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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
修学旅行へ
67/223

 堂本さんは、いつまで諦めずにいられるのだろうね。

 彼女は意外と負けず嫌いなところがあるようだから、授業が終わってしまわなければ良いのだけれど。

「もうわかりません。コノは可愛ければなんでも良いので、助けを求めてはいけないでしょうか? 審査員側に回りたいです」

 あれ? 負けず嫌いだと思ったのは、完全に気のせいだったらしい。

 早過ぎて面白くないくらいに、堂本さんは一瞬でギブアップ宣言をした。どうしよう。


 ①許可 ②却下 ③応援


 ーここで①を選ばないわけにもいかないでしょうー


 どこまでいっても堂本さんは無理そうなのだから、いずれは俺の方から助けを呼ぶつもりでいた。

 もう少し粘ってくれれば、彼女の救援要請にも、迷わず応じることが出来るだろう。

 それなのに。堂本さん、諦めるのが早いよ……。

 しかし彼女が助けを求めているのに、それを断るわけにはいかない。そうしてしまうと、後で助けを呼びづらい。

 最終的に、堂本さんの出した意見の中から、採用案を見出すことになってしまうかもしれない。

 それは困る!

「良いですよ。考えてもらいたい方に、ご自分でお願いされれば良いでしょう?」

「はいっ!」

 俺が許可すると、堂本さんは嬉しそうに返事をした。

 そうして、即座に山内さんを捕縛する。

 暇そうにしている花空さんではなく、黙々と作業をしている山内さんを捕まえるところが、堂本さんらしいのだろう。

 迷惑を考えないという意味では、もちろんない。

 俺が自分でお願いしろと言ったものだから、山内さんの方へ行ったのだろう。

 最初は花空さんに話し掛けようとしていて、それを諦めたのが見てわかった。

 粘り強さも負けず嫌いさも、なんだか欠片ほどもないような気がしてきた……。

「堂本さんの名前を使って、可愛いあだ名を考えるんですね? 可愛いというのが、自分のセンスで考えて良いものかわかりませんが、考えてみようと思います」

 呻き声のような低い声を漏らしながら、山内さんは考え込む。

「……思い付きませんよ。普通な感じで良いのなら、コノちゃん、なんていかがでしょう?」

 そう! そういった普通なので良いんだよ。さすがは山内さん。

 提案している彼は、とても恥ずかしそうにしているようだけれどね。

 採用したら実際に呼ぶことになる俺よりも、ここで一言口にする山内さんの方が、恥ずかしそうに見える。

 それはつまり、山内さんは自分が恥ずかしくて言えないのだから、恥ずかしい答えが出てこないということである。

 だったら、初めから山内さんが一番の適任だったんだろう。どうしよう。


 ①採用 ②不採用 ③堂本さん判断


 ーここでは一応③を選びますー


 俺としては、少し恥ずかしいくらいなので、採用したいと思う。

 あほな感じもバカップルな感じもせず、それなのにカップルらしさはある。

 求めていたのはこういうのなんだろうと思うね。

「うぅん、微妙ですね。しかしまぁ、可愛いは可愛いですし、コノはそれで良いですよ」

 却下はしなかったけれど、堂本さんの方はピンときていない様子。

 どうしてなのだろうね?

 なぜだか上から目線な物言いなのは、審査員側に回ったから、ということで良いのだろうか。

 謎の設定に不思議と従順なものである。

「俺も、それくらいなら呼べると思うし、可愛くて良いと思う」

 拍手が起こる。

 俺が良いと思うと言った途端に、拍手が起こった。

 驚いて音がした方を見ると、全く関係のないことで、恥ずかしくなったわけだけれど。

 リア充間の話し合いの中で、拍手が起こるような何かがあったのだろう。

「これで決定だな。二人の意見も一致したようだし、クラスの皆も拍手で賛成してくれている」

 審査員どころから審査員長くらいの雰囲気を放ちながら、花空さんが言う。

 タイミングがぴったりだっただけに、あの拍手をエキストラとして利用するってことなのかな。

 まさか本当に俺たちのことを拍手しただなんて、さすがの花空さんだって思いやしないだろう?

 そういった設定で行くのなら、訂正も面倒だし乗ろうじゃないか。どうしよう。


 ①喜ぶ ②照れる ③怒る


 ーここでは②を選択致しますー


 コノちゃん。

 まだ、一度も口に出して言ったことがない。

 本当にそう呼べるだろうか。いざ呼ぼうとしたら、口を開いた瞬間に、きっと恥ずかしくなってしまうに決まっている。

 それを耐えて、逃げ出さずに、本当にそう呼べるだろうか。

 急激に自信がなくなってきたけれど、ここでやっぱり無理なんて言えるはずがない。

 でも顔が赤くなっていくのを感じる。

「なんだかこういうのって、とても照れますね。恋人になったからといって、呼び方を決めるだなんて……。そもそも呼び方なんて、自然に変わっていっているものですのに。急に変えたら、恥ずかしさや照れが増すではありませんか」

 頬をほんのり赤く染めて、目を逸らす堂本さんが可愛いから、俺は何も言わない。

 けれども、それは俺のセリフなのではないだろうか。

 呼び名を変えようとそもそも言い出したのは、俺ではなく堂本さんの方だ。

 最初に言い出したのは? といったら、俺と堂本さんのどちらでもなく、花空さんになるのだけれど。

「ひゅーひゅー! 新婚熱々って感じで良いな! 羨ましいぜ! ひゅーひゅー」

 茶化して来る花空さん。こいつが全ての元凶である。

 そう思ったら、周りでこんなに騒がれたら、腹が立つのではないかと思った……。

 でも、今は怒りだなんて気持ちはどこにもなく、嬉しさと照れだけが俺の中を満たしていた。

 花空さんの茶化しすら、なんだか嬉しく感じられてしまうくらいである。

「し、新婚? そんなんじゃないですよ。それに、付き合ってすぐに結婚とか言い出したら、重い彼女だと思われてしまうではありませんか……」

 恥ずかしそうにしながらも、その小さなところを気にしている乙女な堂本さん。可愛い。

 一つ残念なところを挙げるとしたら、それを俺の前で言ってしまうところ。

 重い彼女だと思われてしまう。という言葉を、彼氏の前でだれが言うのだろう。

 だけど堂本さんがそんなに気にしてくれていると思うと、……嬉しかった。どうしよう。


 ①重いのなんて嫌々 ②軽いよりは良い ③重いくらいで良い


 ーここでも②を選ぶとしますー


 想ってくれているのは、想われていないのよりも良いに決まっている。

 だから、少しくらい重い愛だったとしても、軽いよりはよっぽど良いだろう。

 それに俺はヤンデレキャラも嫌いじゃないくらいだし。

「想いが軽い方が嫌だよ。軽いんだったら、想いは重いくらいで良い」

 堂本さんを励ましたつもりだったのだけれど、言った瞬間に笑われた。

 そして俺もすぐに気が付いた。

 決して狙って言ったわけではないのだ。こんな残念なダジャレ、狙って言うわけがない。

 しかし狙っていないからこそ、だからこそ恥ずかしいのだ。

「そうですよね。重い想いが良いですよね。ふふっ、そのお言葉を頂けて、なんだか元気が出ました。ありがとうございます」

 どういう意味だろうね?

 重い想いのところを強調しているみたいだけれど、どういう意味があるんだろうね?

 もう嫌だ。恥ずかしいよ。どうしよう。


 ①開き直る ②顔を隠す ③逃亡する


 ーここも②を選ぶとしましょうかー


 言われるほどに恥ずかしくなるので、俺は熱くなっていく顔を両手で覆った。

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