表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
初恋人
70/223

 コノちゃん。コノちゃんかぁ。

 呼べるかな。ちゃんと呼べるかなぁ。

 堂本さんって呼んだら怒られるけど、つい堂本さんと呼んでしまっている。

 急に呼び方を変えるなんて、ただでさえ難しいことなのに、コノちゃんだなんて……。

 あぁでも、コノちゃんかぁ。

 恋人らしい呼び方をしようと考えられたそれは、俺に予想以上の制限を掛けていた。だって、彼女を呼ぶだけで恥ずかしくなるんだからね?

 早く慣れないといけないって思うのに。

 そんな様子でまだぎこちなくいるうちに、修学旅行の日が近付いてきている。

 遂に運命の日は明日にまで迫っているのだ。どうしよう。


 ①コノちゃんの練習 ②堂本さんに戻す ③どちらでも良い


 ーここは①を選択致しますー


 修学旅行のときには、迷わず自然にコノちゃんと呼べるようになっていなければ!

 ということは、今日中にその呼び方を極めるということ。

 堂本さん……コノちゃんにも、協力してもらうとするかな。

 コノちゃんの練習を積んで、絶対に今日中にコノちゃんマスターになってみせる。

 ただそう呼ぶだけのことなのだけれど、俺はいつもとは異なる、覚悟というものを持って学校を目指した。

 出会ってすぐにあだ名で呼ぶことができるような、チャラい人がたまに羨ましくなるよね。

「あ、あの、おはようございます」

 登校して教室に入ると、やはりもう既に堂本さんは待っている。

 少し前に席替えがあったので、もう隣の席ではなくなってしまったけれどね。

「あっ、おはようございます。今日はいつもよりも少し早いのではありませんか? もしかして、明日が楽しみで眠れなかったとかでしょうか」

 本を読んでいた堂本さんだけれど、俺の姿を捉えるとそんなことを言ってからかってくる。

 確かにいつもの時間と比べると、十分くらい早く今日は登校した。

 朝練のある運動部がいないのはいつものこととして、ほとんどの文化部がまだ登校する前の時間なので、今教室の中には俺と堂本さんの二人しかいない。

 このクラスの文化部たちが、早すぎる登校組じゃなくて助かった。どうしよう。


 ①協力を乞う ②雑談 ③スルー


 ーここも①を選択致しますよー


 朝から訓練は始めなければ、きっと一日で極めることなど出来ない。

 そう考えた俺は、本題をすぐに持ち出そうと考えた。本題と言うのはもちろん、コノちゃんなんて呼べないよ、事件の解決へ向けた政策についてである。

 コノちゃんと呼ぶ練習をすると、覚悟を決めてきたんだ。

「人のボケを無視しないで下さい。それともまさか、本当に明日が楽しみで眠れなかったのですか?」

 挨拶すら自然に言えていないというのに。あぁ、俺の覚悟は偽物だったのか。

 なんて一人自分の中で葛藤を繰り広げていると、堂本さんが不満げに声を掛けてきた。

 どうやら彼女は、そんなわけあるかい、とツッコんでほしかったらしい。

 明日が楽しみで眠れなくなるというのは、今晩に起こるべき事態であり、それが昨夜に起こったのだとしたらそれはいくらなんでも早いだろう。二徹で行くことになってしまうのだからね。

 それ以前の問題として、俺は学校行事というものをそんなに楽しみに思ったことがないわけでもあるし。

 つまりありえないことではないとしても、俺や堂本さんにとってはありえないことなのだ。

 普段の堂本さんらしい、皮肉的なボケである。どうしよう。


 ①なんでやねんする ②ツッコむ ③スルーする


 ーここは③になるのですよー


 自分でボケたのだと言わせてしまってからツッコミを入れるのでは、本人が辛いだろう。

 そう考えた俺は、スルーを貫きそのボケをなかったことにしてあげることにした。

「ねえ、堂本さん」

 問い掛けもボケも無視した上で、荷物を片付けた俺は堂本さんの名前を呼んだ。

 自分の席に座ってしまうと、そこそこに離れてしまうので、会話をするのには向かないだろう。

 だから俺は堂本さんの席の前に立ち、話をすることにした。

 まだ来ていないのだから、だれも使っていないのなら、堂本さんの周囲の席を使ってしまっても良いのではないかと思う。

 立ったままでは疲れるだろうから、隣の席や前の席に座ってしまおうかと考えた。

 しかし登校したときに、自分の席に俺がいるという状況になる席の主のことを考えたら、それは出来なかったわけだけれどね。

 自分が嫌なことは人にしない。

 リア充たちに勝手に席を占領されて、自分の席に座ることすら出来ずにただ立ち尽くしていた、あの悲しみと怒りを忘れるわけがない。

 自分がリア充に近付いたからって、そんなことを俺はしたくない。

 少しくらい疲れたところでと、俺は堂本さんの席の前に立っているという道を選んだ。

 これでもまだ、堂本さんの前の席の人には迷惑になってしまうだろうけれどね。ごめんなさい。

「どうかなさいましたか? それと、堂本さんではなく、コノちゃんです。何度言ったらわかるのですか」

 呆れるように堂本さんはそう言ってくる。

 ありがとう。堂本さんがそこに触れてくれなかったら、自分からは切り出せなかったろうよ。どうしよう。


 ①練習に協力をして ②練習を見ていて ③堂本さんで良い


 ーここは①を選びますよー


 このタイミングでなら、ノリで言い出せる!

「そこが問題なんです。だから堂本さん、明日までにコノちゃんと呼べるようになりたい……。協力、お願い出来ませんか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ