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果てしなくどうでも良い話です。飛ばしたとしても、ストーリーには全く支障を来しません。
しかし他の話に比べて、遊んでいると思うので、修学予行先に到着する前の、序章という感じで読んで下さると嬉しいです。それに、最初でほのぼの話を入れておかないとなんです。
これから始まる修学旅行編の本編は、ちょっと修羅場感も出てしまうかもしれませんから。
後ろから聞こえて来る山内さんの声。
けれどをそれを無視し続け、俺はコノちゃんと見つめ合っていた。
「んじゃあよぉ、あたしたちはあたしたちで話をしていようぜ。二人が話し掛けてきたって、同じように無視してやるんだ」
「え? あぁ、はい。そうしましょう。二人で楽しいことをしていましょうか。羨ましがって、混ぜてくれって言っても、ちょっと意地悪しちゃいましょうか」
祭さんと山内さんの、そんな会話が聞こえた。
二人で楽しいことをしている、か。一体、何をするつもりなのだろうね。どうしよう。
①振り向く ②決して振り返らない ③降参する
ーここは②を選ぶのですよー
カサカサと、布が擦れるような音が聞こえる。
二人は何をしているのだろう。すごく気になるのだけれど、これで後ろを見てしまっては、なんだか負けてしまったような気がする。
「何をしているの?」
コノちゃんからなら見えると思い、彼女に問い掛けてみるが、彼女は首を横に振る。
「それが、コノもわからないんだよね。微妙に下を向いて、山内さんは何か……手を動かしているように見える。祭さんに関しては、どんな風にしているかも見えない。山内さんが隠しているようなの」
そこまで教えてくれると、彼女は首を傾げた。
きっと今言ったことが、彼女の位置から見える全てなのだろう。
しかし手を動かしているって、山内さんは何をしているというんだ? そして、祭さんには、どんな秘密が隠されているのだろうか?
コノちゃんに訊ねてしまったことにより、更に謎が増えたような気がする。どうしよう。
①推理 ②協力して推理 ③降参する
ーここも②を選びましょうかー
とはいえ、諦めるわけにはいかない。
名探偵の実力というものを、教えてやるしかないようだな。
「何か小細工をしているのは間違えないだろうね。この場で持っているものなど少ないだろうに。山内さんの手には、何かが握られているの?」
「いや、何も持っていないように見える。ただ指の動きが不思議なもので、意味のないものにも見えるし、何か意味を持っているようにも見える」
俺が質問をすると、必死に覗き込んで、コノちゃんは質問に答えてくれる。
何を持っているでもなく、山内さんは不思議な指の動きをしている。その動きに意味がないのだとしたら、本格的に、彼の行動の意図がわからない。
だとしたら、何か意味を持ってしていることだというのだろうか。
コノちゃんの言う不思議な動きというのが、実際に見ていない俺にはわからない。
「ふっふっふ」
悪者の笑い声が、それもかなり悪者じみた悪者の笑い声が聞こえてきた。
自信はないけれど、祭さんの声だろう。少なくとも女性の声ではあるし、このタイミングで祭さん以外が言ったのだとしたら、そちらの方が驚くというか戸惑うね。
普段からその笑い方ということだろう? まさかリア充共の話の流れで、わざとそう言った笑い方をすることになるとは思えないからね。
……なんだよ、偏見だって? わかっているよ。
何にしても、祭さんの声でほぼ間違えないと思う。
「遂に完成致しましたね。これを、どうしてやりますか?」
こちらは間違えなく、山内さんの声だ。
祭さんはいつもが明るいだけに迷ったが、山内さんのこういった風な喋り方は、以前にも何度か聞いたことがある。
「何が完成したんだと思う?」
「さあ、なんだろう。コノには、何を持っているようにも見えないよ」
二人の会話に耳を済ませた後、コノちゃんに意見を求める。
見えないように隠してあるのか、見えないくらい小さなものなのか、本当に何もないのか。
コノちゃんは何を持っているようにも見えない、とそう言っているのだから、このうちのどれかなのだろう。
じっちゃんの名にかけて、この謎を解き明かさなければならないというのに、さっぱりわからない。どうしよう。
①謎を解いてみせる ②コノちゃんに任せる ③降参する
ーここは①を選択しましょうー
大人しく降参し、二人に真相を教えてもらうのは簡単だ。
その選択肢は、謎が始まったそのときから、ずっと用意されている。いつだって、俺たちは戦いを放棄し、諦めることが出来るのだ。
しかし俺は、そうするわけにいかないのである。
いつの間にか俺とコノちゃんは、新婚夫婦ではなくて、名探偵と助手みたいな関係に変わってしまっている。
もしくは、名探偵と警察か。
何にしても、いちゃらぶな雰囲気はなくなっているのであり、その時点で山内さんの罠に呑まれてしまっているのではないかと思った。
この状況で再び、コノちゃんを見つけ合うというのも一つの道だな。
山内さんと祭さんで遊んでいるのだから、俺とコノちゃんも、別々に遊んでいれば良い。お互いの会話を気にする必要などあろうか。
いや、ない。
ないのだ。謎に立ち向かっていく必要など、全くないのだ。
そうなのだが、ここでラブストーリーに戻そうとするのは、謎から逃げているのと同じなのではないだろうか。
降参してしまうのと、そう違いない。一度挑んだからには、最後まで解かなければ、それは単なる逃げである。
山内さんの罠から逃れるために、再びいちゃらぶを取り戻したんだと主張したとしても、負け惜しみにしかならないだろう。
ただ、ここで考えていて、解けるような謎なのだろうか……。どうしよう。
①解く ②いちゃらぶが良いの ③降参する
ーここも①を選択するのですよー
どこかに、ヒントが転がっているかもしれない。どこかに、伏線があったのかもしれない。
これまでの流れを辿っていけば、絶対にこの謎は解けるはずなのだ。




