表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
修学旅行へ
66/223

 距離を感じるって言われても、だって他になんと呼べと?

 まさか本当に木葉ちゃんだとか、そんなことを考えているんじゃないだろうか。そんなのは、恥ずかしいからなしである。

 でも……、でもそんな言い方をされたら、断ることも出来ないじゃないか。

 木葉ちゃんに寂しそうな顔をさせるなんて、そんなのってズルい。どうしよう。


 ①考える ②考えて ③嫌だ


 ーここは②にしますー


 恥ずかしいから無理なんだけど、堂本さんが望んでいるのなら、それを叶えてあげたいとも思う。

 彼女自身の希望だったら、斬り捨てることなんて出来ないだろう?

「じゃ、じゃあ、考えて下さいよ。堂本さんは、どう呼んで欲しいのですか? 俺にどう呼ばれたいのですか?」

 俺がそう言うと、堂本さんは少し顔を赤くして、何かを考えている様子でいた。

 そしてそのまま数秒。

「ご主人様なんていかがでしょうっ!」

 何か良い案を思い浮かんだかのように、閃きに満ちた表情で、立ち上がってまで彼女はそう叫んだ。

 声量からさすがのリア充共も気が付いたようで、一瞬ではあるけれどこちらに視線を向けてきた。

 当の彼女は、それすらも全く気にしていないように見える。

 最高の答えが思い付いたことを、疑ってもいないんじゃないかと思われる。どうしよう。


 ①了解 ②喜ぶ ③却下


 ーこれは③ですよー


 ドヤ顔されてもそれはない。

 間違っても、ご主人様と呼ぶことは絶対にないだろう。

 恥ずかしいけれど彼女が望むなら、と考えていたのは、呼び捨てとかちゃん付けとかその辺りだ。バカップルっぽさは否めないけれど、百歩譲ったとしても、名前ににゃんとかたんとかりんとか、そういうのを付けるくらい。

 少なくとも、その中にご主人様は入っていない。

「真面目に考えないのなら、そのままで良いということですよね? なら無理に変えはせず、堂本さんのままにしますけど……」

「あぁあっ! ちょっと待って、ちょっと待って下さいよぉ。真面目に考えていたんです。その上での答えなんです。どうしても嫌なら考え直しますから、もう一度だけコノにチャンスを下さいませんか?」

 ふざけていて、の方がまだましだ。

 真面目に考えた上での答えがそれなのだとしたら、何度考え直しても同じということだ。どうしよう。


 ①一度だけ ②却下 ③了承


 ーここでも③を選びたいと思いますー


 その手の答えがいくつ出るのか、真面まともなのが出るまで聞いてみようかな。

「わかりました。今度はきちんとしたものを宜しくお願いしますよ?」

 面白いから俺がそう言うと、堂本さんは大きく頷き考え込み始めた。

 これはネタを考えている風ではなく、本当に自分の望みを考えている風である。

 ま、ご主人様というのも、本当に彼女の望みには違いなかったんだろうけれどね。

「ご主人様が最もきちんとした答えだと思うんですけど。それを超えるとなると、女王様とかですか? もしかして、お嬢様ではなくコノがご主人様と言ってしまったので、そのところを気にしていらっしゃったのでしょうか」

 そうじゃないんだよね。

 今すぐにでもツッコミを入れて、正したかったところだけれど、堂本さんが結論を出すのを黙って待つ。

「何を言ってんだ? 恋人だってんだから、木葉ちゃんとか木葉とか、そういうことに決まってんだろうよ」

 悩んでいても答えが出なそうだった堂本さんに、花空さんが助け舟を出す。

 その答えがあまりに模範解答で、俺は面白くないなんて思ってしまっていたんだけどね。

 面白くないって、実際に呼ぶんだったら、面白さは恥ずかしいだけだから避けて欲しいくせに。

 あぁでも、花空さんがこんなに普通に見えたのは、今が初めてかもしれない。どうしよう。


 ①却下 ②堂本さんの意見を ③決定


 ーここは②を選ぶとしましょうー


 しかし花空さんの意見を、俺は受け入れるわけにいかないのだ。

 それを採用しないのはもちろんのこと、却下することもない。

 花空さんの意見であって、堂本さんの意見ではない。だが、堂本さんの意見にならないとも限らないからだ。

 その意見を堂本さんが気に入ったのなら、それは堂本さんの意見にも変わるだろう?

「俺は堂本さんの意見を聞いているのです。さて、どうなさいますか? 特にないのなら、そう答えて頂いても宜しいのですが」

 急かすような脅すような俺の言葉に、堂本さんは慌てて答えたようだ。

 アレンジの仕方を間違えているところが実に彼女らしい。

「それではっ、コノハンなんていかがでしょう?」

 花空さんの言葉から方向性を理解したようだが、あともう少し、ちょっと惜しかったんだよね。

 名前に”ん”を付けるというアイディアは悪くないのだが、それは木葉という名前に合っていないんじゃないかと考える。

 雪乃さんだったら、ゆきのんというように、とても可愛い雰囲気が生まれる。

 残念ながら、コノハンはないだろう。

「コノハリン、とかは?」

 俺の表情を見て間違えを悟ったのか、別の意見を彼女は出してきた。

 コノハンよりはましだが、そう変わらない。どうしよう。


 ①採用 ②却下 ③悩む


 ーこれも②になりますー


 堂本さんに意見を求めていたら、永遠に呼びやすい答えは出なそうだけれど、彼女がギブアップするまで続けるのも良い。

 それで諦めたら、花空さんか山内さんかの意見から決めようかな。

 二人はもう少し普通の意見を出してくれるだろうし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ