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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
修学旅行へ
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 山内さんが連れてきてくれたのは、花空祭さんであった。

 俺たち三人とはタイプが違うけれど、彼女の元気さは五月蠅さとは違うので、それはそれで必要なタイプなのではないだろうかと思う。

 少なくとも、性格ブス系女子には見えないし。どうしよう。


 ①歓迎 ②許可 ③却下


 ーここは①を選びましょうよー


 彼女は入ってくれると言ってくれているようなのだし、せっかく山内さんが連れてきてくれたんだ。

 それを断ってしまうのでは、二人に悪いだろう。

 堂本さんにも嫌がっている様子はないから、俺としては大歓迎なのである。

「宜しくお願いしますね」

 歓迎するという意味を込めてそう言うと、花空さんは俺と堂本さんに、ニッと元気な笑みを向けてきた。

「お前ぇら、あたしのファンの奴らじゃねぇか。まさか、修学旅行でまで誘ってくるたぁ、かなり熱狂的で大胆なファンなんだなぁ。あたしはそういうの、大歓迎だぜ」

 そういえば、そんな設定があったような気がしないでもない。

 こちらを見て笑っているから、どうしたものかと思えば、そういうことだったのか。

 二年生に上がって、いきなりで堂本さんという素晴らしい友だちに出会うことができたので、調子に乗って話し掛けたのだった。

 彼女がそれを覚えているとは。

 それってもしかして、彼女にとっては本気だったということ?

 だとしたら俺は、花空さんにかなり失礼なことをしてしまったことになる。どうしよう。


 ①謝る ②貫く ③助けて


 ーここは②を選んでしまうのですー


 今更、あれは冗談だった、なんて言えない。

 そもそも手を振って、握手をして……それくらいじゃないか。

 俺にとって女の子と握手をすることは、かなり大きなことである。しかし普通のリア充からしたら、手を握るくらいは普通のことなのだろう。

 それなら、あんなのファンとは言わない、そう言ってしまえば良いのだろうか。

 しかしそんなことをしたら、花空さんのことを傷付けてしまうことになる。

「えっと、その、同じ班になれて、嬉しいです。他にも班はあったでしょうに、本当に俺の班で良かったのですか?」

 嘘を隠すために嘘を吐くようで、罪悪感に苛まれたけれど、俺はなんとかそう言った。

 堂本さんが助け舟を出してくれようとしていた。そのことに気が付いた。だから俺は、その前になんとかしようと、それらしい設定を守り言ったのだ。

 泥舟となってしまうことがわかっているのなら、堂本さんを巻き込みたくはない。

 それに、二人で設定を守ろうとしても、必ずそこで食い違ってしまう。

 そのことを考えたら、俺が一人でなんとか誤魔化すしかないのだろう。

「ああ、良いぜ。本当はクリスの班になろうとしてたんだけど、クリスは人気者だからなぁ、仕方ねぇし」

 クリスとは、松尾クリスさんのことだろうか……。

 彼女と同じ班になろうとしていた? それは彼女の友だちだと言うこと?

 それはいわゆる、引き立て役という奴なのだろうか。

 本当に友だちなのだとしたら、松尾さんにも花空さんにも失礼になるようなことを、俺は考えてしまっていた。

 松尾さんの人気を考えたら、そう思ってしまうのも仕方がないことだと許してほしい。

 むしろ、俺は花空さんのファンという設定なのだから、松尾さんが花空さんの引き立て役と思うべきなのかな。どうしよう。


 ①喜ぶ ②安心する ③ガッカリする


 ーここは①を選ぶとのことですー


 まあ細かい感じ方は捨てるにしても、同じ班になることを喜ぶに決まっていよう。

 だってファンなのだから。

「それじゃあ、松尾さんが人気者で助かったということですね。花空さんには悪いですけど、俺にとっては嬉しいです」

 っぽいよね? ファン、っぽいよね?

 自分で自分に何度も確認しながらも、それを表情に出さないよう努力する。そしてファン役に徹する。

「四人揃いましたから、これで正式に班となれますね。そうしたら、もう崩されることはなくなるわけです。先生に提出するそのときまでは、完全に安心することも出来ませんが」

 安心出来ないということを改めて押しつつも、山内さんは班申請用の用紙を先生から受け取りに行こうとする。

 このタイミングは、彼が狙ってやってくれたものなのだろうか。

 花空さんが何も言ってくれないし、俺も何を言って良いものか悩んでいたところで、山内さんはそう言ってくれたのだ。

 まじイケメンかよ。

 これでとりあえず、俺のファン話は終わりを告げたわけだ。どうしよう。


 ①山内さん ②堂本さん ③花空さん


 ーここも①を選んでしまうのですー


 このまま残っても、まだ気まずさは残るだろうから、今は山内さんに着いて行くとしよう。

「あのっ、俺も山内さんと一緒に行きます」

「そうですか。わかりました」

 理由を問うこともせず、山内さんはただ頷いてくれる。

 これで確信を持てた。

 彼はやはり、ただ空気が読めな過ぎて逆に空気を読んでしまった人、ではなくて俺を助けてくれたイケメンだったのだ。

 さすがっす。

「花空さんのあの態度、どういうことですか? 松尾クリスさんと同じ班になりたがっていた男子に、邪魔そうな目を向けられていたから、そこを誘ってきましたが、まさか彼女とあなたに接点があったとは。とても意外なことで、驚きを隠せません」

 俺と花空さんとの間で、何があったのかが気になり、それを聞き出す意味も込められていたのだろうか。

 二人から少し離れたところで、山内さんは問い掛けてきた。

 驚きを隠せませんって、驚いているようには見えないから、十分に隠せているとは思うけどね。

「一度、話したことがあるだけです。前に出て騒いでいたので、堂本さんと一緒に、少し調子に乗って……、それだけです。その中でのファン設定を、まだ覚えているとは思いませんでしたよ」

「なるほど」

 少し困った風を装い俺が花空さんとの接点を語ると、山内さんは満足したように頷いた。

 どうやら彼は親しくしていたことが意外だったようで、親しくないことを知ると、納得してしまったらしい。

 少し失礼な人だ。どうしよう。


 ①不満 ②見栄を張る ③苦笑い


 ーここは③を選びますー


 まあ、確かに俺が休日も花空さんと会っている、なんて言ったら驚くだろう。

 しかし彼女がただフレンドリーでポジティブな性格で、そこまで接点はないのだと知ったら、「なるほど」という反応になるのだろう。

 俺だってたぶんそうだね。

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