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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
修学旅行へ
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「班を決めるぞ! 好きな奴と一緒になれ!」

 教室に入ってくるや否や、ひどい発言である。教師としてどうなんだろうか。

 好きな奴と一緒になれ、だと?

「どうしましょうか。……その、嫌じゃなかったらなんですけど、コノと同じ班になって下さいません?」

 撫川先生の衝撃発言に腹立てている、というかショックを受けていると、隣から堂本さんのそんな声が聞こえてきた。

 同じ班になってくれるんじゃないか。

 そう期待はしていたけれど、本当に誘ってくれるとは。どうしよう。


 ①肯定 ②否定 ③許可


 ーここで①を選ばないでどうしましょうー


 とても嬉しかった。

 直前に苦しみを共有しているのだから、同じ班になるのは当然の流れともいえるかもしれない。

 お互いに、仲が良いと言えるような人は他にいない。

 堂本さんは俺のことを裏切っていないと思うから、このクラスに友だちと呼べる人はほとんどいないのだろう。

 彼女は俺と同じなのだろう。

 そう考えると、こうして誘ってくれることにも、かなりの勇気を要したに違いない。

「いえ、嫌だったら良いんです。断ってくれて――」

「断るはずがないでしょう? 俺に友だちがいないことは、堂本さんだってよくわかっているはずです。見捨てないで下さい」

 即答してあげられなかったせいか、堂本さんの顔がどんどん不安そうになる。

 俺だって迷うところはないのだから、もちろん同じ班になってくれるよう要請。

 班は四人~六人だというから、二人では班になることができない。まあ、当然といえば当然だろう。

 きっと二人揃って余りものとして処分されるのだろうが、二人でだと思うと、一人よりもずっとずっと心強い。

 一人足りない班が二つ出て、別々に入れられるという可能性もなくはないが。どうしよう。


 ①放さない ②離れない ③離れたくない


 ーここは③を選びますー


 嫌だ。せっかくできた友だちなのだから、別の班になんかなりたくない。

 俺たちのことを考えてくれる、そんなリア充は絶対にいない。いるわけがない。

 リア充に意見をすることができるだろうか。できる、だろうか……。

 でも俺は、堂本さんと同じ班になるためなら、リア充の命令に逆らうこともできるかもしれない。

「あの、こんにちは。ええっと、すみません、同じ班に入れては頂けないでしょうか」

 まだ二人しかいないので、班は確定したわけじゃない。

 俺と堂本さんの中での決定が、クラスで認められるとも思えない。主張しなければ消される。

 どうにかリア充に抗う勇気を溜めていたところ、驚くべきことに、同じ班になろうという声が聞こえてきた。

 クラス内に、親しくしてくれていた人なんていただろうか。

 むしろ俺は何を調子に乗っているんだ。そもそも、だれも俺と同じ班になりたいなんて言っていない。

 同じ班に入れてはくれないか。というのは、堂本さんと同じ班になりたいということなのだろう。

 何を勘違いしているんだか。

 堂本さんだって、俺以外にも友だちはいるに決まっている。どうしよう。


 ①だれ? ②見たくない ③追い返す


 ーここは①でしょうよー


 しかし話し掛けてきたのはだれかと、後ろを振り向くと、そこに立っているのは山内さん。

 彼が話し掛けて来るのはとても意外なことなのだが、初めてではないのでもうさすがに驚かない。

 まあ、ここで班に入れてくれと頼んできたことには、どうしても驚かざるを得ないわけだが。

 やはり彼のクールなイメージは、勝手に俺の中で作られたイメージでしかなかったのだろうか。

 少なくとも騒いでいるリア充とは違う存在といった感じだし、親しくないので詳しくは知らないけれど、山内さんとは友だちになりたいと思っている。

 こう五月蝿くない人が俺は好きなんだよね、たぶん。

「いえ、嫌だったら断ってくれても良いんです」

「あっいいえ、嫌だなんてとんでもありません。話し掛けられるとは思っていなかったので、少し驚いてしまっただけです」

 誘ってきたところから、不安な表情になっていくところまで、完全に堂本さんと同じ道を辿っていった。どこかで見ていたんじゃないだろうかとすら思えてくる。

 同じ生物であると考えても良いのだろうか。

 堂本さんは堂本さんで、話し掛けられるとは思わず驚くだなんて、彼女の思考回路も俺と似たようなものなのだな。

 ってことは、山内さんと俺もなんとなく同じということで良いのだろうか。

 自分のことは好きじゃないから、自分とは全然違う人を、自分の持っていないものを持っている人に憧れる気持ちはある。

 だから、琴音さんみたいな人に惹かれるところもある。

 しかし友だちとして親しくしたいと思うなら、やはり少しは似ているところのある人じゃないとならないだろう。

 これってもしかして、希望としてはあるんじゃね? 友だちになれるんじゃね?

 だけど欲張ったら失う。堂本さんと仲良くなれたこと自体が奇跡に近いのだから、これ以上は望み過ぎなんじゃないだろうか。

 友だち百人なんて、どう頑張っても無理なんだから……。

 それにゲームとかだって、推し以外との交流を増やしていくと、無駄に敵を増やしてバッドエンドになってしまったりする。

 友だちだって、一人に絞った方が良いのかもしれない。どうしよう。


 ①同じ班なだけ ②追い出す ③仲良くなりたい


 ーしかしここは③を選ぶのですー


 なんてね。

 気の合う人だったら、何人でも友だちになれば良い。

 それに、友だちすら束縛するなんて、俺はどんな男になろうとしてんだ。

 ”お前だけが俺の友だちだよ”とか言ってたら、完全に引かれるわ。それこそだれも友だちになりたくないだろう。

 堂本さんも気の合う友だちだし、山内さんも好印象で友だちになりたいと思っている相手だ。

 おかしな班に組み込まれるよりは、絶対に山内さんと同じ班になりたい。

 それに、四人から班になれるということは、あと一人見つければ良いのだ。

 つまり憧れの「三人+一人」の三人側になれるのだ。

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