ぜ
恨めしそうな、少し、悲しそうな目でもあった。
俺は天沢さんに何をしてしまったのだろうか。どうしよう。
①問う ②戸惑う ③呼ぶ
ーここでも③を選びますー
何をしたら、天沢さんに元気を取り戻してもらえるのだろうか。
琴音さんと言い争っていたのに、急にどうしてしまったのか、その原因は俺にあるのか……わからない。
彼女は何を思い、何を望んでいるのだろう。何を考えているのだろう。
「天沢さん」
わからなくて、俺はただ彼女の名前を呼んだ。
返事を求めているわけではない。彼女の名前を呼ぶことで、何かがわかるような気がして。苦しくて。
見つめ合いたかったけれど、どこか目線がずれてしまう。
これは俺の中にどこか悪い点が、思い当たっているということなのだろうか。
「少し前に、店の手伝いをしていたとき、偶然お会いしただけですのよ? 何を勘違いなさっているのかしら。このお方は嘘をつけるような性格をなさっていないと思いますわ。信じて差し上げなさい」
天沢さんが何を思うか、きっと琴音さんにはわかったのだろう。
彼女が諭すようにそう言うと、やっと天沢さんの目がふわっと和らいだ。
優しい彼女の目。琴音さんに向けるときには、少しだけ挑戦的なところも含まれているけれど、楽しそうな穏やかな目。
良かった。いつもの天沢さんに戻ってくれたみたいだ。どうしよう。
①笑う ②嗤う ③微笑う
ーここは①を選ぶのだそうですー
嬉しくて、俺は笑ってしまっていた。
二人の様子を眺めながら、微笑みを浮かべていれば良いと思った。
でもさっきの天沢さんの表情が怖くて、彼女の不安が伝わってくるし、俺も不安になるような表情で。だったから、琴音さんが一瞬で戻してくれたことが、俺は嬉しくなった。
俺は彼女に何も言ってあげられなかった。
だけど俺は、とても嬉しくなったんだ。思わず笑ってしまうくらい、本当に、嬉しかったんだ。
天沢さんと琴音さんが、心から信愛し合っていて、仲の良い親友なのだと見せられたからなのかもしれない。
人気者同士が仲良しごっこをしていたのなら、妬みから嫌悪感を抱いていたことだろう。
そうなんだけど、今の俺は、二人の仲の良さに、素直に嬉しくて笑うことが出来たんだと思う。
「何がおかしいんですか。笑わないで下さい。それと、私は別に、信じていなかったわけではありませんから。そこは、安心してほしいです」
急に笑ってしまったものだから、気持ち悪いと思われるんじゃないかと思った。
もちろん、天沢さんはそんな人じゃない。
可愛らしく「笑わないで下さい」なんて言ってくるのである。
そんな様子を見ていると、ますます嬉しくなって、真面目な顔をしようとしても出来ない。どうしても、笑ってしまっているのであった。
やっぱり天沢さんは優しい人。
そして、俺を信じてくれる人だから、俺も信じられる人。
恐怖を感じてはしまったけれど、まさか天沢さんを疑うことなんてしないさ。
何がどうあっても、俺は彼女を信じることが出来ると思う。どうしよう。
①伝える ②教えてあげない ③天邪鬼
ーここは②を選びますー
彼女も俺を信じてくれているのだと思う。
確かに、俺の全てを信じているとは言えないだろう。それは、俺が彼女の全てを信じているのだと言えない、それと同じことだ。
それでも俺と天沢さんは信じ合えているのかな、と思うのだ。
少なくとも、嫉妬しなくて済むくらいには、信じている。
信じてはいるけれど、彼女は自信を持てないのだろう。
俺から彼女に、そんな言葉を言ったことなんてないから、もしかして心配になってくれているかな。
じゃなきゃ、わざわざ安心してほしいなんて言わないよね。
俺も信じているから、安心して下さい。そう言ってあげれば、彼女もきっと安心出来るのだろう。
だけど不安そうにしている彼女も可愛いから、直接は教えてあげたくなくなっちゃうんだ。
俺ってこんな悪い性格をしていただろうか。
そう思ってからやっと、俺は気付いてしまったのだろう。
天沢さんに、恋をしてしまっているのかもしれない、と。
可愛いなぁとか、元気になって良かったとか、信じ合っている、だとか。いろんな言葉で無意識に隠していたけれど、きっと俺は天沢さんのことが好きで好きで仕方がないんだ。
薄々は気付いていた。何度も自覚しそうになった。
そしてその度に、俺は気のせいだと紛らわしてきた。
もうさすがに自分の気持ちから逃げられない。今度こそ、本当に。どうしよう。
①告白 ②混乱 ③逃亡
ーここも②になってしまいますー
頭の中で整理することが出来ない感情が、溢れ出してしまいそうだった。
美人二人の仲睦まじい姿を見て、興奮しただけって可能性もあるけどね。
って、それだったら、俺は二人を性的に見ているということになるじゃないか。正常な男子高校生としてはそうあるべきなのだろうが、やはり二人は駄目だよ。
願わくば天沢さんと結ばれたいという気持ちだってあるけれど、性的な感じじゃないの。
恋愛感情なんだけど、そういうことじゃないの……。
じゃあどういうことなんだ。そう言われたら、きっと答えられないんだけど。




