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しかし、この班にはあともう一人いる。
「あたしは? あたしは? あたしも、ファンを見捨てたりはしないかんな」
どんな言葉を求めているのかはわからないけれど、花空さんも話に入ってくる。
別に話に入ってくること自体は、嫌がってなどいない。
三+一の三の方になる。という夢を叶えた俺ではあるけれど、だからといって仲間外れにしたいわけではないのだ。
自分がされて嫌なことを人にしない。基本でしょ?
三人で仲良くしている班に、一人で放り込まれる苦しさは俺だってよくわかっているつもりのこと。
花空さんはフレンドリーでポジティブだから、そんなことで苦しむようなことはないと思う。
だとしても、それは仲間外れを行って良い理由になんてならない。
それに本当に彼女が傷付いているかとか苦しんでいるかとか、本人じゃなければわからないことである。
明るく振る舞っているだけで苦しんでいることだって、その可能性だって完全に否定することは出来ないのだから。
花空さんの態度を見ていると、そうは思えないけどね?
何より彼女は、進んでこちらに話し掛けてくれるしさ。どうしよう。
①同じ班なだけ ②追い出す ③仲良くなりたい
ーもちろん、③を選ばせて頂きますー
今年の俺は絶好調だし、花空さんとも友だちになれるのかもしれない。
いやまぁ、調子に乗っているとか、そういうことじゃないんだよ。
少しだけ、少しずつ。そう、ほんの少しの勇気を出すだけで、俺はリア充へと変身出来るんだ。
リア充だからといって性格が悪いというのは、単なる偏見でしかなく、それは俺の負け惜しみに重なっていただけの哀れな思い込みだったのだ。
本当はリア充だって、そこまで遠い存在じゃなかったんだ。
頑張れば友だちを作ることも出来るんだ。
社会って、そうやって成り立っているんだろうな……。
結論まで導き出せたところで、俺は花空さんへと微笑みを向ける。
「見捨てないでいて下さるのですね。ありがとうございます、花空さん」
俺のこんな言葉で、飛び上がって喜んでくれるその姿は、素直でとても可愛らしい。
出しゃばりだからとか、リア充だからとか、クラスの中心人物だからとか、そんな理由で俺から遠い人だと考えてしまうのが、俺を一人にした要因なのだろう。
こうやって見方を変えてみれば、花空さんだってとても素敵な人に思える。
以前の俺なら避けていただろうが、今ならば、友だちになれると、本気でそう思える。
これも、堂本さんが俺に齎してくれた変化なのかな? どうしよう。
①微笑み ②赤面 ③そうじゃない!
ーここは②を選ぶんですよー
なんだか恥ずかしくなってくるなぁ。
俺の努力だから、堂本さんは関係ないんだ。そう思えば照れもなくなるかと思ったけれど、そうすると反対に堂本さんを意識してしまって、ますます恥ずかしくなってきた。
「どうして顔を赤くさせているのですか? まさか、カップル成立直後に、浮気のことを考えているのではないでしょうね」
嫉妬してくれたのか、頬を膨らませて迫ってくる堂本さん。
浮気では決してないのだけれど、正直に”堂本さんのことを考えていたら、顔が赤くなってきた”なんて言うのは、いくらなんでも恥ずかし過ぎるだろう。
だけど、勘違いされてしまうのも嫌だし。どうしよう。
①浮気 ②堂本さん ③別のこと
ーここで②を選べてしまうんですー
浮気を疑われるくらいならば、正直なことを言った方が良いのだろう。
堂本さんだって本気で浮気だなんて思っていないだろうけれど、どちらにしても、俺は彼女に嘘を吐きたくない。
「そうじゃなくて……、俺は、……堂本さんのこと……考えていたんです……」
途中で恥ずかしくなって、声が小さくなっていってしまったろうけれど、なんとか最後まで告げた。
対して堂本さんは、嬉しそうにはにかみながらも、その答えがわかっていたかのように満足そうな顔をしている。
周囲に花が見えるような可愛さだ。もう、どうしたら良いのかわからない、可愛いにも限度があるってものだろう。
外見の完璧性だったら、雪乃さんを見たときに驚いたものだが、こうして見てみるとやっぱり堂本さんは可愛いなぁ。
輝いて見える。これが、好きになるって、そういうことなのかな?
考えれば考えるほどに、恥ずかしさが増していってしまう。どうしよう。
①花空さん ②堂本さん ③授業
ーここは③を選ぶようですー
い、今は授業中だから、堂本さんのことを考える時間じゃないよね? うん。
「はいはい、この話は終わりです。ほら、授業中ですから、続きをやるとしましょうか!」
完全に声が上擦ってしまっていたけれど、堂本さんはそれを笑っているように見えるけれど、そんなことはちっとも気にしないんだからね。
授業時間が終わってしまうから、無駄話なんてしている暇はない……よ。
「そういやさぁ、恋人のことを堂本さんとかって呼ぶのはどうなんだ? 木葉ちゃんとか、あと、アダ名をつけるのも良いんじゃないか? それと、あたしのことも、花空さんなんて呼ばねぇで、愛称で呼んでくれりゃ良いってのに」
この話は終わりって言ったのに、聞いてなかったのかな、この人は?!
花空さんが余計なことを言うものだから、堂本さんも完全に楽しそうな顔をしているじゃないか。
「今は授業中ですから、ほら」
「作業は自分がやっておきますので、三人はお話をなさっていても結構ですよ」
山内さんが珍しく口を開いたから、助けてくれるのだと思ったら、山内さんまで一緒になって……っ。
「だ、そうですよ。ですから、呼び方でも決めるとしませんか? 確かに、堂本さんでは少し距離を感じます」




