も昨日と同じように、部屋で遊ぶかもしれないし、そうしたら部屋を出て行きづらい。

 この紙を見せて、呼び出されたから行ってくると正直に言っても、怪しいから行くなと止められるだろう。何も告げずに部屋を出て行こうものなら、明らかに不審者である。言えないような理由なのかという話だ。

 どうしたら良いんだろう。

 その前に、この指示に従うことを、前提となっている方がおかしいのではないか?

 だれが書いたものなのかも、いつ入れられたのかもわからないし、従う必要なんてないじゃないか。

 名前も書いていないのだし、怪しい人からのものなんじゃないだろうか。どうしよう。


 ①相談する ②従う ③無視する


 ーここは②を選んでしまうのですー


 それともう一つ不思議なところがあるとしたら、お風呂に入る前のひらひら、である。

 ひらひらというのは、何を指しているのだろうか。読み間違えているのだろうか。

 どこに行ったら良いのか、いまいち伝わらない、せめてもう少し丁寧な文字で書いてほしかった。

 まあ、ひらひらとか言っているくらいなのだから、怖い人ではないと信じよう。

 ちょっと待てよ?

 この紙をいつ入れられたのかがわからない。この紙がいつ書かれたのかはもっとわからない。

 日付が書いていないのだが、今日というのが今日とは限らないんじゃないか?

 謎が多すぎるものだったが、だからこそ、指示に従わなければいけないような気がしてならないのであった。

「今日、九時に予定がありますので、少し部屋を出ますね」

 先に言っておけば、まだ出て行きやすいかと思い、班のみんなにそう伝える。

 詳しいことを話せないので、予定と口にしたのも、俺的ポイントである。

「予定って、部屋の外で何をするの?」

 しかしさすがにそれだけで、何も問われないはずもなく、コノちゃんは俺にそんなことを言ってくるのだ。どうしよう。


 ①正直に吐く ②白状する ③はぐらかす


 ーここで③を選んでしまいますー


 ここで正直なことを言うくらいなら、最初からそうしている。

 後ろめたいことがあるわけではないが、呼び出した人物がわかったときに、戻ってからあれこれ言われるのが嫌だった。

 謎の紙に呼び出されたと言って出て行けば、だれだって、何が起こってきたのかと気になることだろう。それを探られるのが嫌だった。

 相手はコノちゃんなのだし、隠しごとなんてものはするつもりなんだけどね。

「いや、別になんでもないよ。そんな、言うほどのことじゃないから」

 微笑みを浮かべて、やんわりと詮索を拒絶する。

 腑に落ちないような表情をしていたが、なんでもないと言われてしまって、コノちゃんはそれ以上が言いづらいようだった。

 今朝のこともあるから、なおさらだろう。

 周りに気を遣うコノちゃんは、周囲の空気を悪くするようなことを、不要にしはしないだろうと考えたのである。

 三人とも優しくて、俺が九時に予定があると言ったから、ゲームを早めに切り上げて入浴へ行ってくれる。

 本当は思う存分遊んでから、最後に風呂へ行く。または先に風呂に入ってから、就寝まで思う存分遊ぶ。

 どちらにしても、途中で切り上げるのは嫌だったろうに、九時に間に合うようにと合わせてくれた。

 申しわけないことに、途中なのに俺が抜けてしまうせいで、三人でゲームをやり直さなければいけないだろうし。

 風呂に入っている間、優しい三人への感謝と謝罪が止まらなかった。

 そして風呂を出た時間が八時五十分だったので、三人には部屋に戻ってもらい、俺はそのまま風呂から出て待機しているのであった。

 暖簾を潜った先で、男風呂と女風呂で分かれているのだ。

 だから文字からして男だろうとは思ったけれど、一応はだれもが風呂場へ行く前に通るように、暖簾の前で待っていた。

 これから風呂へ行こうという人たちに、冷たい視線を向けられて、不審がられているのはわかっている。どうしよう。


 ①移動する ②部屋に戻る ③負けない


 ーここでも③を選びますー


 それでも俺は負けないんだ。

 ここなら、俺を呼び出した人から、きっと見つけやすいだろうと思うし。具体的な場所が謎であるからには、わかりやすい場所にいるというのが、正しい選択だと信じている。

 九時になったら来てくれるはずだから、それまでの辛抱だ。

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