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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
天沢美海 前編
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 だとすれば、いっそのこと、早く帰りたいとでも言ってしまうか?

 いやいやいやいや、そんなことを言ったらお家大好き野朗じゃないか。

 だったら彼女の言葉を肯定して、居心地が悪かったから、何か理由を作って帰りたかったことにするか。

 そんなのいくらなんでも失礼過ぎる。

 やっぱり買い物に行きたいのだという主張を、もう少し続けるしかないのだろう。

「居心地は悪くありません。良いとも言いませんが。それと、俺の言葉を疑わないで下さい。買い物に行きたくなったのだと、そう言ったではありませんか」

 不意に買い物に行きたくなるだなんて、不自然だろうな……。

 人によっては納得出来るのかもしれないが、特に俺みたいな奴じゃ、不自然に思われて当然だ。どうしよう。


 ①別の手 ②貫く ③逃げる


 ーここは②を選ぶしかないのでしょうー


 しかし不自然に思われるとしても、俺はこの設定を貫き通したいと思う。

 あくまでも俺は、不意に買い物へ行きたくなったのだ。

 ……その後は?

 買い物に行きたくなって、買い物に行って、それでそのまま帰宅してしまうのだろうか。だとしたら、逃げ出したのがバレてしまうじゃないか。

 逃げ出したのだと、バレない方法はないのだろうか。

 逃亡に成功するための一時的な嘘として、今は買い物という設定を貫いている。

 ただ、逃亡に成功したとして、その後に天沢さんとどんな顔で会えば良いのだろう。そのときの言い訳まで考えておかないとならなくなる。

 一度作った設定は貫くつもりでいるけれど、彼女と会うのはこれきりじゃないのだから、次に支障が出ない形にしなければならない。

 もしかして、彼女の家にきた時点で、俺は選択ミスをしていたのだろうか。どうしよう。


 ①その時点でアウト ②その時点ではセーフ ③まだセーフ


 ーここで③を選ぶということがポイントとなりますー


 いやいや、選択ミスだなんて、そんなはずはない。

 実際に天沢さんが暮らしている家を、直接俺が訪れることが出来たんだぞ? それは普通に嬉しいことだから、間違っていただなんて思いたくない。

 でもだとしたら、どこで帰ると告げることが正解だったのだろうか。

 本当にもう、取り返しの付かない状態にまでなってしまっているのだろうか。

 いいや、本当はまだ、取り返しは付く状態なのではないか?

 今からでも大丈夫だ。もう遅いから家に帰ると、正直に口にすれば良い。

「ねえ、どこに行くの? 買い物って、どこへ行くんですか? 買い物にまで私がついていったら、迷惑になりますか……ね」

 正直に言えば良いんだ。

 それなのに天沢さんは、わざとじゃないかと思うくらいに、俺のことを迷わせてくる。

 買い物に行きたくなったという嘘を、貫こうと決めた。なのに、彼女は美しい髪を靡かせて、儚い香りをこちらへまで漂わせ、嘘をつくという行為を無言で苛んだ。

 香水の作られた香りではない。

 天沢さん自身から漂う香りだったから、迷わず嘘吐きになろうとした俺を止めたのだろう。

 たとえそれが一般的に良い香りとされるものでなくとも、ありのままの彼女だったから……。どうしよう。


 ①迷う ②迷惑 ③行こう


 ーここも③を選びましょうかー


 このまま彼女を騙す道を選んだなら、彼女をひどく傷付けてしまうと思った。

 だから俺は、遅くならないうちに家に帰るのだ、と正直に言おうと覚悟を決めた。なのに、彼女は大きな瞳をそっと伏せて、消え入りそうな儚い声で、直接的な言葉でなくとも俺が帰るのを引き止めた。

 本当に俺と一緒にいたいと思ってくれている。そう錯覚させてしまうような、魔性の姿を彼女は持っていた。

 嘘を苛むくせして、真実を拒むのだね。あなたは俺にどうして欲しいのですか?

 心の中で問い掛けながらも、彼女が望んでくれていることを望み、俺はもう少しだけ天沢さんと一緒にいることに決めた。

 彼女を傷付けないために。

 買い物に行くという言葉を嘘にせず、なおかつ自然に帰宅出来る、彼女を守る術を見付けるまでは。

 それまでだけ、彼女と一緒にいても大丈夫だよね。

「迷惑になんてなりませんよ。買い物に行きましょうか。と言っても、夕飯を買うだけですから、ついてきても面白くないと思いますけど」

 なんて、少し甘えた俺の答えに、天沢さんは本当に嬉しそうに靴を履いた。

「もう私も出掛ける準備万端なので、早く行くとしましょう」

 遠足の日の小学生のように、楽しそうに天沢さんは玄関を飛び出た。

 そして俺が家を出たことを確認すると、鍵をかけて猛ダッシュ。どうしよう。


 ①止める ②追い掛ける ③放っておく


 ーここは①を選びますー


 まさか、こんなにはしゃぐとは思わなかった。

 学校からそのまま来ているから、俺は学校の制服で天沢さんは学校のジャージ。

 つまり同じ学校の生徒に会えば、すぐに天沢さんは天沢美海先輩であるとバレてしまう。

 だというのに、お上品さを忘れてはしゃぎ回っていて良いのだろうか。

 学校でのイメージと違い過ぎて、逆にはしゃいだ方が人違いだと思ってもらえるから良いと考えたのか?

 そこまで考えているようにも見えない感じだけど……。

「待って下さい。どうして走っているのです? そもそも、目的地がどこであるかわかっているのですか?」

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