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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
一日目
6/223

「確認ですけど、赤羽琴音をご存知ですよねぇ?」

 きょとんとしながら、美女が俺に問い掛けてきた。どうしよう。


 ①知っている ②知らない ③沈黙


 ーここでも②になりますー


 赤羽琴音。さっきおっちゃんが言っていた、おっちゃんの娘さんのことだろうか。

「名前はさっき聞きましたが、実際に見たことはありません。俺と同じ学校に通っているそうですね」

 不思議に思いながらも、俺は正直に答える。

 こんなところで微妙な嘘を吐いたって、ね。

「では、琴音さんをご存知なく、ただ単純に八百屋赤羽の常連さんということですかぁ? 同じ学校であることも、偶然だと仰るのですねぇ」

 何をそんなにも驚いているんだろうか。

 絶世の美女は、大きな目を見開いて俺に訊き返してくる。

「琴音さんのことを知らないのなら、ミーのことを知らないことも、許すしかなくなってしまいますねぇ。まさか、そんな絶滅危惧種レベルの生徒がいらっしゃるとは、予想外でしたぁ。突然、話し掛けてしまいましたねぇ。初めまして、ミーは天沢美海ですぅ。宜しくお願い致しますぅ」

 おっとりとした風で愛らしく、それでいて色っぽい声。

 つい聴き惚れてしまい、思考が止まってしまう。

 俺はニヤける顔をどうにか戻した。どうしよう。


 ①自己紹介 ②無愛想に ③もう去る


 ーここも②となるようですよー


 これだけの美女が笑顔で俺に自己紹介をしてくれているんだ。

 これはもう、奇跡としか呼びようがないのではないだろうか。

 それだったら、俺はどうするべきなのだろう。

 決まっている!

 この奇跡を奇跡を無駄にしないことだ。

「存じ上げておらず、自分の無知を恥じ入るとともに、悪い気分をさせてしまったことをお詫び致します」

 あちらから話し掛けてくれたんだから、食事に誘ってもナンパにはならないはずだ。

 勇気を出して、チャラチャラといっちゃいましょうよ。

 もう、手遅れだけどね。

 初めまして。今は知らないけど、これから美海ちゃんのこと知っていくから、それで許してね。

 みたいな感じに言って、そこから食事に誘うつもりだったんだ。

 それなのに、どうしてこうなってしまったんだろうか。

 俺の口から出て来た言葉は、ナンパとは程遠いものである。

 敬語なんて普段使わないし、合っているかどうかもわからないしさ。どうしよう。


 ①言い直す ②今からでも ③諦める


 ーここは③になってしまうのですー


 訂正して言い直そうと思ったけれど、やはりもう無理なのだろう。

 潔く諦めるしかあるまい。

「ふふっ。無知を恥じ入るだなんて、変なことを言うんですねぇ。でもまあ、悪い気分にはなっていないから、そこは気にしなくて大丈夫ですよぉ。むしろ、面白い子を見つけたなって、思っています」

 最後だけ少し低い声で、彼女の裏の姿を見てしまったような気がした。

 しかしこんな絶世の美女に、裏の顔なんてあるはずがないと、失礼な考えをすぐに消し去った。

「あの、俺は◯◯といいます。天沢さんに覚えて頂ければ幸いです」

 思い出したように俺が名乗ると、天沢さんは楽しそうに笑い声を上げた。

「本当に変なお方ですぅ。なんだかお話しているだけで楽しくなるような気がしますので、もう少しだけミーのために時間を使って頂けないでしょうかぁ。嫌でなければですが、これからミーと一緒に昼食に致しませんかぁ? 奢って差し上げますのでぇ」

 嘘でしょっ?! 思わぬお誘い。

 これはつまり、天沢さんの奢りで、俺は昼食を取ることが出来るということ。

 金銭面でも精神面でも救われる、俺にとっては最高の提案ではないか。

 ただし、俺だけに最高な取引なんて、存在しないのである。

 ここまで奇跡的なことばかりが起こってしまうと、詐欺にでも遭っているのではないかと、不安になってくるくらいである。どうしよう。


 ①断る ②乗る ③大喜び


 ーこれは②くらいでいいのですー


 でもまあ、詐欺だとしてもいいじゃないか。

 一時的なものだとしても、この絶世の美女との時間を過ごすことが出来るのだから。

 それだったら、詐欺だとしても全然いいじゃないか。

 この美女と過ごす時間を買ったと思えば、騙された気など全くしないだろう。

 そう考えると、この誘いに乗らないという選択肢はなくなってくるよね。

「いいんですか? 一緒にご飯、嬉しいです。天沢さんみたいな美人さんとご飯出来るだけでも嬉しいので、奢ってなんかくれなくていいですよ。俺が奢るとは言えませんが、自分の分だけでも払います」

 どうやら俺の言葉の一つ一つが天沢さんにはおかしいらしく、またクスクスと笑っている。

 喋ると笑うもんだから、何か変なことを言っているのではないかと思ってしまう。

「いえいえ。どうか、ミーに奢らせて下さいなぁ。奢ってあげるということで優位に立ち、対等な立場ならば出来ないようなお願いをしたいと思っているのですぅ」

 でも絶対に、変なのは俺じゃなくて天沢さんの方だと俺は思う。

 対等な立場ならば出来ないようなお願い、どんなお願いを俺にするつもりなのだろうか。

 不安が込み上げてくる。どうしよう。


 ①驕るな ②お願いとは ③気にしない


 ーここは③にしてしまうようですよー


 不安ではあるけれど、でもこの美女からのお願いならばなんでもいいじゃないか。

 それにもしかしたら、このお願いというのが、ちょっとエッチなものだったりするのかもしれない。

 な、なんだよっ! 男子高校生なんだから、それくらいの妄想をしたっていいだろ?

「顔がニヤニヤしていますよぉ? 何を期待しているのかは知りませんが、とても君にとっていい内容と取れるようなお願いではありませんから、覚悟していて下さいねぇ」

 俺の期待を木端微塵にされたわけだが。

 でもまあやっぱり、いいんだよ。だって天沢さんからのお願いなんだから。

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